マイスターのお道具箱

ドイツに住むピアノ技術者、ーまーのブログ

「チビ」の思い出

2007-03-30 | そのほか

 彼は家の中で放し飼いにされていた。
全身黄色で赤い目玉のセキセイインコ
名前は「チビ」。かわいいやつやった。完全に手乗りインコ。
ある日ふと気がつくとチビの姿がない。
探 しまわしたあげく見つけたのは金魚の水槽の中、水死していた。
大変悲しく辛い気持ちで冷たく固くなったチビを水槽の中から
そっと取り出している子供の僕がそこにいた。

 初めてショックを受けたのはドイツに暮らし初めて一月ほどたった頃やった。
ドイツ生活にも随分慣れ、いろんな物を試してみたくなる時期。
その日もスーパーに買い物に行くのを楽しみにしていた。
当時の野菜売り場はシンプルで、ジャガイモ、にんじん、キャベツ、キュウリくらいしか種類はなかった。
本当に大根やレタスは存在しなかった。
だから、こいつが陳列棚に並んでいることに気づいた時の驚き様はなかった。
ドイツ人て残酷なやつらやなぁ。他に食べる物ないんかいなぁ。




野菜のコーナーに「チビ」の死骸が並べられている。
こいつの名前はチコリと言う。ベルギーあたりで盛んに作られているらしい。
もちろん日本でも当たり前のように売られていると思われる。

 そうこうしているうちに僕は結婚することになる。 
ある日、当時(も)若くて綺麗やったおかみさんが僕のためにグラタンを作ってくれた。
旬のチコリが綺麗に並べられた熱々のグラタン。

いや、食べ物に好き嫌いがあるんとちゃうねん。
僕には「チビ」の丸焼きにしか見えへんねん。
どうしても思いだすんや、あの固く冷たい感触を!

チコリのばか!


―まー

ロバと犬と猫とニワトリの街で思うこと

2007-03-26 | ピアノ技術者の仕事

 北へ向かって2時間半、爽快なドライブを楽しみハンザ都市ブレーメンに到着。
目的は観光ではなく、恒例音楽隊のピアノ定期調律。

夏時間になり1時間早くなるとしばらく朝が辛くて不愉快やけど、
三文ほど得することもある。
日が長くなるので夕方でも天気がよいとこんなに明るい。気持ちいいねぇ     
ましてブレーメンはデュッセルドルフよりも300キロ北に位置するから日没がさらに遅い。




 世界の有名な観光名所は訪れてみると意外とオブジェが小さくてちょっとがっかりすることが多い。 
ブリュッセルの小便小僧や、ブレーメンの音楽隊もその中に入る。
でもまあ、「なーんや」て思いながらも目的のひとつを見られたという達成感を味わうためにしばし眺め、カメラに納める。
小さくっても世界中から人を集める力を持っている彼らはやっぱりえらいと思った。




 ブレーメンの街の雰囲気が好きだ。ゆっくりと時が流れているような落ち着いた気持ちにさせてくれる。


さぁ、明日もがんばろ!


―まー 

ここは何処? 私は誰? 

2007-03-24 | ピアノ技術者の仕事
 
 ここはお寺の本堂。ピアノの調律をした。

親方、また日本に帰ってはったん?

んにゃ、デュッセルドルフには日本のお寺があんねん。
恵光寺というんやけど、僕ら住人にはEko-Haus(エコーハウス)と呼ばれて親しまれてる。
ドイツと日本の文化交流を目的として建てられていて、色んな催し物が開催される。
リンクを見てくれはったら僕が説明するより詳しく無理なく理解できると思う。

今回はその本堂を使って能オペラ「藤戸」という作品が演じられた。
有吉佐和子さんが原作らしい。

お寺の本堂にピアノはビジュアル的に違和感があったけど、
ピアノの響きは建物が木造やからかなぁ、荘厳などっしりとした音のイメージやった。


この日本庭園の写真は去年の3月に撮ったやつ。
演奏会の日は春雨がしとしと、寒気盛んやったから撮る気力なしやった。

―まー




まだ続けるか?
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なんか寒くてねー

2007-03-21 | そのほか

体がかちかちに固まってるね
気がつくと 腕を組んで背中丸めて肩をすぼめて……
寒いし、眠いし 外に出る元気もなし

取りあえず、かろうじて仕事だけはこなしてる。

気がつくと今まで欠かしたことのないワインの在庫もなくなった。
こんな日はウオッカの梅干し割がよく似合う(焼酎ないから)

ピアノ工房の看板の蛍光灯が切れたのではしごを出して交換した。
小雨ちらつく中… 久々に少し動きのある行動。
凍える手がプラスのドライバーを不器用そうに回転させる。

カズビーが「まいどー」と寒そうに声をかけて通り過ぎていく
はしごの上からちらりと見えた。


春分の日、次の日曜日から夏時間になる。冬に戻ったはずやのに


―まー



強いて強要はいたしませんが…
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私、ピアノ工房に採用されることになりました

2007-03-18 | 笑い
 
 本日付で映像記録部に配属されました。

 松下ルミでーす

ご覧のとおり、チビの顔グロです。でもちゃんと仕事はしまーす。
特技は瞳孔を開いたままのウインクでーす。
座右の銘は 狙った獲物は逃がさない かなぁ?
先代の幸之助おじさまに負けないよう、
また親方に落とされないようしっかりと食らいついていきまーす。

応援してね!       松下ルミ


 再起不能の幸之助をゴミ箱ポイできないで事務机の横に飾ってあります。
いい仕事をしてくれていたのでなんか可哀想な気持ちでいっぱいです。
新人の松下ルミ君は幸之助よりも少しだけ能力が上回り、
さらに繊細な仕事をしてくれると思います。
浜崎あゆみさんが雇っている最新人は世界初の薄さが自慢だそうですが、
時と共に薄くなるのは僕の頭髪と同じなので興ざめしました。
(というかほんまは高かくて手が出えへんかってんけど……)

―まー


シャッターボタンを押すように…
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僕のこと忘れんといてな!

2007-03-15 | 笑い
 
いくら親方が凄腕のピアノ技術者やゆうても
道具なかったら何にもでけへんがな!

今日は結構慌ただしいスケジュールなんよ。
でもな、スタートが少し遅かったし、雲ひとつない青空で太陽の光が心地よく目にまぶしいし。
誰かってのんきな気分になるわなぁ。

一件目。えさんのスタジオまえに到着。車のトランク見たらお道具箱がない!
工房に置き忘れてるやんか! 
出かける直前まで覚えてたのに、工房の観葉植物に水をあげた後そのまま置き去りにして出発した僕、あほやね。 
遅刻の電話をしてすぐにとりに帰ることにした。(それしか方法はないし)

その後すべて30分遅れが積み重なって進んでいく。おかげでお昼ご飯が3時半という結果。

最近、忘れ物が多い。
 
作業してる時って、色んなことを考えてるんよ。
次のお客さんのこととか、3ヶ月後に払う塗装屋への資金繰りのこととか、
チェンバロのやっかいな修理の方法とか、夜ご飯は明太子スパゲッティーと白ワインがええなぁーとか……

余計なことを考えて気持ちがそっちに行ってしまうと、次にやることをすっかり忘れてたりすることってあるよね。ねっ!?

最終の仕事が終わり、その帰り際、おかみさんから頼まれてた練習室入り口のごく小さな花壇用のスイートピーを買いに行った。
危うく忘れるとこやったけどおかみさんの言いつけは絶対やからね。忘れたらあかん! 
でもその前の日に頼まれてたミネラルウオーターを買うの忘れてたわ。どないしょー

―まー

単なるオヤジの日記やんかこれ!
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ハロー ダーリン

2007-03-13 | そのほか

りんりんりりん りんりんりりんりん りんりんりりん りーりりりりん
りんりんりりん りんりんりりんりん りんりんりりん りーりりりりん
りんりんりりん りんりんりりんりん りんりんりりん りーりりりりん
わお!
明日は卒業式だから これが最後のチャンスだよ
指の震えを押さえつつ 僕はダイヤル回したよ


そう、電話はダイアルを回してかけるもんやったんよ! よい子のみんな。
(長い前ふりやなぁ)

この画像を見て懐かしいと思われる方、結構ドイツ長いですよ。
このグレーの他に黄土色、モスグリーン、オレンジ色と典型的なドイツの匂い漂う色しかなかったんよ。
「私まだ使てるよー」て言う人もきっといてると思うけれど。電話カバーなんてのもあったね。
この後に同じ形でプッシュフォーンがでましたね。ボタン押してもピポパの電子音と違う。 
押した数字の数を電話機が後ろの方で一生懸命数えてはった。
9を押すと9回プツプツ聞こえてきてた。混線も多かった。

ファックスもなかったし、e-mail なんて画期的なものは想像すらしてなかった。
これがほんの20年前の通信手段やった。
そう思うと、便利でスピーディーな時代へと急激に進化しているのが恐ろしくなるね。

でもね、胸の震えを押さえつつ自分の想いを伝えようとする純粋な感情はいつの時代も変わってほしくないものですね。

―まー(おお! 静かにまとめましたな。)



ダイアルなど回す必要はありません
マウスをクリックするだけでよいのです……
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幸之助の悲劇

2007-03-10 | そのほか

 青空が広がると気持ちがええね。
木蓮の花詞は「のんき」に違いないね。
一斉にぽかーんと空に向かって口を開け始めた。もうすぐ春やね。

そんなのんき顔の木蓮を撮ろうと幸之助をポケットから取り出し構図を考える。
やっぱりドイツの建物も入れた方がええかな? 
青い空とピンクの花のコントラストだけの方がええんちゃうかな? 
のんき顔のどアップもええかもな?
などと迷っているうちにどうでも良くなって、
なんかつかみ所のない画像しか撮れへんかった。 
次の天気の良い日にもう一度撮り直そう……


 不運なことに幸之助を地面に落としてしもた。これで2回目。
前回、ボディーの凹みが原因で動かなくなっただけやったから何とか自力で直したけれど、今回は手強いぞ。
電源が入ったり入らんかったりしてたけど、そのうちレンズをニョキッと出したまま固まってしもた。
取りあえず解体して中を覗いたけれど原因など解るすべもなく、再び組み立てた。

すると、あたかも直ったかのように普段と変わりなく動き出した。 おっ?
撮影した。写った。やった! 直った? 

 その5秒後、「電源を入れ直してください」という表示が出たまま動かなくなった。
言われたとおり電源を OFF そして ON …
10秒すると再び「電源を…」といいながら固まりよるやんか、幸之助!

 そして今、写真を写すには電源を入れてから10秒以内にシャッターを切らんならん。
結構忙しい撮影技術が必要やねん。シャッターチャンスなんてあったもんやないで。

―まー



まあそうおっしゃらず クリックしてくださいな
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悪魔と天使

2007-03-08 | ピアノ技術者の仕事
 
 色白のお雛様はきっと日焼けを気にすることでしょう
日射しがエネルギッシュになりそうな日曜日の朝8時です。
せっかくの散歩日和をぐっとこらえて演奏会場に向かいました。

夜20時からの演奏会なのに朝10時にはピアノ調律を終わっていなくてはなりません。
巨匠ソコロフ氏は練習の鬼。昨夜も23時まで練習していたそうです。
難儀な注文を付けてくるのではないだろうかと不安もありますが、
いざ調律を始めるとなぜか「今日はうまくいきそう!」という予感がしてきましたよ。

初対面なのでまず何語で話せばよいのかで悩み、
どのようなタイプの方なのかが気になって
前日はあまりワインが進みませんでしたね。


プログラムの写真はかなり若いときのものやなぁ。
これが彼への第一印象です。気さくなお人柄でほっとしました。
長――い練習を終えられたあと、ピアノ調律をもう一度繰り返します。
本番前さらに1時間指慣らしをするとのこと、それでも充分調律の時間はありました。

演奏曲目は シューベルトのソナタc-moll が前半
後半は「左手のための2つの小品」を始め、ソナタ、ポエムなど
スクリャービンの作品オンパレードでした。

ボブ サップのタックルのように炸裂する強烈なタッチは地響きのようにピアノを轟かせ、
弦や鍵盤が飛び散るのではないかと思うほどの迫力(ffffffくらいはある)です。
自信のある調律に仕上げましたが、途中で狂っても当たり前やねとあきらめの境地にさせてくれました。
ど迫力の大音響以上に感動したのは彼が奏でるピアニッシモの透き通るような美しさです。
あの 繊細な音色 は太くて重い指だからこそ出せるなのだと思いました。
黒澤明監督の著書の題名「悪魔のように細心に、天使のように大胆に」を思い出させる
巨匠の神秘的な渾身芸術を堪能させていただきました。

演奏会終了後確認しましたが、気になっていた調律の狂いはほとんどなかったようです。 
えっへん! です

あのー やっぱり強がるふりしても嘘になりますね。 
思いっきり 緊張した 仕事だったことをここに正直に告白します。

疲れたよ、ほんまに!

―まー


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ちょっと四面楚歌

2007-03-06 | 愉快な仲間たち
 君は覚えているだろうか あの素晴らしい「靴べら」を
発明王ーまー親方考案の活気的家庭用品、「ヴァイオリン靴べら」のことですよ
ようやく専門家の反応を試すときが到来した。



弦楽器族を招待して〔手巻き寿司の正しい食べ方〕を勉強してもらった。

ちょっと「四面楚歌」 負けへんでー

大抵のドイツ一般家庭が食べるであろう魚の種類のドイツ語は覚えている。
イカとかマグロとか鮭とかエビとかヒラメとか……
でも「ハマチ」で引っかかった。 電子辞書で調べるも載ってない。
英語では出てきた「イエローテイル」黄色いしっぽ
今日、ネット辞書で調べてみた。Junger gelbschwanz 「若い黄色いしっぽ」
なんや英語直訳のそのままやん ほんまかいなぁ


 みんなの帰り際、例の「靴べら」を披露した。こわごわ…
いやー 笑ってもらえたね、 特にヴァイオリン制作者ティロには
「なかなか良いアイデアやん!」て 社交辞令で褒められていと嬉し。

次の日(日曜日)ちょっと神経を使う仕事があるし、
たまにはちょっと素敵な大人の僕を見せたいので、
かなり控えめに飲ませていただきました。 

ということで 次回、まじめなお話へ続くのであった。


―まー



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リフレッシュ!!

2007-03-01 | 笑い

暖かいまま春になったらしいで
私ら箱の中で冬眠してたからわかれへんけどなぁ
ぎりぎりに飛び出してきたけど、今年は忘れ物してへんか?
バッチリよ! 何しろ今年は工房のショーウインドウに立ってるん
やからしゃきっとしなね。あんたもしっかりしいや!
ドイツ人たちは僕らのことどない思てんねやろね?
出遅れたカーニバルの仮装くらいにしか思われてへんよ、顔は真っ白に塗ってあるし…  
せやけど日本の文化を紹介するええ機会やねんからちゃんと説明しなあかんよ。
―まー親方も「お雛さんの日は原住民に正しい手巻き寿司の食べ方教えるんや!」ってはりきってはるしな。
あの人の場合は色んな理由付けてワイン飲みたいだけやん。文化なんて高貴なこと考えてへんって。
次の日、えらい大変な仕事あんのに大丈夫かな? 時差ボケまだ抜けてないらしいで。
年中時差ボケしてはるみたいなもんやから心配せんでもええんちゃう?
えらい言われようやなぁ もうちょっと優しーく言われへんか?
あんた、なんやえらい親方に肩もつんやね。ちょっと顔が似てる言われたもんやから。
同類相哀れむてか?
はぁ? そう言うおまえもしゃべり方から物腰までおかみさんそっくりやないかい。
横に立ってるだけでイライラしてくるわ!
それはこっちの台詞や。その言葉そのまま熨斗(のし)付けて返したるわ。
何がおもろうてあんたと一緒に立ってなあかんねん。 
ぼちぼち立ち雛やめて座りたいって去年も言うたのにやっぱり交渉してくれへんかったやろ? 
ぼけーっと突っ立てるだけの役立たずのおっさんやで。ほんま、親方そっくりや!
一言ゆうたら二言三言、いちいち絡んでくるやっちゃなぁ。カルシウムたらんのんちゃうか?
たまに出てきたと思たらいっつもこの調子や。あんたとはもうやってられへんわ!
しっつれい しましたッ! 


一年のほとんどを箱の中で暮らす雛人形のストレスは相当なものです。
お宅のお雛様も年に一度ストレス解消させてあげてください。

定期的にストレス解消!
コンプータのクリーンアップ、ピアノの調律、お雛様の飾り付け、
みーんな同じレベルです!!

   ーまー


 最近少し興ざめ気味のエントリー内容
 でもとりあえず クリックしとこ!

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