223312 迫られる「アメリカに負けた日本」からの脱却①~「核密約」の背景にある不明朗な政治の実態
猛獣王S ( 30代 営業 ) 10/01/03 AM01
『2010年の年頭に思う 迫られる「アメリカに負けた日本」からの脱却 桂敬一(元東京大学教授・日本ジャーナリスト会議会員)』(マスコミ9条の会ブログ)リンクより転載します。
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~前略~
71年の沖縄返還協定調印(返還実施は72年)に2年近くも先立つ1969年、佐藤栄作首相とニクソン米大統領は、ワシントンで日米首脳会談に臨み、沖縄の施政権返還後の米軍基地の運用に関する協議を行った。非核3原則の政策をうち出している佐藤首相にとって、沖縄返還は「核抜き本土並み」でなければならず、アメリカから沖縄の核撤去の約束を得る必要があった。アメリカとしては、返還後も沖縄の基地は従前どおり使いたいとする、軍の意向を押し通す必要があった。実際、アメリカは続行中のベトナム戦争で、沖縄の基地を補給・訓練の拠点としてフルに稼働し、さらに北ベトナムへの空爆に向かうB52を、沖縄から直接出撃させていた。このような状況の下、佐藤首相の密使、若泉敬京都産業大教授とキッシンジャー米大統領補佐官とが秘密裏に接触、表向きの「核抜き本土並み」を米国側が承知する一方、内密を条件に、米国側から見た「重大な緊急事態」が発生したときは、事前協議を経て「核兵器の沖縄への再持ち込みと沖縄通過」を日本が認める、とする合意を、あらかじめまとめていた。こうしてお膳立てされてあった英文「合意議事録」に両首脳が署名、各通を両者が持ち帰ったのがワシントン会談の顛末だったが、佐藤首相の受け取った文書は、彼の死んだ75年、佐藤家で発見され、その後は、彼の次男、佐藤信二元衆院議員(元通産大臣)が30年以上も手元に保管してきた―その間のことは官邸も外務省もあずかり知らない、というのが読売スクープのあらすじだ。
◆「核密約」の背景にある不明朗な政治の実態
おかしな話だ。私はこのニュースが明らかにした事実と、これを取り扱うメディアの報道・論評の姿勢に、腹が立った。トップ・シークレット(極秘)とされたこの「密約」=「合意議事録」は、そこに記載された約定によれば、米国側はホワイトハウスに、日本側は首相官邸に、保管されることとなっている。文書には職名を併記した両氏のフルネームの署名がある。どうみてもこれは、後代にわたって両国政府を拘束する公文書だ。おそらく米国側には約定どおり、ホワイトハウスに保管されているのだろう。これに対してなぜ日本では官邸に保管されておらず、佐藤首相の私物扱いにされてきたのか。外交上の機密に関し、その内容が関係機関内の責任者らに知悉されていても、その根拠となる文書の公開は一定期間拒まれ、秘密が保たれるということは、制度的にはあり得るだろう。だが、文書が私文書とされ、公的イシューが私事に変えられていたら、当該事案をめぐって生じる相手国に対す外交責任も、国内的な統治行為も、レジティマシー(公的な制度的正統性)を欠くものとなってしまうではないか。官邸も外務省も、よくもまあこんなことを放って置いたものだと、呆れるばかりだ。おまけに佐藤首相は、「非核3原則」を貫いて沖縄返還をかち取ったことを評価され、ノーベル平和賞をもらったが、これでは授賞委員会をペテンにかけたことになりはしないかと、ひとごとながら心配だ。
沖縄返還「密約」情報開示請求裁判に関わってつくづく思うことは、法廷に出てくる外務省・大蔵省が関係する問題「密約」文書のほとんどすべてが、アメリカの国立公文書館や軍の関係機関から、アメリカの情報公開法に基づいて入手されたものであるのに対して、日本政府からはなにも出てこない情けなさだ。対抗的に保有しているべきそれらの文書について、両省は「不所持」「不存在」を繰り返すだけなのだ。ところが今回、佐藤「密約」の場合は、アメリカ側保管文書としては公開がないのに、日本側から、政府は関係ないぞといわんばかりのかたちで、日米両首脳の「合意議事録」がすっぱ抜かれたのだ。どう考えてもこれはおかしい。アメリカから出てこないのには、情報公開制度上のわけがあり、最高機密扱いでホワイトハウスに保管されたままという可能性がある。あるいは国立公文書館に移管されていても、情報公開指定の対象外に置かれたままということもある。もしそうだとすれば、佐藤家の混乱から、アメリカ側が最高機密としたままでいる「密約」文書が暴露される事態となったのは、とりもなおさず日本政府の失態ということになり、公然か非公然かは問わず、日米両国間の外交上のトラブルとならざるを得ない。ところが、そういう動きに発展する気配がないのにも、首をかしげたくなる。岡田克也外相は、「密約」の公表はよかったなどと、のどかなことをいっているし、民主党の対米外交上の失態だったら、自民党が鬼の首でも取ったみたいに大騒ぎして非難するのに、そんなことも起きない。アメリカも前もって承知していたことなのではないか、とする疑問が浮かぶ。
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続く
猛獣王S ( 30代 営業 ) 10/01/03 AM01
『2010年の年頭に思う 迫られる「アメリカに負けた日本」からの脱却 桂敬一(元東京大学教授・日本ジャーナリスト会議会員)』(マスコミ9条の会ブログ)リンクより転載します。
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~前略~
71年の沖縄返還協定調印(返還実施は72年)に2年近くも先立つ1969年、佐藤栄作首相とニクソン米大統領は、ワシントンで日米首脳会談に臨み、沖縄の施政権返還後の米軍基地の運用に関する協議を行った。非核3原則の政策をうち出している佐藤首相にとって、沖縄返還は「核抜き本土並み」でなければならず、アメリカから沖縄の核撤去の約束を得る必要があった。アメリカとしては、返還後も沖縄の基地は従前どおり使いたいとする、軍の意向を押し通す必要があった。実際、アメリカは続行中のベトナム戦争で、沖縄の基地を補給・訓練の拠点としてフルに稼働し、さらに北ベトナムへの空爆に向かうB52を、沖縄から直接出撃させていた。このような状況の下、佐藤首相の密使、若泉敬京都産業大教授とキッシンジャー米大統領補佐官とが秘密裏に接触、表向きの「核抜き本土並み」を米国側が承知する一方、内密を条件に、米国側から見た「重大な緊急事態」が発生したときは、事前協議を経て「核兵器の沖縄への再持ち込みと沖縄通過」を日本が認める、とする合意を、あらかじめまとめていた。こうしてお膳立てされてあった英文「合意議事録」に両首脳が署名、各通を両者が持ち帰ったのがワシントン会談の顛末だったが、佐藤首相の受け取った文書は、彼の死んだ75年、佐藤家で発見され、その後は、彼の次男、佐藤信二元衆院議員(元通産大臣)が30年以上も手元に保管してきた―その間のことは官邸も外務省もあずかり知らない、というのが読売スクープのあらすじだ。
◆「核密約」の背景にある不明朗な政治の実態
おかしな話だ。私はこのニュースが明らかにした事実と、これを取り扱うメディアの報道・論評の姿勢に、腹が立った。トップ・シークレット(極秘)とされたこの「密約」=「合意議事録」は、そこに記載された約定によれば、米国側はホワイトハウスに、日本側は首相官邸に、保管されることとなっている。文書には職名を併記した両氏のフルネームの署名がある。どうみてもこれは、後代にわたって両国政府を拘束する公文書だ。おそらく米国側には約定どおり、ホワイトハウスに保管されているのだろう。これに対してなぜ日本では官邸に保管されておらず、佐藤首相の私物扱いにされてきたのか。外交上の機密に関し、その内容が関係機関内の責任者らに知悉されていても、その根拠となる文書の公開は一定期間拒まれ、秘密が保たれるということは、制度的にはあり得るだろう。だが、文書が私文書とされ、公的イシューが私事に変えられていたら、当該事案をめぐって生じる相手国に対す外交責任も、国内的な統治行為も、レジティマシー(公的な制度的正統性)を欠くものとなってしまうではないか。官邸も外務省も、よくもまあこんなことを放って置いたものだと、呆れるばかりだ。おまけに佐藤首相は、「非核3原則」を貫いて沖縄返還をかち取ったことを評価され、ノーベル平和賞をもらったが、これでは授賞委員会をペテンにかけたことになりはしないかと、ひとごとながら心配だ。
沖縄返還「密約」情報開示請求裁判に関わってつくづく思うことは、法廷に出てくる外務省・大蔵省が関係する問題「密約」文書のほとんどすべてが、アメリカの国立公文書館や軍の関係機関から、アメリカの情報公開法に基づいて入手されたものであるのに対して、日本政府からはなにも出てこない情けなさだ。対抗的に保有しているべきそれらの文書について、両省は「不所持」「不存在」を繰り返すだけなのだ。ところが今回、佐藤「密約」の場合は、アメリカ側保管文書としては公開がないのに、日本側から、政府は関係ないぞといわんばかりのかたちで、日米両首脳の「合意議事録」がすっぱ抜かれたのだ。どう考えてもこれはおかしい。アメリカから出てこないのには、情報公開制度上のわけがあり、最高機密扱いでホワイトハウスに保管されたままという可能性がある。あるいは国立公文書館に移管されていても、情報公開指定の対象外に置かれたままということもある。もしそうだとすれば、佐藤家の混乱から、アメリカ側が最高機密としたままでいる「密約」文書が暴露される事態となったのは、とりもなおさず日本政府の失態ということになり、公然か非公然かは問わず、日米両国間の外交上のトラブルとならざるを得ない。ところが、そういう動きに発展する気配がないのにも、首をかしげたくなる。岡田克也外相は、「密約」の公表はよかったなどと、のどかなことをいっているし、民主党の対米外交上の失態だったら、自民党が鬼の首でも取ったみたいに大騒ぎして非難するのに、そんなことも起きない。アメリカも前もって承知していたことなのではないか、とする疑問が浮かぶ。
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続く
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