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撃退された痴漢

2010年05月29日 | おかしな人々
 夜10時過ぎだったと思う。新宿駅で大勢の人が降車し、これまでの混雑振りが嘘のように車内まばらになった総武線は、新宿駅でなぜか長い停車時間を取っていた。中央線の追い越し待ちだったと思われる。
 開いたドアの反対側ドアに一番近い端のシートでうとうとしていると、突然、「てめー、この痴漢やろー」という怒声が。
 びっくりして目を覚ますと、いかにもOL風ファッションの女性が、ふどこらそんな声出してるんだと言わんばかりの大声で、「いい加減にしろ」とか、「この痴漢やろー」と叫びながら、20代のTシャツに淡い色のパンツ姿の、薄汚れた雰囲気の若い男を、折り畳み傘でバシバシぶん殴っている。
 男、ひたすら寝た振り。こんだけ殴られて寝られる訳ないのに。そんな寝た振り男を一頻り(傘で)殴った女性は、車内を後にした…のだが、まだ怒りが収まらないのか、すぐに車内に戻って、また怒鳴りながら殴り出した。
 さっきまで列車の揺れでうとうとしていた自分の目の前で繰り広げられる光景は、実際の物とは思えぬくらいに、まだ頭の中に霞が掛かっていたのだが、次第に頭が冴えてくると、どうも痴漢をされていた女性が逆襲しているのだな。と誰でも分かる事が鮮明になってきた。
 そんなOL風のお姉ちゃんが1人で頑張っているのに、ほかの乗客はみな知らんぷりだ。もちろん、若い男性も何人か居た。
 これが日本なんだな。とか思っていると、ようやく女性が去り、痴漢を乗せた我が総武線はようやく新宿駅を後に走り出した。
 そうなると気になるのが、この痴漢男がいつ、どこで、起きるのかということだ。ほかの乗客は先ほどの騒動をみんな知っているのだから、そう易々とは起きられまい。終点まで行っちゃうのか。
 この時点で、頭の中はすっかり始動開始。もう、痴漢男が気になって仕方ない。
 すると、大久保を過ぎた辺りでいきなり目を覚ました(寝てなかったくせに)男は、おもむろに立ち上がり、他の車両へと去って行った。
 そういうことか。
 それから数日後、今度は出勤途中の満員の身動き出来ない総武線車内で、その時の痴漢男を発見。白っぽいシャツにパンツ姿だったが全体的に薄汚れている。しかも、なぜか、片方の鼻の下に1筋の赤いボールペンで書かれた跡が…。鼻血を意味しているのか? それは、自作なのか?
 以前の梅干し婆の「チューしちゃおう」の時もそうだったが、人って難問に遭遇すると寝た振りをすることを知った。
 

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