160162 円高は“悪”か~為替は株価、安いより高い方がいい③
猛獣王S ( 30代 東京 営業 ) 07/08/31 PM10
160161の続きです。
『円高は“悪”か~為替は株価、安いより高い方がいい』③リンクより転載します。
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過去を振り返ってみても、先進国の景気がよかったのは、実は“通貨高”の時であることが多かった。つまり、国内に資金が流入した時代である。
例えば、米国で最も景気がよかった1990年代半ば、財務長官だったロバート・ルービン氏は、それまでのドル安政策を180度転換し、ドル高政策を進めた。国境を越えてマネーが飛び回るグローバル経済という現実を見て、ドル高政策で世界中のマネーを集めたのである。そのマネーで未曾有の株高を誘導し、国内経済や海外新興市場へのマネー分配の中心地として米国経済は成長した。彼はこの功績で史上最高の財務長官と呼ばれている。
ルービン氏が、ドル高政策のヒントを得たのは、80年代の円高による日本の好景気ではないかと思われる。プラザ合意後の円高期は、日本もかつてない株高になり、企業に新たな設備投資を可能にする活力を与えた。現在では、欧州もが明らかに「ユーロ高政策」を進め、資金が流入するユーロ高を歓迎し、好景気を享受しているのではないか。
ユーロ高でも、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国への輸出は急増している。中心となるドイツ企業は7年ぶりに過去最高の業績を更新した。ユーロのベースとなったドイツマルクは常にマルク高に誘導していたから、そのDNAが残っているのかもしれない。
確かにドル高政策も円高政策もバブルを引き起こした側面があるから、肯定的にとらえられない部分もある。とはいえ、バブル経済とその崩壊は為替レートだけが原因ではないし、むしろ何事もやりすぎはよくないという戒めだろう。人体に例えれば、通貨は血液だ。血液が流出して健康を害し、企業の経済活動が不活性化するよりは、十分な血液を補充して活性化した状態の方が景気には好影響を与えるはずである。
■今こそ、円高政策を打ち出す時
既に多くの方が指摘しているように、ここ数年の円安は日本の低金利が大きな原因となっている。低金利で資金を調達し、外貨で運用する「円借り(円キャリー)取引」によって、円安が進んだ。金利差はドルで約4%、ユーロで約3%あるので、この運用益を狙って日本から資金が流出していく。
それでは、日本が金利を引き上げて円高に誘導すればいいかといえばそう簡単な話ではない。現段階での金利の引き上げは、国内の景気や株価に好影響を与えそうもないからである。消費者物価指数は、この数カ月ほぼ横ばい、あるいは下がっており、物価を理由に金利を引き上げることは困難だろう。
GDP(国内総生産)は成長しているが、その構成要素の6割以上を占める個人消費はそれほど伸びていない。先の参議院選挙で自民党が大敗したことも金利引き上げにはマイナスに作用しそうだ。そもそも、先進国では為替レートのためだけに、金利を使うことはなくなっている。
こうしたマクロ政策での円高誘導が困難だとすれば、ミクロな視点での政策で企業活動などを活性化し、「円=日本」を買ってもらえる環境を作るしかない。日本の製造業が強い理由は、早くから海外に進出して荒波にもまれていたからだということがよく言われる。だが、今の円安はそれとは逆行し、結果的に安売りであるとともに、企業に対する補助金となってしまっていないか。
補助金による対症療法が必ずしも好結果をもたらさないことは、今や言うまでもないだろう。円安という価格戦略よりも、むしろ価値戦略を重視させる方向性を根づかせることが大事である。
こうした政策に加えて、金融政策を担当する当局が通貨に対する議論を続け、自国が高く評価されるよう対外的に方針をきちんと示すことも大切なことだ。つまり、低く評価される円安よりも、高く評価される円高の方がよいと。そのためには、時に政府が円高に積極的に姿勢を見せることも必要だろう。
今年8月にIMF(国際通貨基金)が「円相場が過小評価されている」という評価を出したように、「円(=日本)は本来よりも安く評価されている」という見方が世界に広がっている。米国経済への不安から円が買われた今回の「サブプライムローン問題」は資金の逆流という面が強いかもしれないが、実は日本への評価を象徴しているのではないだろうか。今こそ、勇気を持って円の評価を高める姿勢を見せることが日本経済を活性化させるカギを握っている。
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猛獣王S ( 30代 東京 営業 ) 07/08/31 PM10
160161の続きです。
『円高は“悪”か~為替は株価、安いより高い方がいい』③リンクより転載します。
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過去を振り返ってみても、先進国の景気がよかったのは、実は“通貨高”の時であることが多かった。つまり、国内に資金が流入した時代である。
例えば、米国で最も景気がよかった1990年代半ば、財務長官だったロバート・ルービン氏は、それまでのドル安政策を180度転換し、ドル高政策を進めた。国境を越えてマネーが飛び回るグローバル経済という現実を見て、ドル高政策で世界中のマネーを集めたのである。そのマネーで未曾有の株高を誘導し、国内経済や海外新興市場へのマネー分配の中心地として米国経済は成長した。彼はこの功績で史上最高の財務長官と呼ばれている。
ルービン氏が、ドル高政策のヒントを得たのは、80年代の円高による日本の好景気ではないかと思われる。プラザ合意後の円高期は、日本もかつてない株高になり、企業に新たな設備投資を可能にする活力を与えた。現在では、欧州もが明らかに「ユーロ高政策」を進め、資金が流入するユーロ高を歓迎し、好景気を享受しているのではないか。
ユーロ高でも、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国への輸出は急増している。中心となるドイツ企業は7年ぶりに過去最高の業績を更新した。ユーロのベースとなったドイツマルクは常にマルク高に誘導していたから、そのDNAが残っているのかもしれない。
確かにドル高政策も円高政策もバブルを引き起こした側面があるから、肯定的にとらえられない部分もある。とはいえ、バブル経済とその崩壊は為替レートだけが原因ではないし、むしろ何事もやりすぎはよくないという戒めだろう。人体に例えれば、通貨は血液だ。血液が流出して健康を害し、企業の経済活動が不活性化するよりは、十分な血液を補充して活性化した状態の方が景気には好影響を与えるはずである。
■今こそ、円高政策を打ち出す時
既に多くの方が指摘しているように、ここ数年の円安は日本の低金利が大きな原因となっている。低金利で資金を調達し、外貨で運用する「円借り(円キャリー)取引」によって、円安が進んだ。金利差はドルで約4%、ユーロで約3%あるので、この運用益を狙って日本から資金が流出していく。
それでは、日本が金利を引き上げて円高に誘導すればいいかといえばそう簡単な話ではない。現段階での金利の引き上げは、国内の景気や株価に好影響を与えそうもないからである。消費者物価指数は、この数カ月ほぼ横ばい、あるいは下がっており、物価を理由に金利を引き上げることは困難だろう。
GDP(国内総生産)は成長しているが、その構成要素の6割以上を占める個人消費はそれほど伸びていない。先の参議院選挙で自民党が大敗したことも金利引き上げにはマイナスに作用しそうだ。そもそも、先進国では為替レートのためだけに、金利を使うことはなくなっている。
こうしたマクロ政策での円高誘導が困難だとすれば、ミクロな視点での政策で企業活動などを活性化し、「円=日本」を買ってもらえる環境を作るしかない。日本の製造業が強い理由は、早くから海外に進出して荒波にもまれていたからだということがよく言われる。だが、今の円安はそれとは逆行し、結果的に安売りであるとともに、企業に対する補助金となってしまっていないか。
補助金による対症療法が必ずしも好結果をもたらさないことは、今や言うまでもないだろう。円安という価格戦略よりも、むしろ価値戦略を重視させる方向性を根づかせることが大事である。
こうした政策に加えて、金融政策を担当する当局が通貨に対する議論を続け、自国が高く評価されるよう対外的に方針をきちんと示すことも大切なことだ。つまり、低く評価される円安よりも、高く評価される円高の方がよいと。そのためには、時に政府が円高に積極的に姿勢を見せることも必要だろう。
今年8月にIMF(国際通貨基金)が「円相場が過小評価されている」という評価を出したように、「円(=日本)は本来よりも安く評価されている」という見方が世界に広がっている。米国経済への不安から円が買われた今回の「サブプライムローン問題」は資金の逆流という面が強いかもしれないが、実は日本への評価を象徴しているのではないだろうか。今こそ、勇気を持って円の評価を高める姿勢を見せることが日本経済を活性化させるカギを握っている。
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