マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

写真家のベヒシュタイン 最終章

2011-07-27 | 写真家のBechstein

4度目の工房来訪のカメラマン。
今回はハイタッチではなく、ハグ(ちょっと焦るぜ……)
想像していた以上の出来栄えで喜んでいらっしゃる。








 鍵盤関係、アクション調整や整音など日常茶飯事な作業の進みは特に速い。
最後に譜面台の修理でてこずってはいるものの、ベヒシュタインは完成した。
よい音色してます。タッチも予想どうり軽快。 明日搬出。




カメラマンのキャラクターに振り回されての幾分落ち着かない仕事が終わり、
一息つきたいものですな。




 そうこうしてると、夏休みの宿題が出される。
2台のグランドピアノの修理。
狭い工房、1台を塗装屋さんに出している間に別の1台を搬入して修理するしかない。
まるで業者どうしで時間を申し合わせたかのように同時にピアノが入れ替わる。
グットタイミングな瞬間。


ありがたいことです。 ーまー 

家具職人試験

2011-07-22 | 愉快な仲間たち

 立派なもんです。3年の修行でここまでの作品が作れるようになるんですな。
細かく見ていると、切り間違いや大雑把な箇所もあるんですけれど、
それぞれのアイデアがすばらしいと思った。

家具職人試験に提出された作品の展示会に行ってきた。
サトチンの作品も当然出展されている。晴れて合格、職人になったわけです。










デザイン、作業の精度、アイデア、機能性、いろんな角度から採点されているようです。
スタイルはフリーやけれど、たとえ大掛かりなものを作っても、
規定の項目が作品に無いものはよい作品とはいえないらしい。
とにかく家具職人ですから 木工の基礎が出来ているかが問題になると思うんです。

さて、サトチンの作品。

 




「日本の学生住宅風」とでも訳すのでしょうか
洋服ダンス一丁。



さすがに日本人ですね、 細かく正確です。
大きな引き出しにもかかわらず、指先一本でどの箇所を押しても
スーッと閉まるくらい精巧に作ってあります。
洋服ダンスとしての寸法のバランスも良い感じ。技術面はすごいと思った。
アイデアも面白い。 新聞紙は木に貼り付けてコーティングしてあるようです。



ここから辛口。
今回の試験は展示して人に見てもらう作品を作ることですから、
木と新聞のコントラストが単調なので、そのことを意識するとインパクトが少ない。
新聞を半分くらいにして、他の部分は少し色の濃い木を使えば
デザインがもっと冴えたかもしれません。 
(これから塗装するの?って感じに見えなくもないよね)
家具の大きさから観て取っ手などの部品が小さく、金属部品の統一性が無い。
デザイン的にちょっとすっきりしないってこと…

おっと、辛口が多すぎる。 
じゃぁ、 作ってみいよ! といわれると頭をポリポリかいて
ごまかすしかないので、 とりあえずよくやったといっておこう。 -まー



写真家のベヒシュタイン その6

2011-07-20 | 写真家のBechstein

 良くも悪くも、日本女性は強くて怖い存在や。
昔っから痛感していることが全世界に知れ渡ってしまった。
とことんドラマチックで感動の激戦を堪能させてもらった。



 さて、イケメンカメラマンピアノの納期が迫ってるから少し作業を急ごう。
大事な試合はもう無いので仕事に集中しようぜ。 おう!

アクション(打鍵機構)の修理に入るとあれやこれや予期せぬ箇所の不具合が見つかる。
劣化したフェルトやコードを剥がし、ちょっと工夫を凝らしてとにかく交換。






鍵盤部分の修理をして組み込めば、ようやく音が出せるようになる。
ここまで来ると完成が待ち遠しい。
ボチボチ彼からも連絡がくるやろなぁ。 

 


ーまー

応援するということ

2011-07-14 | そのほか

 応援前の腹ごしらえ。
次に対戦するチームの動きを観察しておく大切な時間。

 世界ランキング4位なのに、あまり強敵扱いされていなかった。
「コビトさんチーム」なんて皮肉られてもいる
でも
綺麗な試合をしている。そして勝負強い。
手足が短い分は瞬発力と頭脳で補っている。 
ようやくみんな気付き始めたな。

 サッカー大国のドイツで日本女子キッカーが2名プレーしてる。
今回はじめて知ったこと。
在独1年の長里さんのブログを見た。
よくあるタレントブログのような軽い乗りではなく、
自己啓発を中心にした自分の生き様を表現しようとしている。
ドイツ語のブログも自分の背丈にあった文章で微笑ましい。
 ドイツ人と一緒に仕事するのなら当然必要なことやねんけど、
ドイツ語学校に週12時間通い、自分からドイツ語を話そうとしている
ところが頼もしい。
 僕たちの応援のおかげで試合に勝ち、インタビューを受けた長里さん。 
聞き取れない質問は通訳を介して問い直してはいたが、
必ず自分のドイツ語で答えを返しているのが健気で関心した。

 日本からはネガティブな話題しか入ってこないので、こちらからポジティブなものを見せてあげたい。
サッカーを通してそれを実行しようとする、こんな素晴らしい人がいるチーム。

どうしても次の戦いにも勝たせてあげたいと心から祈る。   -まー

 

 

写真家のベヒシュタイン その5

2011-07-10 | 写真家のBechstein

 ピアノの話ばかりでごめんな

 順調に進んでいる。バス弦も張り終わり、いよいよアクションの修理に取り掛かっているところ。




修理を開始してから5週間、カメラマンからのメール受信は19通。
かなりの入れ込みようやね。フェルトの色指定や、
鍵盤を漂白するかどうかなど技術的な質問のほかに
ちょっとめんどうなお話もあった。

 偶然、ネットオークションで古いベヒシュタインのグランドピアノを見つけたそうな。
隣町の個人が売りに出したらしい。実際に現物を見に行って、手付金を払ったという。
彼は自分のチョイスに自信があったんだと思う。
確かにネットの画像ではそれほど悪い印象はうけなかったけれど。
本契約前に一緒に見に行ってOkかどうか見てほしいという、面倒なお願いをされた。
(やっぱりどこか不安が残るんやね)

 ネットオークションで落札した楽器を調律してくれと言う依頼は今までに何度も受けてきた。
その中でまともなピアノに出会ったことは無い。調律不可能な楽器がほとんどだった。
売り手は価値のある良い楽器だとセールストークに余念が無いけれど、
じゃぁ 何で売りたいわけ? 理由を考えるとおのずとどんな楽器なのか想像が付く。
きっと今回もあかんやろなぁ、と言う野生の勘が働いている。
「案の定」 響板 駒 ピン板などの木材の割れ、厄介なフレームのひび割れも発見。
足やペダルボックスもオリジナルではないようだ。 
修復はもちろん可能やけど、将来何十年も可愛がられる魅力ある楽器という
彼の思い描く仕上がりになるかどうかは疑問。
オークションで吊り上げられた値段にさらにその何倍もの修復費を出すという
リスクが出てくるわけやし。
とにかく、今回のことは忘れて今修復しているこの楽器に集中しようよ!

 僕は間抜けだと思う? イケメンカメラマンが帰路の車中で聞いてきた。
「欲しくなる気持ちはわからないではないけど、やっぱ ちょっと無謀かもなぁ…」

この楽器の修復だけに時間を費やしているわけではなく、
他のお客さんの楽器のメンテもあるわけで、はたして納期に間に合うか… 







 少しテンポアップを図ってみるけれどこれがなかなかはかどらないんですな。

なでしこジャパンを応援しなあかんし   -まー

写真家のベヒシュタイン その4

2011-07-03 | 写真家のBechstein

 飲酒をするときのように心が弾むほどではないけれど、
写真を撮ることもいとおかし。
写したものの内なる喜び、悲しみ、怒りなどを表現し何かを訴えようするような
芸術的なことを試みているのではない。 
うまく撮れては喜び、下手に撮れては素人やからと言い訳しながら自分で観賞しているだけのこと。
これ撮っとこ! と綺麗なもの珍しいものなんかをドキュメントするだけのこと。 
だから被写体が人物であるということはあまりない。 

イケ面カメラマンが再び工房にやってきた。修理が始まってから3度目の登場。
高級カメラのシャッターがいい音をして切れていく。



  

この日も興奮気味に感激しておられた。 節約型修理をお望みの割りにいろいろ注文が多い。
ゆっくりでいいからと当初は言っておられたのに、今は完成が待ち遠しいらしく、
なんとなく急かされている感がある。どないせぇっちゅうねん。
この後、彼は厄介で面倒なことを言い出してきたのである……

とりあえず 中音までの弦を張り終える (-まー写す)




PS 1  彼が撮った画像を自由に使ってもいいとお許しを得たので 今回は彼の作品をトリミングして載せることにした。必然的に僕の顔が入るわけですが、決して観ないでください。

PS 2  良い子のみんな、張弦するときは必ず軍手をしてね。 素手で作業するのはだめな大人です。
      -まー