クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

法事のあとに行く用水路の起点は? ―新川用水―

2013年06月16日 | 利根川・荒川の部屋
“新川用水”(にっかわようすい)は騎西領用水とも言い、
騎西(現加須市)へ行くと何かと目につく用水路である。

用水路の長さは約20㎞。
そのわきの道を自転車で通ることもできる。
終点は宮代町で、備前前堀川に落水する用水路だ。

では、どこが起点なのだろう。
法事のあと、ツレと一緒に新川用水沿いを上ったことがある。
やがて着いたのは“見沼代用水路”。
そもそも新川用水は古い堀で、
見沼代用水路が整備される以前に星川から取水していた。

この取水口は“上崎洗堰”と呼ばれ、近世初期に設けられたものだった。
しかし、水流をめぐってしばしば水論が起こっており、
この地は重要かつ問題の場所だったようだ。

ちなみに、この上崎洗堰の萱羽口に使われていた萱は、
羽生領弥勒村に生えていた萱を使用していたという。
この萱は、『田舎教師』に登場する「弥勒野」に生えたものだろう。
忍城の屋根の修理のときにも使用された萱ゆえ、
勝手に刈り取ることが許されず、個人所有が認められたのは明治以降だった。

現在の取水口は現代的装置に整備され、
萱羽口は全く見られない。
用水路のわきは小さな広場のようになっている。
そこには、見沼代用水路の説明板や、
埼玉の観光マップ看板が建っているものの、人の姿はない。
川の流れる音だけが響いている。

以前、21歳くらいのときに自転車で来たことのある場所でもある。
とても閑静なところで、
雨の降る平日に訪ねたらきっと風情があるだろう。

ツレと行ったときは法事のあとだったから、
2人とも礼服を着たままだった。
礼服姿の2人が新川用水の取水口に佇む光景は、
やや妙だったと思う。
ホラーの香りもしただろうか。
「変なの」とツレが言ったのを覚えている。

土手上の道には、車が一台通り過ぎただけだった。
水の流れる音が絶えず聞こえる。
それが静けさを誘い、
いつの間にか歴史の流れへと引き込まれていった。

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