マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

天気の良い週末は

2010-04-26 | そのほか

 暖かさの好感度はグーンと上がって25ポイント
ホールへ向かう途中の鮮やかな黄色が目に飛び込んできます。

基本的に日曜は休むことにしているのですが
今日は演奏会の調律ですので仕方なく働きました。
でも天気が良いのでゆったりとした気持ちでした。




決してスタバを撮ったわけではなく、地面から飛び出す水が面白かっただけ。
 でもスタバのカプチーノを飲むと胸焼けすんねん…
 

ーまー

ゲーテさんとかハイネさんとか

2010-04-22 | ピアノ技術者の仕事

 ピアノがグーンと急速に進化していく頃

その時代のヨーロッパの音楽に心が惹かれます。
日本では人切り包丁1本半を腰に差した武士達が闊歩していた時代。
(決して文化が遅れていたとは思っていませんけれど…)
デュッセルドルフ所縁のシューマン、ハイネやメンデルスゾーン、ブルグミュラー(弟)
ブラームス…彼らにどのような繋がりがあったのかを紐解くのも面白そうです。

ここ1ヶ月、博物館特別展示会での演奏会で仕事をする機会が多かった。
「週末は古典楽器」が偶然重なりました。

 

ドイツで3番目に大きなデュッセルドルフのゲーテ博物館。
 常設のレプリカ ハンマーフリューゲル 
 この楽器を階下に移動したときに部品(ダンパー)が外れ
 責任を感じた運送者が無理に部品をはめ込んだために大変な騒ぎに…


  

ハイネ博物館はシューマン夫妻が住んでいた家の対面にあります。
 オリジナルの楽器、本番直前にピアニストがピアノ部品(ハンマー)を
 バキっと折ってしまう騒ぎに…(しかもボクの目の前で)
 
これらの追加ハプニングをなんとか処理しながらの調律。
きっと160年前のピアノ技術者も冷や汗タラタラ仕事をしてたんやろなぁ、
仕事の後はビールとかワインとかちゃんと飲んでたんかなぁと
自分のことのように心配したりしました。 
 ブルグミュラー家の椅子



  遠くに見えるはメンデルスゾーン

締めくくりは 同じくハイネ博物館ノベルトブルグミュラーの特別展示での演奏会
ピアニストはわざわざ聴衆に「このシリーズ中、常に良い音に調律調整してくれた
素晴らしいピアノ技術者に敬意を表します!」
などとサプライズのスピーチをしてくれました。

でもあいつ、僕の名前間違えて発表してやんの。 -まー ですボクは!

餅は餅屋 プラスチックを考える

2010-04-11 | ピアノ技術者の仕事

関西国では[プラッッチック]と発音する人が多いようです。
[ラ]は巻き舌でお願いしときます。

ヒストリカルな楽器 チェンバロ。
豚の毛やカラスの羽根軸を使ったりもする、とにかく繊細な楽器。
大手のチェンバロ製作工場が部品にプラスチックを使い出したのはいつごろからなんだろう。
大量生産とまではいかなくとも、普及型チェンバロを作り出したあたりだろうか?
プラスチックの利点は機械加工で均一的な部品が作れる。湿度や温度変化に強い。低価格? 
弱点は経年変化。特に曲げや圧縮の力には何十年も耐えることができないらしい。
一度崩れると接着不可能。長い目で見るとやはり木材には敵わないようだ。
思い入れの強い信念を持った製作者は今もかたくなに接着剤を含めプラスチックは使わない。
(弦をはじくプレクトラムは流石にデルリンプラスチックを使っているようですが)



 製作時点ではプラスチックのZunge (タング、舌)に皮のプレクトラム(爪)が付けてあったようだ。
皮にオリーブオイルを塗ったりして割れを防ごうとするも寿命は短い。
そこでデルリンプラスチックの爪に付け替えてある(あまり上手な修理ではない)
加えてプラスチックZungeがひび割れてきているようだ。

「全部取り替えましょうや!」と言ったものの経験がないので、バンベルグに生息する
チェンバロ技術の餅屋、しょくちんさんに「Zunge 交換大作戦」を依頼した。
プラスチックから木に変えただけでなく、プレクトラムのつけ方や下ごしらえの正確さが素晴らしく、
微調節する前から音色が明らかに良くなった。見事なものだ。



ボクはピアノ技術者なので、チェンバロの経験はしょぼい。(構造や歴史、基本技術は学んだのだが)。
普段は調律やちょっとした修理調節しかするチャンスがない。
スピネットとはいえ1台分丸ごとのチェンバロ整音はボクの初体験。
ちまちまとナイフでプレクトラムの裏側を削って厚みや幅を変え弾力をつけ音を整えていくのだが、
目は疲れるわ肩は凝るわの大騒ぎ。でもそのうち快感に変わってくる。
しょくちんさんの詳しいメールでのアドバイスに助けられ、なんとか自分で納得できる音に近づけたかなと思ってる
餅屋からすればきっとそんな甘いもんやないんでしょうが…

あっ ちなみに彼もやはり酒飲みなんだ。
                          -まー

ボクはボク、人と比べんとって

2010-04-07 | ピアノ技術者の仕事

 おさむ君を見てみいな、ええ大学に入ってしっかり頑張ってはんのに
それにひきかえあんたは…  とか
元カレのほうが断然イケ面やったのに、何でまたこんな仏頂面の… とか

勝手に比べられたほうはええ迷惑や。
主観で判断して優劣を決め付けるだけなのでまったく手に負えない。
そういう僕もついついいろんなものを勝手に比べて自分の好みをきめている。
とかく人は比べたがる動物なのだ。

     

長い付き合いのあるピアニストから興味深いCDを教えてもらった。
5台のピアノを同じ曲で同じピアニストが演奏する
マイクの位置などの録音条件は皆同じ、ピアノ調律のピッチも同じ。
「5台を一度に比べて聴いてみよう」を売りにしたCD

世間一般で言われているように各メーカーの音色にはそれぞれ特徴がある。
設計や材料、製作方法や製作技術、思い入れやコンセプト…
根本的に音の違いがあって当たり前。 いわゆる キャラクター ってやつ。
このCDを聴いてその違いが分かれば、とりあえずおめでたいことだと思う。
ここで自分よがりに優劣を付けると「主観や立場」が騒ぎ出すので
やめたほうがいい。

一応曲がりなりにもピアノ技術業界で生きているボク。
なるほど、聴いてみてそれぞれのキャラクターの違いはよく分かった。
でも、このピアノの音はどのメーカーですか?と逆に訊ねられた場合、
100パーセント正しく答えられるかどうか全く自信はない。 

今回、このCDでのボクの収穫
 カルボナーラなピアノメーカー、アルデンテな音色で良い印象を受けた。
 今までにあまり触れたことのない楽器なので新鮮さがあったのかも知れない。
 それぞれの鍵盤に触れて、実際にタッチや弾き具合をもとことん比べてみたい
 という衝動に駆られた。
 
興味のある方、試してみてください。     ーまー