マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

大きな誤解

2005-09-04 | ピアノ技術者の仕事
 ピアノ調律が終了した後、パラパラっとほんのさわりだけピアノを弾きます。調律の出来具合をチェックするためです。それを聴いたお客さんはボクがあたかもハイレベルな演奏ができるピアノ技術者なんだと思いこんでしまうらしい。
連弾をしましょうとお誘いを受け、声楽の伴奏やパーティー会場で弾いてくれないかと出演依頼が来ることもあるのですが、「ご冗談はよしてくださいよ!」って感じ。
 もちろんそのピアノの持ち味を最高に引き出す術は知っていますので、美しい音色で弾くことはできるけれど音楽を奏でるのとは全く次元が違います。
ましてや最後まで弾き通せる曲のレパートリーなど1曲もないし、楽譜を読むのはカタツムリの徒競走みたいに遅い。「ピアノ演奏」とは程遠いレベルなのですよ。

 リハーサル中

 数年前、美術館でピカソやシャガールの絵を鑑賞しながら、それに関連する音楽演奏を聴き、美術専門家が解説するという大変興味深い企画があり、ピアノ調律を頼まれました。
館内での調律が終わる頃、守衛のおばさんたちから、この単調でイライラする騒音(調律しているときの音)への苦情がきました。
「よくこんなうるさい仕事毎日何時間もしてるね、気がおかしくなるわ!」この手のいやみな罵声は慣れっこ。
「ここまで我慢したんだから、最後に綺麗な曲弾いていってよね!」
そういわれるのが一番困るのですよ。まあ、仕方ないので弾きましたよ。 
ピカソの絵をバックに『クマのプーさん』を...。ーまー