マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

水色のひとみ

2007-01-30 | くっさー

なんの不安もなく、悩むこともなく無邪気に静かに眠ってる
『目が覚めたらミルクをねだろう。おっきな声で泣いたらええねん』
これが彼のここ4ヶ月で覚えたこと。


その水色の限りなく澄んだひとみは
今まで怖いものや醜い物を見たことのない証
やがて時は流れ、水色のひとみはさまざまな情景を焼き付けていく

きらきら輝く野原に心弾ませ
遙か遠くまで広がる海原に心動かし
舞い落ちる枯れ葉に寂しさを覚え
突き刺さるような氷柱に怖さを感じる


友人Torbenの息子に初めて会った。
で、名前なんやったけ? 何度聴いてもすぐに忘れてしまう。

ややこしい名前付けんなよ!

                    ~ま~


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琴線に触れる

2007-01-26 | そのほか
 
 これがピアノの低音部に使われている巻き線。
スチール線を芯にして銅線が巻いてある
(比重を重くして低い音を出しやすくするんやね)

メーカや機種によってそれぞれ長さと太さが違うので1本ずつ作っていく。
機械の手助けはあるけれど手作業なんですよ。
小さなピアノ工房には設備がないので外注するんやけど、ここの巻き線は丁寧できれい。



予想してたよりも早く、注文していた巻き線が届けられた。
一気に張ってしまおう! お客さんを待たせてるしね


 
 
くたびれた靴を履いたピアノ
はようやく疲れを取り戻し、
息吹を吹き返し始めました。大変元気一杯のおじさんに若返りました。
もう1週間リハビリが必要ですが、さすが年の功、枯れたええ雰囲気の声してはります。
持ち主のおばさんより確実に長生きします! 


 ところで、ブログの友、Noelさん。
どういう訳か1月11日の記事が彼女のピアノ線(琴線?)に触れられたらしく、
素敵な漫画を描いてくれました。
大変優しくて暖かい、それでいて訴えどころのある素晴らしい作品です。
感心する事は、一度もお会いしたこともないブログ内のお友達なのに
親方の雰囲気がそっくりで、おまけに瓜二つなくらいハンサムに描かれているところです。
この場を借りてお礼申し上げます。
是非ご覧ください。クリック→ 太っちょおじさん

ーまー


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はかなき祈り

2007-01-23 | ピアノ技術者の仕事

 正直言うてちょっと焦ったょ今回は…

古典楽器を使った5重奏の演奏会 オーボエ、ファゴット、クラリネット、ホルン、 
そしてピアノフォルテ(Hammerklavier)でモーツァルト、ベートーベン、ダンツィーのソナタがプログラム。 
もちろんピッチも低めの430ヘルツ(絶対音感、それでも必要ですか?)
 

前日の夜、ピアニスト直々に調律のリクエストが携帯電話に入って来た。
ちょうどリースリングワインを軽く飲み始めた時間に…
手強いピアノだから覚悟しててねというのが彼女の念押し。
《了解しました!》と軽く返事はしたんやけど現実は…

リハーサル前、かなりの道のりを移動して搬入されたピアノフォルテの調律を始める。なんか変な狂い方をしてた。

〔ピアノフォルテとは、上記作曲家たちが当時使っていたピアノで、現在のピアノよりももっと原始的な構造でできている。発展途上の楽器といえばわかりやすいかなぁ。
いろんな意味で華奢(きゃしゃ)なんです。調律が狂うのは当たり前の設計。
でも独特の味のある音がするし、実際当時の作曲家はそんな楽器で曲をイメージしていた訳やから、古典楽器での演奏会は彼ら昔の巨匠の感性に近づける音楽のタイムマシンなんよ。〕



リハーサルに立ち会った。はじめはいい感じで響いていたので楽しかったんやけど
そのうちピアニストが弾くごとに調律が狂って来るのがわかる。

《おいおい、なんちゅうこっちゃ!》

聞くに堪えられん位の狂い方になり本番前に少し多めに時間をもらうことになった。

《これが本番で起こったらかなりまずい演奏会になるなぁ。えらいこっちゃ》

狂い方が、搬入時とほぼ同じように戻ってる。変な狂い方。
時間制限があるのでとにかく再調律しか方法はないやん。
後は再発せんように心から祈るだけ。



本番中は手に汗握る気持ちでしたわ。
贔屓のボクサーが打たれ続けてノックアウト寸前の状態を応援する気分。
危なっかしい足取り、ダウン寸前で休憩になった。
15分ほど時間があるので舞台に上がりピアノフォルテの疲労回復につとめる。

一般にいう舞台風(温度差で発生する冷気が舞台後部から吹き降りてくる現象)が原因だとわかる。
せやから変な狂い方をしてたんやね!?


気持ちは焦ってたけど、ちゃんと写真撮ったりしてるわけで、まだ余裕あるんかなぁ。
でもな、疲れたわ。時間束縛8時間     ーまー


  ← 最近ちょっと……

正しいワインの勧め方

2007-01-18 | ピアノ技術者の仕事
 
 「まあ、そう言わんともう一杯のみいなぁ」
飲めない人、飲みたくない人にワインなどアルコール飲料を勧めるのはほんまに
気配りが大事やと思うんです。
普段大人の社交上の接待をしていても、学生の〔強制一気飲み〕と同じくらい
飲まされる本人には苦痛を感じさせてるかもしれません。

逆に、どうしようもない飲んべーに忠告 する時にも気配りが必要です。知ってた?
「ほどほどにしといたほうがええよ」
「絶対飲み過ぎよぅ! いい加減にしたほうがいいよ!」
こんなこと言われると彼らは(三人称複数)逆ギレでいつも以上に飲んだりするからね。
「まだそんなに飲んでへんっちゅうねん!!」 てね?


絶対にやめて欲しいのはピアノにワインを飲ませること。(?_?)エ?
ご存知のようにピアノはワインが苦手です。
でもワインを飲ませてしまった〈ーまー工房〉のお客さんの悪い例(先週のお話)
   
アップライトピアノの天板。日本ではよくフランス人形とかイギリスの兵隊人形さんの毛ばたきムートンなどが飾ってあるピアノの屋根。
その天板には長いヒンジ(蝶番)があり、そこからワインを飲ませたという始末。
愚かにもピアノの上でワインをグラスに注ぎ、誤ってそこにこぼしたのが悲劇の始まり。
低音(左)側の巻き線(前々回のブログ参照)を目標にボトボトと大量の赤いワインが流れ落ちていったとさ。

救急隊員 ーまー親方が駆けつけたときにはことすでに遅し。
ピアノのフェルト部分は紫色になってました。(飲ませすぎやね)
画像ではたいしたことないように見えますが、左手で弾く部分はほぼ全滅。
和尚さんがたたく木魚のような音しか出なくなったピアノ。
5年前に中古で買ったピアノの値段と限りなく近い修理費が今回かかってしまいますのよ。

ピアノはワイン以外にも花瓶の水や金魚鉢の水も苦手にしてますので、
どうか彼らには無理に勧めないよう、ピアノの近くでは飲まないようにしてくださいね。
 んなもん、飲まへんちゅうねん

お願いね!      ーまー

まけない道場

2007-01-14 | 笑い

 「最近あまりヴァイオリン弾いてないのに めちゃ肩こってるわぁー」おかみさんが呟く。
独り言のわりに四方5メートル範囲内ではっきりと聞き取れるパフォーマンスで朝が始まる。
マッサージを乞うのならもう少し直接的な方法を使うべし。
肩こりの原因は「加齢」やね、「華麗」と違て。 
それともハウスバーモントですか? それともグリコワンタッチですかい? 


サトチンが日本からPSPを買って帰ってきた。
 ぷれいすてーしょんぽーたぶる! 太っ腹の大人買い
日本に研修に行ったというよりはこいつを仕入れに行くことが大きな目的やったのかもしれんね。



200%サトチンに所有権があるこのゲーム機
どういう訳か今のところおかみさんが独占している。
世間一般にいうところの「はまる」というハレンチな言い回しがよく似合う

「あーあー 僕のなのに全然遊べないよ!」
「まー いいじゃないの もうちょっとやらせてよ!」
とりあえず軽いジャブの応酬はあるものの、いつものバトルには発展しない。

なんでやろ?

サトチンは力ずくで権利を取り返すこともせず、またイライラすることもなく……
おかみさんは悪びれることもなく、うれしそうに……

この母親と息子の力関係がおもしろい。猿の縄張りのような自然な縦の力関係。
動物の生態って不思議やなぁ。


「いまなにしてんの?」親方が優しく尋ねる
「………」無言
「なぁ、 今何してんのって聞いてんねんけど」
「ゲームよ!」
「そらゲームはわかってるっちゅうねん、仕事してるようには見えん!
何のゲームしてんのって、コミュニケーションを図ってるねんけど」
「あーもー! ちょっと黙って、今しゃべられへん!」

おかみさんへ
肩こりの原因、自分でもわかってると思うけど…

僕は負けない      ―まー


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段取り悪いなぁ~

2007-01-11 | ピアノ技術者の仕事
 
 「この調子でいきますと、今月中旬には修理完成しまっせ! おたのしみに!」
お客さんを糠よろこびさせてもた。


研修生カナッペの強力な協力のおかげで、予定より遙かに早いペースで
作業は進んでたんよ。
せやけど、業者に部品注文してもクリスマスと年越し騒ぎで部品の到着は遅れた。

おまけに
寸法の違うもん送ってきよった!

もう一つおまけに
いつも依頼してる〔巻き線屋〕のオヤジが亡くなったとかで注文のキャンセルがきた。
(巻き線とはピアノの低音部分に使う弦。1本ずつ銅線を鋼鉄線に巻き付けて太さの違う弦をハンドメイドする)

ピアノのオーバーホールで最初に作業を終わりたいのは弦を張ること。
《張弦》て言います
弦1本につき80Kg重 (体重 80キロ のおっちゃんが1本の弦にぶら下がってる状態)
くらいの引っ張りの力が加わっているので、なるべく長い時間をかけてその力にピアノを慣れさせなあかんのよ。
(何しろ1台230本くらいあるからな。230人の太っといおっちゃんがぶら下がってんねん、ピアノの中で!)

完璧に作業の順番が逆になってしまったってわけよ。



さらなるおまけは
取り合えず張弦作業を始めたけど、手持ちの弦(これも0.025mmずつ太さが違う)
の在庫がなくなり、作業中断や! 

誰の責任?

僕の……



ところで
ここんとこドイツは暖かい。気温15度! 
+15度やで! これどうよ!

桜の花が咲き始めよったで! だいじょうぶか?

気候まで段取り悪いがな 


ーまー


それでもクリックしてくれますか?
  

これがドイツの新年会や!

2007-01-08 | 愉快な仲間たち

新年会言うてもドンチャンするんとちゃうよ。
ちょうどペルーから帰ってきてるスイス人のおばちゃんも遊びにきてるっちゅうんで
ルチアとセバスチャンの新居を覗いてきてん。バーバラ(童話のカテゴリー参照)も一緒。

玄関を入ると天井の高ーいモダンなキッチンでルチアが迎えてくれた。
料理を作る人も一緒に会話に参加できるので厨房はオープン型がええね。



ドイツ、日本、ペルーの生活文化の違いを面白おかしく話した。
どういう訳か毎回必ず話題になるのは映画『将軍』の一コマ
  ワカリマスカ? アンジンサン
  イイエワカリマセン トラナガサマ
ハッ!

 

作ってもらったお料理は

ナツメのベーコン巻きとキッシュ(前菜)
ニンジンとショウガとオレンジジュースのスープ
(え?っと思うけど味の絡み方が良い!)
トルコ風 ディップ (ピンク色のたらこ入りが白ワインにグー)
グリーンサラダ
(巨大サラダボールとペルーおばさんのドレッシングが印象的)
スズキのムニエル ジャガイモ添え (ニンニク タップーリ)
フルーツ甘露アイス ← 言い回しがへん!

  

《ジャガイモはナイフで切ってはだめ!フォークの背中で潰してから食べるべし!》
と昔ドイツ食マナーで見聞したけど、これは大昔の風習らしいで。
ソースが付いている場合に潰して食べると味がジャガイモにしみ込むのでおいしく食べれるかもしれへんけど、
『ナイフで切ってなんであかんのじゃ!』彼らの意見です。


生きたドイツ語ワンポイント講座

 Suppe essen ズッペ エッセン  スープをいただく

スープは食べる(essen)ものであって飲む(trinken)ものではありませぬ。
ですからズルズルジュルジュルすすらない食べ方がエレガントかと思われます。  
コーヒー、紅茶など熱いものを飲むとき、スパゲッテイの時も我慢です。
日本茶、そば うどんを食べるときに日頃のストレスを解消しましょう。

ーまー



ストレス解消に指の運動! はい クリック!
   

これがドイツの正月料理や!

2007-01-05 | 愉快な仲間たち
 
 ヨーロッパといえどもここデッユッセルドルフは日本食材に悩むことはない。
おせち料理なんかチョチョイのチョイ!
でもな、おかみさんが大晦日の夜まで仕事があったので 今回は作る暇なしやった。
でもな、何とかそれらしくしてみたいやん? 1年に一回やねんから。

今年はサトチン不在のお正月やけど研修生カナッペ(勝手に命名)がいるので
一緒に新年のお祝いをしようってことに極めて自然に決定。
珍しくおかみさんと喧嘩もすることなく夕方から一緒に準備を始めた。
カナッペもいろいろんな若い人とお話ししたいやろうということで、
急遽カズビー、はまじーコンビに声をかけると即答でOK

約束の6時過ぎてもカナッペ現れず、カズビーコンビの方が先に到着
 やっぱりお祝い事なんでしばらく到着を待つことに…
1時間経過
 やっぱりお祝い事やけど先に始めてよかということに…
1時間半経過
 やっぱりなんかあったんちゃうか? ちょっと心配に…
2時間経過
カナッペが日本から持ってきてくれた大吟醸も既に半分以上飲んでしまってる
(お父さんお母さん、お気遣いいただき恐縮です。) 

  『親方は だいぎんじょうも 好きやねん! 』

一句詠んでみるもさすがに大心配になって宿泊ホテルに電話をすることに…
僕が電話するよりも女性の声の方がいいのでおかみさんが問い合わせた。
(なんという気の遣いよう!)

ホテルにおった! よかったー!

電車でGO!  市電をランダムに乗り回して街の様子を楽しんだ後ホテル戻り、
しばらく横になってたらそのまま爆睡したらしい。
日本から来て日が浅く時差ぼけの中、研修の緊張と年越しの祭り騒ぎも加わり、
お疲れさん状態やったんやね。
それでも慌てて来てくれて楽しくお祝いできたし、めでたしめでたし。


カナッペへ
今回の遅刻は全然気にせんでもええけど、しばらくはこのネタでからかったげるわ!



 ーまー     
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これが男の年越しや!

2007-01-01 | 愉快な仲間たち

静かなクリスマスとは逆に、ワイワイ楽しく新しい年の到来を祝うドイツの年越し。
Silvester ジルヴェスター 大晦日


カウントダウンが始まると男どもははしゃぎだす。何で火遊びが好きなんやろう。
毎年準備する花火の量も確実に増えてる。 
着火に夢中。風が強いので容易ではない。
親指を真っ黒にして頑張るオヤジと青年達、火遊びに年の差はない。
 
    
若いなあと思ったのははまじー 
場を盛り上げる天才。 酔っぱらいながらも真面目に音を楽しもうとする健気さが好き。
今ならまだ無料で聴ける彼の演奏。悲しいかな、ピアノの調律が…許せ!
数時間後に演奏会あるっちゅうのにあの飲みっぷりは……

    
最近知り合ったデニス、ジャズドラマー 
ほぼ日本人社会で成り立ってる今回の宴、違和感なく参加している。 
割り箸を巧みに(僕よりうまいかも)使ってチョコレートケーキを食べる姿がドイツ人離れしててかっこええ。

    
ほんまもんの技術屋秋山様差し入れの 話題のトヨタF1レーサー絡み ワインを嬉しそうに掲げるカモメさん
いつもは厨房に入り浸りやけど、今回は一緒に楽しめた。


ワイワイ楽しい宴の後、目が覚めるとムカムカしてたりガンガンしたりはつきものやけど、今回は全く何ともなく、すっきりとした新年の朝を迎えた。
年を重ねるごとに大人の飲み方が出来るようになってきているようで
自分で書くのもなんやけど 少しずつ賢くなってきてるわい。


―まー


  今年もごひいきのほどお願い申し上げまする