マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

夏の友 2012 途中経過2

2012-07-26 | ピアノ技術者の仕事

 7月上旬から始まったちょっと珍しいピアノのオーバーホール。
弦の張替え、アクションや鍵盤の部品交換も終わり、大まかな調整に入っています。

構造を考察するのに都合のよい段階に入りましたのでお知らせします。
ちょっと説明するのが難しいのですけれど。
話が専門的になってしまうけれど、  ごめん。 

 


棚板の底に取り付けられたフック(スライダー)をグイッと力強く引くと
鍵盤を左右にスライドさせる準備ができます。
鍵盤はちょうどグランドピアノのシフト(左ペダルを踏む)のようにキーフレームごと動くのですが、 半音ずつ動くように溝が付いています。

同時に鍵盤後部に付いたストッパーが作動します。
スライドさせている途中に鍵盤が絶対に下がらないようするための安全策です。
  

図1  通常の状態。 最低音の鍵盤A(ラ)に注目。
    鍵盤Aを押すとAの音がでます。



図2 スライダーを一番左に動かした状態。(鍵盤が右に3段階分スライドする)
   鍵盤A(ラ)は アクション左から3番目C(ド)に上移動
   鍵盤A(ラ)を押すと C(ド)の音が鳴ります。(1音半上に転調)



図3 スライダーを一番右に動かした状態。 (鍵盤が左に3段階分スライド)
   鍵盤A(ラ)はアクションから逃げて、アクション最左にはC(ド)
  の鍵盤があります。 鍵盤Aの音はもちろん鳴りません。
   鍵盤C(ド)を押すとA(ラ)の音が鳴ります。(1音半下に転調)



要するに、いわゆる「絶対音感」をお持ちの方が、
この鍵盤移動装置付きピアノで演奏すると
気が狂ってしまう可能性があるということです。
ちなみに、ピアノ技術者は絶対音感は全く必要ありません。



 最近こんなエプロンを作業中につけています。 料理するときにも使ったりします。
特に宣伝しているわけではありませんが、友人を介して買わせていただきました。
まだお金払ってないことに再度気がつきました。支払い方法をお知らせください。
ーまー
   

CD できたよ

2012-07-22 | 南アフリカ物語
  
 こんなに綺麗に仕上がるとは思っていなかった。



演奏家のスケジュール調整も難しく、日本とドイツとの距離感を感じる
校正の問題、印刷業者との交渉。
CD制作でこの時間と労力を費やしてくれた高石女史に先ずは
スペシャルな感謝と敬意を表します。






僕はピアノ調律で参加したんやけれど、南アでのライブ録音と、デュッセルドルフでのスタジオ録音で使った
3台のグランドピアノ(ヤマハと古いカワイと新しいベヒシュタイン)の違いがでていて大変興味深いのだけれど、 





ジャケットに僕が南アで写した動物達の画像を使ってくれたのが、
何よりも嬉しい驚きでした。







だから 全ページここに載せちゃいます。   -まー 

寄り道して帰ります

2012-07-21 | そのほか

 それでも食べ続ける熊田、
ビールが健康飲料だと確信しているサトチンの2名も同行している。

寄り道をした。 
この後一人旅になる、食べ続ける熊田をこの地で落としていくのが目的でもある。

 

Leipzig
神様 バッハ所縁の地。
トーマス教会、我々音楽関係者は素通りしたらあかん、まさに聖地やね。
先生、なんかすっきりしはったようにみえるなぁ。




 少し遅めの昼食を摂る。
ま、おかみさんに任せておけばその土地に関連するところを
うまく探してくれるので助かる。


 
Coffe Baum ヨーロッパで一番古いコーヒーハウスのひとつとして有名。 
ナポレオン、ゲーテ、ワーグナー、シューマンも訪れたという。 
二階までがカフェーとレストランになっていて、その上はコーヒー博物館になっている。





   

大変上品な料理でしたよ。  -まー


かぼちゃの君が住む村

2012-07-19 | 愉快な仲間たち
 
収穫されたかぼちゃを毎年送ってくれる友人夫妻が住む村。
Seifhennersdorf(ザイフへナースドルフ)はデュッセルドルフから東に710Km



チェコとの国境の村。ここが緑のたぬきが産まれてくる場所や。
冬はマイナス20度が何日も続く凍てつく寒―い村。
そのピアノ工場は毎朝6時から稼動する。 体育会系の朝練の気分。
古い友達は、ガソリンスタンドもない最果てのそんな東の小さな村で
緑のたぬきを作るピアノ技術者。
震えながら朝早くからピアノ作りに勤しむ彼のことを 「仙人」と自分勝手に呼んでいた。 
最近は「かぼちゃの君」と呼び名はすこし出世した。

 来年はきっとそちらに行くからね、と社交辞令的な一行をかぼちゃのお礼メールに
毎回書き続けていたため、「いくいく詐欺」扱いされて肩身の狭い思いをしていた。
今回ようやく実現し汚名挽回できたかな。 とりあえずうれしい。





 村からさらに遠ざかった集落に彼らの畑付き住処があった。 
焼き鳥バーべキューを摘みながらとびっきり美味い地元ビールで乾杯させてもらいました。
ほんとゴチになり申した。


 翌朝、これまたドッキリするくらい美味しいゆで卵を出してくれるホテル
での朝食を楽しむ前に少し村を散歩した。
(ちなみに村にはホテルが2つしかない!?)
りんごは買って食べるものではなくそこらへんのをもぎとって食べるのもの
と言う村の掟のとおり、たいていの庭先にはりんごの木が見られ、
まだ青く固い実が星の数ほど生っていた。





 お世辞にも活気のある村とはいえない。織物産業でにぎわっていた昔から比べると
きっと過疎になっているんやろなぁ。 空き家が多く、廃墟になった大きな館も見かける。

人の数より動物のほうが多いんとちゃうか?
先ずは、あちらこちらに出没する猫。
 


丸顔で耳が少し小さめ、皆同じような顔つきをしているのが不思議、
きっと兄弟親戚なんやね。きっと東訛りで鳴くんやで。 
馬、牛、鶏、家畜が多いのも当たりまえ、野生の鹿が足早に道路を横切る姿もこの目で見た。

 かぼちゃの君邸に向う牧歌風景の道、最後のカーブを切ったときに突然現れたのが
ラマ牧場。 肝心のラマとは対面でけへんかったけど、




なんでこのロケーションにラクダがいるのか?

緑のたぬきが産まれる村は やっぱりなんか変なのです。  -まー

緑のたぬきが産まれる村

2012-07-18 | ピアノ技術者の仕事

 
 きっちりと整ってとても明るいピアノ工場。
僕の第一印象なんやけど、今回で2回目の工場見学をさせてもらった。






 CNC(コンピュータ制御の工作機械)をふんだんに使い、誤差のない製品を作る。
それプラス、職人の匠がないとあかん作業は頑固に伝統を守って、
魂を楽器に染み込ませていく。





緑のたぬき = ベヒシュタインはドイツ製なんやけど、ドイツのどこなん?

 

 これが結構おかしな村にあるんです。
次回、そこんとこを書いてみます。   ーまー

夏の友 2012 途中経過1

2012-07-14 | ピアノ技術者の仕事

 そうこうしているうちに、仲間が増える。
レトロな兄さん1953年Braunschweig生まれ。
当時はきっと斬新的なデザインで目を引いたことやろな。

 

五月人形のかぶとみたいな楽譜立ては鍵盤蓋に収納される。アイデアがカワイイ
お客さんが休暇中にいろいろと修理調整して、元気になってもらおう。


 さて、ええとこのボンボンはと言うと 錆びた弦を緩め、外し、チューニングピンを抜く。





綺麗に掃除してあげた。



100年経ってても響板が割れてなかった。珍しいことや。
駒圧(ちょっと専門的でごめん)もしっかりあるのでええ具合。



高音側から弦を張り始めています。

早く音を出したい。 でも慌てたらあかん  -まー

夏の友 2012

2012-07-09 | ピアノ技術者の仕事

 初めてこいつに出会ったのは2005年6月。 
1901年Stuttgartシュテュットガルト(書きにくい)生まれ。

 
  
 こいつは楽器博物館で展示されるような結構珍しい奴なんや。
鍵盤を左右三音、半音ごとにスライドさせることができる、
特殊技術の持ち主。

 
 
簡単に説明すると、ドの音を弾いてもラの音を出すことができる
 ややこしいか? 
Dis-Durで弾きにくかったら鍵盤をスライドさせたらC-Durの指遣いでも弾けるんや。
 よけわからんか?
グランドピアノの左ペダルを踏むと、ちょっと鍵盤が右にシフトするやん?
それが合計6音分段階ごとにスライドさすことができるんや。
 全く分かれへんか?
歌の伴奏で半音上げてんか? て頼まれても悩まずに転調できますねん。
 やっぱりあかんか?



ピアノ技術者やったら、いろんな疑問が出てくる。
アクションも見せたるわ。 

 


なるほど! やろ?
アクションは動かず、鍵盤はセクションの別れがなくそのままスライドできるというカラクリですね。


 こいつは結構優秀なええとこのボンボンやから、きっちり直してあげようねって
2005年からずっと言い続けて、ようやくオーナー(一般のご家庭)がOKしてくれはってん。
7年の間に見積書4回書き直しましてん。

どこが悪いって言うと

  


赤錆で調律するのも 弦が切れそうで怖かったし(実際2本切れたし)
フェルトの虫食いもあるしね。
とりあえず解体をして、部品調達から始めることにするわ。
  

 

楽しい夏休みになりそうや    -まー