『阿堵』とは晋宋ごろの俗語で“これ”、“この品物”という意味。
これが金銭のことを指すようになったのは、次のような逸話がある。
中国の故事から引く。
竹林の賢者の一人である王衍は、その徒の名に恥じず無欲恬淡、
特に金銭に関しては全く執着がないばかりか軽蔑さえしていた。
一方、妻の郭氏は、これと反対に守銭奴で拝金主義者だったから、
王衍は妻の前では、ことさら“お金”という言葉を使わなかった。
そこで妻は何とかして王衍に“お金”という言葉を口にさせようとして、
ある夜、衍の寝台の周りに銭をばら撒いておいた。
あくる朝、目を覚ました衍は寝台から降りようとしたが、
銭がちらばっていて降りられない。
かといって踏みつけるわけにもゆかぬので、女中を呼んだ。
「阿堵物をどけておくれ」
妻は結局、衍から“お金”という言葉は聞けなかったのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます