キモノを好きになったのは‥思い返してみれば幼い頃、お正月にキモノを着せてもらっていたせいかな?と思う。綺麗な色のひらひらとした晴れ着を着せてもらって、いつもよりちやほやしてもらって気分良かったのを覚えている。
そのキモノを買ってくれたのは、多分母方祖母。とてもキモノが好きな人だった。遠くに住んでいたのでお盆かお正月にしか会えなかったけれど、普通にキモノを着てくつろいでいた姿が心に残っている。
祖母はお嬢さん育ちの人で、娘の頃はさんざん着道楽したらしい。けれども戦争で実家が没落し、結婚してからは2男4女を抱えて、食べるものにもこと欠く暮らしを強いられた。賢くやりくりするような気働きはないひとだったから、だいぶ苦労しただろう。でも、そんな中でもキモノ好きの心は消えず、こっそり呉服屋さんを出入りさせていたそうだ。
祖母の昼夜帯、海老柄。これは多分若い頃の?
私の母は長女だったので、そんな祖母を批判的に見て育った。「ろくなもの食べずにキモノ買うなんて」なので母はむしろキモノ嫌い。「キモノなんて、お金がかかってめんどくさいばっかり」とよく言っていた。
そのためか、4つ身の晴れ着が着られなくなってからは、お正月にキモノを着ることもなくなった。ねだるのも気が引けたし‥少女マンガなんかで、嫌がる女の子に無理やり晴れ着を着せて喜ぶ母親の図、なんてのがあると羨ましかったなあ。「どうせ着ないでしょ」ということで、成人式や卒業式は貸衣装だった。
・・まぁ、着られたからいいけど。
そういうわけで、キモノが好きだなあと思いつつ、何となく縁がなく過ごしてきたのだった。浴衣くらいは本を見ながら自分で着方を覚えたけれど、普通のキモノはなんだか敷居が高かった。
でも、いつかキモノをもっと着たい、自分で着られるようになりたいという思いはずーーーっと持ち続けていたのだった。
その思いをかなえるべく動き始めたのはつい2年ちょっと前。近所の公民館で開催されていた着付け教室に通いはじめてからだった。
(この項続く)