120〈信〉の構造2 キリスト教論集成
吉本隆明
① 序
投稿者 古賀克之助
〈信〉の構造2 ——キリスト教論集成
ニ〇〇四年十一月三十日 新装版第一刷発行 著者ー吉本隆明 発行所ー株式会社春秋社 序より
序
いま宗教の領域が非信というモチーフで、わたしに残っているとすれば、ふたつしかない。ひとつはほんとうの考えとうその考えを分けることができれば、その方法さえ確定できれば、ということだ。これはかって宮沢賢治がべつの形でしきりにゆめみたとおなじことだ。
もうひとつは「死」の水準を確定し、そこからの逆視線を、すくなくとも感性的な次元でははっきりさせることだ。「信」にまつわることでほかのことはわたしのなかから消去されてしまった。そしてこの消去は主観によるというより、客観的な根拠からきている気がしている。
「生」ということを宗教の領域としてかんがえるかぎり、わたしたちはもっと「無意味」にむかって、その意義を立てるため、もっとはやく駆けぬけてゆかなければならないのではなかろうか。「無意味」ということの本格的な意味は、非信ということの「信」としての意義と対応している。その課題の途次で、まだこれからもさまざまな形をくぐらなけれはならないとおもっている。
吉本隆明