マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

修羅場を踏むこと97年 

2007-06-28 | ピアノ技術者の仕事
 
 大怪我をして入ってきたのはもうかれこれ7ヶ月前のこと
    参照→ 06年12月1日 & 07年5月6日






  
ようやく修理も終わり、納得いく仕上がりです。
チャーミングな真鍮の装飾も老体にぴったりな雰囲気を醸し出し、
ピアノ工房一同(ーまー、おかみさん、カナッペ)満足しています。

今までの荒く長い旅路を思い起こさせる外装の傷跡はあえてそのままですが
弾き心地と音色は修復できたと思います。
(僕たちはそれ以上の出来映えやと思てますけれど)

残念なのは、ピアノ工房から出て行く先は《倉庫》!
最低1年保管されることになりました。最終的な行き先は決まってはいるのですが、
出産直前、加えて新居に移転という 家庭 環境なので、ピアノ移動も仕切り直しということになったらしいのです。

それやったら前もって言ってもらえれば先に倉庫に預け、
搬入直前を狙ってタイムリーに修理したかったなぁ。
そうしたら僕たちの達成感がもっと強烈なもんになったのに……

これもこの老体ピアノの運命なんかなぁ。
君の人生、多難続きとちゃうか? 細木さんにいっぺん占ってもろたらどないや?

でもな、きっちり修理してあるから今度生まれて来る赤ちゃんがヨボヨボになるまで
元気に音を出し続けられると思うよ!

がんばりや~ じいちゃんピアノ! 修羅場踏むのん、まだまだこれからやで~


ーまー 

インコ

2007-06-24 | 笑い
 
 うちで飼っているインコです。 もちろん手乗りです。
 ワインボトルの上でクルクル回るのが得意です。ほぼ毎日回ってます。

 以上!  ーまー
 

おっ! 赤 やんけ!

2007-06-20 | 愉快な仲間たち

一昔前、親方が迂闊にも婚約をしてしまった時。

親方の両親とおかみさん、計4人で花の東京銀座を歩いてた。
交差点に差し掛かった折り、若きおかみさん曰く

「おっ、信号 赤やんけ!」

親方の母君がすかさず「つっこみ」を入れる
 
「大阪弁を使ってもらうのはほんまに嬉しいけど、
 女の人は《け!》は使わんほうがええよ、ここ銀座やし」


以後、ワインをグラスに注いでもらうとき、必ずこの言葉を口ずさむ

  「おっ、赤やんけ!」




なんで赤いピアノがあかんねん? 政治を意識した色でもなんでもない、
俺はこの色のピアノが欲しいねん! それもちゃんと音楽できる楽器や! 
赤い色は俺の趣味やねん。赤いピアノのなにが悪いんじゃ! というのが持ち主の主張。
楽器店数軒で「やめとけ」「後悔するで」と忠告されたらしい。1980年の話。
その数年後から親方がずっと調律管理している。唯一この色を褒めた調律師らしい。

ん、まぁ 商売やからね、取りあえず褒めんとね。

「いやー 個性的ですね、お似合いですよ!」

今回は弦総替えの修理で工房入り。 
見る人見る人 「おっ 赤やんけ!」と ある意味人気者ではある。


さて、この「赤やんけぴあの」の持ち主の職業はいったいなんやと思う?


注意: 持ち主本人にはもちろんブログに載せることの承諾はもらってません。
あまり騒がないでくださいね。
 

ーまー

国際結婚

2007-06-15 | 愉快な仲間たち
 
 たとえ同じ国で育った夫婦間でも、ちょっとした仕草や言葉の言い回し、
顔の表情の読み間違いのような些細なことから大きな誤解を生むことがある。
母国語が違い、今までの生活環境や慣習も大きく違う者同士のいわゆる国際結婚の場合、
それぞれの考え方や価値観はきっと同国間夫婦のそれよりも遙かに違いの差があり、難儀なことも多くあるであろう。
愛とか恋とかがあるからそんないろんな壁も乗り越えられるんかなぁ。
違いがあるからこそお互いに理解しあうように努力して、またその違いを認識するんが楽しいんかなぁ。

      
          

旦那さんがブルガリア人、奥さんが関西人、ベルギーで生活をする。
お役所への届け出だけでも大変。滞在許可、婚姻届なども気が遠くなるほどややこしそうや。
なんかベルギーは警察官が家宅捜査して初めて最終的に結婚が正式に認められるらしい。


僕がこのお二人を尊敬するところは、きっちりと着実に歩いているところ。
ずっと応援してたから、ようやくのゴールインを祝わんでか!

  

パーティーは世界遺産の中で行われた。
それはそれは大変印象に残る心温まる素晴らしい集いやった。


 
スベ&しほの披露宴 in ブリュッセル
スベ&しほの披露宴 in ブリュッセル
by klavierbaumeister

お料理はドイツよりも繊細で、何よりも塩加減が控えめで有り難い。
僕は普段デザートを食べないけれど(もっぱら飲みに集中するため)甘さ控えめのケーキはペロリと完食。
残念なのはワインを始めに飲んでしまい、お勧めのビールを飲めなかったこと。


余談:
今回集まった友人の方々しかり、どうして日本人女性の国際結婚が多いんやろう?
日本人男性が外国人の女性と結婚する比率が圧倒的に少ないのはなんでやろ?
そう言えばおかみさんも国際結婚やなぁ。 


ーまー









ここはどこや?

2007-06-12 | そのほか
  
  いきなり衝撃的な画像でごめんな

でもこの画像を見たら何処に行ってきたかが一瞬で解ってしまいますやん?
ちっちゃいくせに、大都市のシンボルになってるのが彼のすごいところや。
恥ずかしげもなく公衆の面前で堂々とこのようなパフォーマンスを続ける姿は立派やと思います。

デュッセルドルフから車で2時間。
年に一度この大都市の郊外までピアノ調律には来るのですが、
仕事以外で来るのは20年ぶりなんです。 

今回の目的は二つ。
このハレンチ画像を撮ることと、友人の「やっと入籍できました報告パーチー」に出席すること。

パーチーの報告は次回、初の動画入りブログを予定していますので、楽しみにしててください。
ほな、取りあえずちょっとだけ観光を!

といっても 2画像を並べるだけやけど…… え? これだけかいな?

            〔ブリュッセルの朝と夜〕

車でほんの2時間の隔たりやけど、建物の装いや都市の空間の使い方がガラっと変わります。
もちろん言語も違えば車の流れ方も違う。
当たり前やけど外国に来た気分が味わえます。
チョコレート屋さんや土産物屋などの店員が片言の日本語をしゃべったりするのは、
さすがに観光都市だけあるなと感心しました。


そして次の予告。

      

この場所でドラマが繰り広げられます。 乞う ご期待!

ーまー




空き時間にすることは

2007-06-09 | ピアノ技術者の仕事
 
演奏会でのピアノ調律は、演奏家の到着する2時間以上前から始め、
調律終了後しばらく立ち会いをし、リハーサルが終わるまで待つことになる。
演奏家は開場30分前に、衣装を整えるためと集中力を高めるために一旦舞台を降りることが多い。
その残りの時間で「拾い調律」という最終チェックをし、通常20時から始まる本番に挑むことになる。

リハーサルを長ーくとる演奏家もいらっしゃる。
長い場合は2時間以上。
その間、ピアノ技術者はリハーサルをずっと聴いているか、会場を離れるかのどちらかを選ぶことになる。

今回は天気もええし、結構長い時間の待ち時間やから、ゆっくり読書でもして……
   
自然美術公園(Insel Hombroich Neuss)なので散策には適している。
すでに「本日は閉店」になったオープンカフェの椅子に座って読書していると来客が。
いつも、パンをねだっているのだろう、かわいこぶりっこしている。
中には子連れでやってくる大胆な母親もいる。 
     



彼らに与えるパン屑もないので散歩しよ。
さすが美術公園らしい橋の欄干。
  


突然おとぎの国に入ったような
     

石にされた哀れな奴もいる   

       

小一時間木々の合間を歩いたせいか、クシャミと目頭の痒みを覚える。


会場に戻ってみたが、未だにリハーサル中やった。



16歳の若い音楽家は親の七光りを打ち消すかのように高い壁を飛び越える準備をしているようだ。 
心から応援することにしよう。

ーまー








サトチンの電子音

2007-06-07 | 愉快な仲間たち
 
 むかしむかし(Es war einmal...) 
ーまー親方が一人暮らしを始めたとき、親方の母君がプレゼントしてくれた
当時のハイテクを駆使した〔だんだんトーン〕という画期的な目覚まし時計

合わせた時間になると小さく優しく ピピピピッ ピピピピッと4回
次に少し大きめに4回、それでも眠りから覚めない場合はメゾフォルテで4回
最後はフォルテシモで止めるまで鳴り続ける
黒いボタンを押すとすぐに音は消せるけれど5分後にまたはじめから繰り返してくれる
ちょっぴり過保護な母親のような愛情深い優しいやつだ
今まで1秒の狂いもなく(もちろん電池は入れ替えるが)動き続けているから驚きだ
名前負けせずに精巧に出来ている

今現在はサトチンがそれを使っている。使用人が変わっても律儀な時計は狂うこともなく正確に時を刻み、朝を知らせてくれる 
家宝の1つだ

たとえピアノ工房が小さくともサトチンは自分の部屋を持っている
しかし彼に所有権が移ったこの目覚まし時計の電子音は、薄壁のハザードなどお構いなしに通過する迫力がある

ピアニシモから始まりフォルテシモを最低30分ぶっ続けで鳴らし続けやがる!
ありがたい話や

7時に起きるために第一声を6時に鳴らしやがる

せやのに8時になっても本人が起きてけえへんのはなんでやねん???

(これは詩です)

ーまー    
 

謙虚な気持ちで

2007-06-03 | ピアノ技術者の仕事
 
 特別に緊張なんかする必要もないし、いつものようにまじめに仕事をすればええだけやん。 
「平常心」とか「がんばるで!」とか「失敗は許されへん」なんて、
りきむ気持ちは逆に 本来持っている能力を発揮でけへんこともあるし。

アルゲリッチさんとティエンポさんのピアノ2台による演奏会の調律のお仕事。
身構えないようにしようと思いつつどうしても意識してしまう。
有り難いことに、今までにもいわゆる巨匠と呼ばれるピアニストの調律もさせていただいてはいますけれど、今回は僕にとって特別なお仕事でした。

何しろ昔からのファンなんですよ、アルゲリッチさんの。 
ダイナミックレンジの広さ、無数に奏でられる艶のある音の色変化、ピアノってこんなにいろんな音が出るもんなんやねぇと心底驚かせてくれる演奏家。
ピアノ技術者になりたてほやほやのころ、いつかは彼女の弾くピアノを調律してみたいねぇと、叶わぬ夢を描いていたものです。 ピアノ技術者の憧れってやつですよ。

 

彼女たちから「良い感じに鳴る楽器ですね、ありがとね!」と声をかけてもらい、
満場の喝采がステージ裏まで響いてくると幸せな気分になってました。
僕にとってひとつの夢を達成できた思い出のある仕事になったようですよ。
滅茶苦茶疲れましたけど。

とはいえ、100パーセント納得のいく仕事ではなかったなぁ。
反省点もいくつかある。(ここでは書きませんけど)
でもね「明日は昨日よりも良い仕事ができるようになろう」と思っています。
〔ぽじてぃぶしんきんぐ〕っていうんですかねぇ。脳天気っていうんですかねぇ。


蛇足
今回、調律アシスト(兼写真係)に専念してくれたカナッペ語録その1

「アルゲリッチさんって、Akkochanに似てますね!」

そう言われてみれば、身の構え方や歩き方 髪型が似ています。
カナッペのユニークな感性に脱帽。
でもねアルゲリッチさんはマグロのカルパッチョやイカめしは作ってくれそうにないからAkkochanのほうが親しみがあってええわ! 

ーまー