言の葉綴り 145 思想とはなにか
著者吉本隆明•笠原芳光
思想とはなにか
著者 吉本隆明•笠原芳光
ニ○○六年十月十日発行
発行所 株式会社春秋社より抜粋
序 吉本隆明
仮に人類の歴史を「大」歴史と「小」歴史にわけるとする。未明の時代から現在までの政治•社会や文明文化•科学産業など従来考えられてきた人類の歴史は「大」なる外在史であり、身体性から見られた個々人は内在的な「小」人類史と見ることができよう。そしてこの「大」「小」の人類史を媒介するものは「種としての遺伝子」「世界の地域ごとの言語」「それぞれ異なった風俗•習慣」「自然への精神と身体による働きかけの運動性」と見做すことができよう。私たちは壮年になったころ、政治と文学という粗雑な文学(芸術)理念に不満で「思想」と「文学(芸術)」と考え方を改めたことがあった。この場合の「思想」という概念はここでいう媒介概念を意味している。笠原氏と試みた対話はその思想解明の糸口の一つになればという考えで願望されたものだった。これが読者に何らかのあたらしい刺激をもたらすことができたら、この上ない喜びだとおもっている。
帯書裏面から