クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

「風林火山」。妖しい“おふく”の治療はどんなものだったか?

2007年12月11日 | 戦国時代の部屋
――明日じゃ。明日、霧が出る。
そう情報をもたらしたのは、“おふく”という老婆。
大河ドラマ「風林火山」に登場したこのおふく(緑魔子)は、
ひときわ面妖な雰囲気を漂わせていました。

永禄4年(1561)8月、川中島に対陣する“武田信玄”(市川亀治郎)と“上杉政虎”(Gackt)。
前3回とは異なり互いに退路を遮断し合い、
一触即発の雰囲気に包まれます。
そんな状況の中、“山本勘助”(内野聖陽)はおふくに出会い、
霧の発生日時の情報を得るのでした。
そして、俗に言う「キツツキ戦法」の策に打って出ます。

一方、妻女山に布陣し、武田の動きを窺っていた上杉軍も、
霧発生の情報を得ます。
やはり、おふくによって……。
妙な存在感を放つおふく。
ドラマの中で“原虎胤”を助けたように、
落ち武者の命を救い、その報酬で生計を立てていたようです。

ところで、このおふくは専門の医師には見えません。
にわかじこみの臨時医師でしょう。
弓や鉄砲、刃物での負傷が多かったこの時代、
独特の治療法が施されていたようです。
以前、山本勘助が鉄砲傷で倒れたとき、
馬糞を溶かした水を飲ませられていました。
当時はそれが常識だったらしく、
『雑兵物語』には次の記述が見えます。

 葦毛馬の糞を水に溶かして飲めば、腹の中に流れた血が下がって、傷も早く治るぞ。
 葦毛馬の血を飲んでも、腹中の血が下がるという。
 だが、馬の血を自由に取るわけにはいくめえ。
 糞を食ったほうがましだ。

では、刀傷を受けたときはどうするか?
かがんだり、横になってはいけないと同書は書きます。
大声を出したり、笑ったり、腹を立てたりしてもいけないと……。
眠るのが1番悪く、もし眠ったらこよりで鼻のてっぺんを撫でるのだそうです。
そして、傷がうずくようなら自分の小便を飲めと言います。

 銅の陣笠でも置いて小便をため、それを冷やしておいて、あとであっためて、
 うずくところを洗えば、痛みがやわらぐもんだ。

おふくが施した治療はどのようなものだったのでしょう。
何にせよ、原虎胤は彼女によって命を救われました。
ゆえに、勘助はその礼として甲斐の金山で取れたであろう金を渡します。

一方、治療はしませんでしたが、
おふくが上杉方から受けた褒美はやはり金でした。
軍師的存在の“宇佐美定満”(緒形拳)の手から渡っています。
軍師にとって、情報は喉から手が出るほど欲しかったのでしょう。
報酬に糸目は付けません。

実は、この宇佐美が手渡した“金”は、
甲斐と同様に豊富な金山を持っていることを仄めかしています。
すなわち、両雄の経済力は互角。
換言すれば、互いの軍事力は同じということです。
その両者が、川中島にて真っ正面からぶつかり合います。
そして、当然のごとく両軍とも大きな犠牲を出してしまうのでした。

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