story・・小さな物語              那覇新一

小説・散文・詩などです。
那覇新一として故東淵修師主宰、近藤摩耶氏発行の「銀河詩手帖」に投稿することもあります。

好きなんだと言いたい人が

2018年02月16日 21時02分02秒 | 詩・散文
あまりお洒落でもないファミレスで間に合わせて、貴女とお茶する。
屈託のない、ばかげた話ばかり出るのかと思いきや
今日ばかりは少し違うようで、
深刻な話を笑顔でする貴女に
僕ではなく、隣の席の若い女性が凍り付く
 
人生はいろいろだ。
そして人生はエロエロだ。
男女のことなど、大昔から繰り返されてきたことに
別に新しいものなどないし
殆どのことは想定内なのだけれど
それでも、あっけらかんと話そうとする貴女に
僕も思わずきつい目線を投げかけてしまう
だが、それでも僕の本心を言えば、僕のほうに向いてほしかった。
貴女が誰に貴女の身体を預けようが、それは僕の知るべきところではないし
貴女の自由を僕は抑える気などないし、
またそのようなことなど出来っこないことも分かっている
 
だが、それでもなお、言わせてもらうなら
僕が貴女の相手であってほしかった
もっと言えば、僕が貴女を抱きたかった
 
そんな資格はないし、僕はあなたに男性として見られているわけではない
でも、僕にもオトコとしての下心はあって
極上の女である貴女を抱きたいと思うのは
これは普通のことだろう
 
そして僕はあなたに惚れていて
と言っても恋多き男の一瞬の気まぐれに過ぎないかもしれないが
貴女の身体を自分のものにしたい欲情もないとはいいきれない
 
それは何をどう繕っても繕いきれない僕そのものであり
もはや開き直って自分を慰めるしかないわけだ
 
惚れたというのがすなわち相手の身体を求めること
それは若い男性なら、そういう短絡があってもいいとは思う
だが、人生も残すところ三分の一という
まもなく老いらくが始まる世代の僕では
自分の限界も知り
そして何より想いの大きさが大事になってくるといえば
それは美しすぎる表現だろうか。
 
もはやセックスは想いを果たした目的ではなく
生きるうえで何より大事なのはその想いを持ち続けること
歳を重ねるというのは、そういうことを事実として
自分の中に組み立てるということ
それがよく言えば経験を積む
悪く言えば老いるということなのだろう
 
屈託なく話しているようで
ふっと、涙を見せ
あるいは感情の高まりを見せる貴女の
 
その悩むことの要因を作った男に僕は嫉妬する
決して男前ではなく
決して頭がよさそうでもなく
無邪気で
無遠慮で
いつも笑顔を振りまいているあいつに
勝てっこなどないけど
 
僕はそれでも貴女を愛している
 
 
コメント
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