マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

春だから

2010-03-21 | くっさー

春だから
 グルグル巻きのマフラーを解き
 重いコートを脱ぐことにしよう
 お気に入りのブーツはもう歩きにくく感じる

春だから
 先行きの不安に震えてうつむくよりは
 あしたへの希望にワクワクしてみたい

春だから
 カーテン越しの朝はすでに眩しく
 陽気さは二桁の数字を威張りたいらしい
 眺める空もまた昨日より少し高いはずだ

春なのに 春なのに
 ぐずぐずと居心地の良い場所にこもり
 目を開けることすら面倒に思う
春だから 春だから
 羽毛の布団を跳ねのけすっきり目覚める
 そんな勇気をボクにください

ーまー

秋の色

2008-09-28 | くっさー

 気を引き締める季節が来たようです

太陽の微笑む時間が少なくなるにつれ、
時間に追われ 我を忘れて
走り回る季節がやってきたようです

去年よりも 今年は 心に余裕を持って
昨日よりも 今日は  力強く生活して
今年の残り3ヶ月を暮らしてみよう …
そんなことを決意しながら 秋の色を楽しんでみました

でも、気を引き締める前に ちょいとやっぱり昼寝でもしたいなぁ
と 思ったりもしました。

ーまー

水色のひとみ

2007-01-30 | くっさー

なんの不安もなく、悩むこともなく無邪気に静かに眠ってる
『目が覚めたらミルクをねだろう。おっきな声で泣いたらええねん』
これが彼のここ4ヶ月で覚えたこと。


その水色の限りなく澄んだひとみは
今まで怖いものや醜い物を見たことのない証
やがて時は流れ、水色のひとみはさまざまな情景を焼き付けていく

きらきら輝く野原に心弾ませ
遙か遠くまで広がる海原に心動かし
舞い落ちる枯れ葉に寂しさを覚え
突き刺さるような氷柱に怖さを感じる


友人Torbenの息子に初めて会った。
で、名前なんやったけ? 何度聴いてもすぐに忘れてしまう。

ややこしい名前付けんなよ!

                    ~ま~


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疲れたピアノがたどり着いたところは

2006-12-24 | くっさー

くたびれた靴を履いたピアノが工房にやってきた
ほこりだらけで傷だらけ 歩き疲れてやってきた

疲れ果てたピアノの姿は 今まで歩いた長い道のりを感じさせる
あの悲惨な大戦の空爆の下をくぐり 生き延び 耐えた
何度かの手術の跡 過酷な生き様を感じさせる

           

  “もしも願いが叶うなら もう一度 歌ってみたいのです”

楽しい時代もあっただろう 
聖夜には暖炉のそばで家族と一緒に歌う
春にはきらめく恋の歌を 秋には枯れゆく悲恋の歌を
夜にはあの人を夢みながら 昼にはあの人を想いながら 


      

  “もしも願いが叶うなら もう一度 歌ってみたいのです”
 
疲れ果てたピアノは ハスキーヴォイスでつぶやいた


                             ーまー

    
      

ベートーヴェンの善玉菌に侵された

2006-11-28 | くっさー
演奏会場で仕上げの調律をしていると
ベートーヴェン菌が耳から侵入してきた
有名な音楽家の菌だから善玉菌にはちがいないのだが

季節をひとつ蹴り越えて ヴァイオリンが軽快に春を駆け上がる
そのあとをピアノが地面の下から沸きだすように追いかける 
やがて二人は突然に陰気なほうに転調した
ベートーヴェン菌がソナタ形式で体内繁殖を始めたらしい

その夜、
とうとうやつが眠りの中に現れた いつものようにしかめっ面
音楽室の似顔絵とそっくり でも頭が臭かった 
どうやら1週間洗ってないらしい 痒い痒いとかきむしる
どこのシャンプー使ってるの? 
「アダージョ カンタービレ」 ニマっと笑ってやつがつぶやく
うう! 見かけによらずユニークなやつだ 意味が全くわかれへん
「アレグロ アッサイ」のリンスも使うようにと勧めておいた

次の日、 
完璧にベートーヴェン菌に侵されたベテランピアニストはこれでもかといわんばかりに
熱情的に 時には悲愴な面持ちで 善玉菌を撒き散らす 
彼女の振わせるピアノの弦がしかめっ面で地響きを立て 消えるようにすすり泣く
まだ若くて青い感染者には到底現せない感情が音と音の隙間から見えてくる

そしてまた次の日、
そっと目を閉じると つむじの2センチ左からずきずきとあの低音和音がフェードインしてくる
耳の鼓膜の裏側からどっしりとした濃厚な大人の響が迫ってくる
体内にこびりついた菌の勢力はいまだ衰えることを知らないらしい


ぼちぼちベートーヴェン菌とおさらばするために
クリスマスの飾りで一杯の 夕暮れ時の街をゆっくりと散歩した
なぜだろう 賑やかな人の波はやけに寂しい 
お堀の並木を眺めることにした
歩く歩幅はいまだ「月光」ソナタの1楽章…… 


ーまー


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青空から聞こえてくるものは

2006-06-01 | くっさー
青空は探すもの
気長に待っても ほらすぐに白い雲が迫ってくる
白い雲の向こうには 低く暗い灰色が涙を溜めて待っている
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真っ黒なサングラスに皮のジャンパー、ホンダの馬鹿でかいバイクにまたがる
ビール腹の野村先生
ジャンパーの下は渋い色合いのアロハシャツ、または白い開襟シャツ
ピアノ技術者とは到底思えない個性的な姿、やけに似合っていた

「こうゆうのをブラックジョークって言うんだよ! わかる? 」
解説付きのオヤジギャグ、もっと笑ってあげればよかったかなぁ

実習授業で褒められたことなどほとんどない
「君 失格! 荷物まとめてとっとと郷(くに)に帰んなさい」
「なにくそ」と思わせたくて叱ってくれたのだろうか。

「なにくそ」とも思わず、彼のブラックジョークにも笑わず、歯がゆい弟子だったに違いない。

「アメリカでもヨーロッパでも行きたいところに行けばいい。でも小さくまとまっちゃぁいけないよ!」
心に刻み込まれた言葉は、いまだ新鮮に響いている


今ならOKです。貴方以上にオヤジギャグ仕入れてますし、もう失格なんて言わせませんよ! 

「君 まだそんなこと言ってんの? 荷物まとめてとっとと帰ってきなさい!」

心優しい声が雲の合間の青空から聞こえてきそうです。

合掌

ーまー                  

スプリング パワー

2006-04-17 | くっさー

出張帰りに寄り道をする
君に会うために

ゆっくり流れる緑の川辺
ここでも君は待っていた

力強く春を告げ、勇気付けてくれるのに
夏や秋ましてや冬に心を寄せたことはない
名前すら知らなかった・・・

せめてもの君への償いに
呪文のように唱えよう

 レンギョウ 連翹 Forsythie

黄色い炎に会うたびに


ーまー             
               更新時 9位→ 


てくてく てくてく

2006-02-27 | くっさー
きょうのあさ
ピアノこうぼうのおやかたさんは 春をさがしにいきました
てくてく、てくてく あるきます

ちらちらとまう こなゆきが ふっくらほっぺにあたります
まだまださむいよ ふるえるよ まだまだこないよ 春なんて 
かぜもつめたくほのめかす

てくてく てくてく あるきます
「いぬこうえん」をとおりぬけ
なつかしい ほそいこみちに であいます
ちいさなかわいいクナイペが ポツリポツリとたってます
ほんとにむかしのむかしから ほんとのビールをのませます


てくてく、てくてく あるいていると
かわいいピエロにあいました
きょうはむらのカーニバル おきゃくがいっぱいやってくる
あさからパパのおてつだい
ビールにワインにソーセージ じゃがいもサラダもおいしいよ



ピアノこうぼうのおやかたさんは
おいしいビールをがまんして
てくてく てくてく あるきます

いきつくところは ラインがわ ここで春をさがしましょう
ポプラなみきをあるいても あたりいちめんふゆげしき 
どこからきたのかたびがらす さむい さむいとほえていた



―でもね もうすぐ春なんだ―

おしえてくれたよ ねこやなぎ



ーまー 親方     

balance

2005-12-31 | くっさー
勢いよく反復を繰り返す姿があぶなっかしくて面白い
ギクシャクしてるけど同じ動きを繰り返す
そのうち、揺れはだんだん小さくなってくる
指先でちょこっと押してみよ
目を覚ましたようにしばらくはパワーを取り戻し
また同じ動きを繰り返す 

今年の僕のやじろべえは、敢闘賞もんや
緊張と緩和、ネガティブとポジティブ、成功と失敗、喜びと悲しみ
うまいこと均衡が取れてたからええ動きをした

力任せに動かすと勢いあまって軸をはずしよる
 そんなに丈夫とちゃうからなぁ…
加減が少なすぎるとすぐ止まってしまいそう
 ほんまはめちゃ怠慢やから…

うまいこと指先でそっと押してくれてたのは You!
おおきに、ありがとう!
good job ! 象印賞もんや!(←わかるかなぁ)

来年もよろしゅうに  -まー 番頭

静寂

2005-12-24 | くっさー

 



なんて静かなんだろう
車や市電が通り過ぎる音、風の囁きすら聴こえない


 教会の鐘が鳴る
あんなに力いっぱい鳴り響いているのに
ゆっくりと静かに体に浸み込んでくるのはなぜだろう 


「リコーダーをくださいな」と書いた幼い孤児の
願いは叶っただろうか? 


子供たちに気づかれないよう
プレゼントをコートにそっと隠した優しいお母さん
彼らの喜ぶ大きな瞳を見ることはできただろうか? 


十数年欠かさず愛妻にプレゼントを続ける君
今年の「とっておきの贈り物」は見つかったかな? 


聖夜
親愛なる人に想いをこめて優しさを伝える
それができることに感謝する日なのかもしれない   


                        -まー  


 


 


夕陽の説教

2005-12-11 | くっさー
夕陽曰く、

慌しい季節やね。寒いしね。
仕事も多いしね。たいへんやね。

まあ、そんなにイライラせんでもええやんか。
ぼちぼち行ったららええやんか。
いくら焦っても同じやで。

ほら、私なんかゆっくりやけど、ちゃんと綺麗やろ。



やけに説得力のある夕焼けだった。
            ーまー 丁稚