九品人の落書帖

写真をまじえ、身の回りで見聞きしたことを、つれづれなるままに!

阿堵物(あとぶつ)

2020年04月26日 | 書籍

 『阿堵』とは晋宋ごろの俗語で“これ”、“この品物”という意味。

 これが金銭のことを指すようになったのは、次のような逸話がある。

 中国の故事から引く。

                    

 竹林の賢者の一人である王衍は、その徒の名に恥じず無欲恬淡、

 特に金銭に関しては全く執着がないばかりか軽蔑さえしていた。

 一方、妻の郭氏は、これと反対に守銭奴で拝金主義者だったから、

 王衍は妻の前では、ことさら“お金”という言葉を使わなかった。

                    

 そこで妻は何とかして王衍に“お金”という言葉を口にさせようとして、

 ある夜、衍の寝台の周りに銭をばら撒いておいた。

                    

 あくる朝、目を覚ました衍は寝台から降りようとしたが、

 銭がちらばっていて降りられない。

 かといって踏みつけるわけにもゆかぬので、女中を呼んだ。

                    

 「阿堵物をどけておくれ」

 妻は結局、衍から“お金”という言葉は聞けなかったのである。

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