女装子愛好クラブ

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離婚後に病死した夫に「ごめんなさい」と涙して  ~工藤美代子著『炎情』から~

2020年03月22日 | ★女装の本・雑誌

工藤美代子著『炎情』からです。




 離婚後に病死した夫に「ごめんなさい」と涙して

 とにかく、憲子さんは離婚をしなければ、自分の気持ちが収まらなかった。正月明けに区役所から離婚届の用紙をもらってきた。

 娘の亜美ちゃんは両親の突然の離婚騒動に驚いて、何度もその理由を憲子さんに尋ねたが、彼女は「パパに聞いてごらんなさい」としかいわなかった。もちろん、徹さんが真相を語るはずもなかった。

 顔を見るのも不快だと憲子さんは、身の回りの品だけ持って実家へ帰った。そして徹さんも観念したのか、あるいは女装癖が世間に知られるとまずいと思ったのか、あきらめて離婚届に判を押した。それが一月の二十日過ぎのことだった。

 財産はきっちりと半分ずつにした・憲子さんのほうが収入が多く、しかも定年までの年月も長いので、非は徹さんにあるのだが、経済的な配慮はしてあげようと思ったそうだ。それに、夫婦の財産はいずれは一人娘の亜美ちゃんのものになるのだから、かまわないと憲子さんは考えた。

 ところが、なんとそれから、わずか三ヵ月で、徹さんは腎臓がんを発病し、半年後には帰らぬ人となってしまった。
「主人が亡くなったとき、亜美と二人で病院に駆けつけて、もう冷たくなった手を握って、『あなた、ごめんなさい』っていいましたよ。あの人は私が殺したようなものかもしれません。許してはやれなくても、近所に別居するとか、なんとかしていたら、病気にはならなかったでしょう。人生を切り抜けられたかもしれない。私があまりにも頑なで、あの人を精神的に追い詰めて、きっと彼の肉体が敏感にそれを察知して、参っちゃったのね」

 そういって、憲子さんは涙を拭った。苦い後悔の涙だ。しかし、同じ女として、私は夫を許せなかった憲子さんの心情もよく理解できたので、なんとも返答のしようがなく、ただ割り切れない悲しさだけが胸の底に残ったのだった。  (引用終わり)

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