4/29日に「星にささげる瞳」という自費出版の冊子が送られてきました。
竹内泰子先生は、この冊子の完成を見ることなく、平成22年7月12日に星界に旅立たれましたが、
生前に、「これまで書きとめたものを冊子にして欲しい」というご本人の希望があり、
山根秋郷氏を代表とする「竹内泰子記録会」が編纂を行い、この程冊子が完成しました。
この本はA4サイズで、546ページのしっかりとした製本になっています。
表紙には、山根氏が撮影された彩雲と村上氏が書いた泰子先生のイラスト画があり、
このイラスト画は、泰子先生が教壇に立たれている頃のお姿を想像させるものです。
この冊子の構成は次のようになっています。
■目次 Ⅰ部 泰子樹影
Ⅱ部 緑陰回廊
Ⅲ部 泰子覚書
第Ⅰ部では、この本の出版にあたり、29名の方々が泰子先生に対する思い出を寄せたページです。
著名な天文家をはじめ、姪の投稿もあります。
第Ⅱ部では、泰子先生の生きた足跡を、89ページに渡り、写真、絵画等で紹介しています。
そして、第Ⅲ部では、先生自ら残した原稿や兄寅太郎氏の自分史を交えて過去を振り返っています。
小学4年生の頃、兄から教えてもらった星の事が切っ掛けとなり、天文学への思いを熱くします。
ところが、その天文学の道は、階段を上るように順風満帆にはいかず、幾多の障害が泰子先生の前に立ちはだかります。
それはその時代背景だったり、父浅助の半ば傲慢ともいえる考えとの隔たりに悩む乙女心が詳細に記されています。
泰子先生が執筆された天文に関する記録は、変光星に留まらず、流星、掩蔽、彗星、人工衛星、日食と、その分野は広範囲に及びます。
天文学に関する随想録やエッセイ、日記等の原稿も、約200編ほど書き残しています。
後半にある年譜もきちんと整理してあるところをみても、泰子先生の几帳面な性格を知ることが出来ます。
この本は、基本的に泰子先生の自分史になりますが、読んでいくと単なる自分史ではなく、
天文学の発展や貢献、そして星への啓蒙活動を実践してきた先生であることが分かります。
また、戦前、戦中、戦後の厳しい時代を生き抜いた、数少ない女性アマチュア天文家としての意気込みも感じられます。
この本は、一人の女性アマチュア天文家が書き残した、観測記録書というか天文書といえなくもありません。
変光星に興味がある方、いや、天文学、星に関心がある方に、是非とも読んで頂きたい一冊です。
といっても、非売品(350部印刷)ですから、入手できるかどうか分かりませんが・・・・。
<追記>
竹内泰子先生とは、1988年の変光星観測者会議の席上で初めてお目にかかり、
それ以来のお付き合いをさせて頂いておりました。
変光星関連の会合があると必ずといってよいほど、お姿を拝見しました。
10年も前のことですが、先生とは電話で夜通し熱く星の事(変光星)を語ったことも何度かありました。
最後にお会いしたのは、三鷹にある国立天文台のイベント会場内でした。
偶然の事でしたが、先生の方から声をかけられ、その時はとても元気そうで安心しましたが、
観測の方はそろそろ引退されるような発言をされていました。
昨年、先生の訃報を知り、最後のお別れに参列したかったのですが、
平日ということもあり、仕事の調整もつかず欠席したことを今でも後悔しております。
先生は、ご自身の事はあまり話されなかったので、
この冊子を通して、先生の発見沢山見つけました。
先生の生きた証を知る上では大変貴重な冊子です。
この本を読むまでの私が知る先生は、
物腰の低い優しいおばちゃまとという印象でしたが、
いやいや、あまりにビッグな先生とお見受けし、大変恐縮している次第です。
先生の星への思い、情熱が伝わってくるこの冊子、我が家の家宝にしたいと思います。
最後に、この冊子の編纂の為に、ご尽力をされた山根様を含むスタッフの方々に敬意を表します。
有難うございました。
2011年05月05日