背の高さが150センチもある。
「デカッ!」と言いながら ずっしりと重いパネルを外す。
オーバーダンパーアクションの古いピアノ。
ドイツ、イギリスで120年前あたりにたくさん作られた問題児。
物理的にみて効力の少ない場所に音を止める装置(ダンパー)が取り付けられているので
エコーがかかったようなエフェクトの音になる。現在のアップライトと比べると
かなり音の止まりが悪い楽器。
長いワイヤーが鳥かごのように見えることからイギリスでは
Birdcageactionと言われているそうな。 (ドイツでは Oberdämpfermechanik)
その長いワイヤーとダンパーは調律作業の邪魔になる位置にあり、調律師泣かせの楽器なんだ。
最近では「オーバーダンパーのピアノの調律はお断りしています。」と敬遠する技術者も多い。
有名メーカのオーバーダンパーピアノは流石にしっかり音の止まりも良く、
嫌いではないのだが、大抵は手をつけるのが億劫になるような楽器がほとんどだ。
まぁ、そんな古い楽器が未だに一般的な家庭で使われていることに
「驚くべし ドイツ人!」を感じるのだ。
確かにお客さん宅でこのピアノを見たとき、その大きさにギョッとし、
おまけにオーバーダンパーであることに落胆したのだが、
結構しっかりと設計されているようなので、仕事を引き受けることにした。
当初、音を整える調律作業だけの依頼だったが、
ダメージが多すぎて調律不可能なの状態なので大掛かりな修理になった。
解体し、響板と駒の修理をし、弦を新調し、象牙鍵盤を磨き……
只今 カナッペがアクション調整中。 もうすぐ完成のはず。
ーまー