神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

京都・東福寺 方丈庭園。

2006年12月27日 | ◇京都府 -洛東


慧日山東福寺 方丈庭園

(えにちさん とうふくじ)
京都市東山区本町15丁目778

方丈庭園


通天橋へ向かう人の列を離れて方丈庭園へ。ゆったりとした時間が流れます。




 禅宗の寺院には龍安寺西芳寺の庭園など、世界的にも有名な名園が数多くありますが、東福寺のように方丈の4方すべてに庭園をめぐらせたものは他に例がなく、日本の伝統的文化と西洋の抽象画にも通ずる手法を組み合わせた「モダン」な造りとなっています。この非常に個性的な庭園「八相の庭」は、1939(昭和14)年に重森三玲(しげもり みれい)氏が作庭したものです。当時の東福寺は、火災で被害を受けた堂塔の再建に全力を傾注しており、とても庭園のことまで再建する資金がなく、作庭家である重森三玲氏は「永代供養のつもり」でボランティアで庭園再建の仕事を引き受けたそうです。

 1896(明治29)年、岡山県吉川村の財産家の家に生まれた重森三玲氏は、画家を目指して上京し日本美術学校に入学しますが、関東大震災によって帰郷。再度上京を決意しての道の途中、後学のためにと立ち寄った京都で「本物の日本文化」に触れ、大きな衝撃を受けます。さっそく1929(昭和4)年に京都へ移り住むと、翌年には勅使河原蒼風小原豊雲らとともに「新興いけばな宣言」を発表し、前衛的な生け花を提唱して生け花界に新しい風を吹き込みます。茶の湯も日々実践し、『茶道全集』の編集にも中心的な役割を果たしました。

 そんな重森氏が庭園と深い関わりを持つきっかけは、1932(昭和7)年に日本を襲った室戸台風です。暴風雨によって京都周辺の名園は壊滅的な被害を受け、惨状を目の当たりにした重森氏は、「庭園に関する基礎的な記録がないままでは、ふたたびこのような事態が起きた場合に復元する術がない」と自費を投じて全国の庭園の科学的な実測調査を開始し、約500もの名園の実測調査の結果を全26巻からなる『日本庭園史図鑑』にまとめあげます。

 ここで重森氏は、江戸時代中期を境に日本庭園の芸術性が落ちてしまったという結論に達します。作庭の教本が出回ったため人々の創造性が欠如したからだと考えられていますが、そんな硬直化した日本庭園の世界に危機感を抱き、創造的な美を表現しようという衝動が、重森氏を作庭の道へと進ませることになります。その結果誕生した伝統美とモダニズムの結晶が、ここ東福寺方丈庭園です。




「北斗の庭」東庭。石柱と白砂で表された小宇宙です。



 方丈を入ってすぐ右手に見えるのが方丈東庭です。この庭には白砂が敷かれ、7本の石柱が立てられています。この石柱は、もともと東司(禅寺のトイレ)で使われていた柱石の余材をリユースしたもので、北斗七星の形に組まれています。白砂の地紋は雲を表しており、小宇宙を表現した枯山水の庭となっています。




方丈南庭。この角度から撮ったものはあまりないようです。



 入って左側に広がるのが210坪の広大なエリアに大胆な石組みを施した枯山水方丈南庭です。巨石を配した石組みは、東から蓬莱方丈瀛洲(えいじゅう)壺梁(こうりょう)という神泉蓬莱思想における4島を表し、荒海をイメージした砂紋を施した白砂の西方にはなだらかな築山が5つ。これは、東福寺も列される京都五山を表したものだといわれています。




西庭。さつきの色鮮やかな「井田市松」の庭。



 四角に刈り込まれたサツキに目を奪われる井田市松の西庭。ウマスギゴケの緑と白砂のコントラストが鮮やかで、伝統的な枯山水の庭に目を慣らされた直後のこの西庭との出会いは、衝撃的ですらあります。




方丈北庭。通天橋を臨むことができます。



 方丈の北側にも市松模様の庭が広がります。ここでは、もともと南庭にある明治天皇の皇后・昭憲皇太后から賜ったという御下賜門の敷石をリユースしています。一面に広がる苔の緑に正方形の白い敷石が並ぶデザインは絶妙で、紅葉の季節はモミジの赤とあいまって、枯山水の南庭とはうってかわって色彩溢れる変化の多い庭となります。



アクセス
・JR奈良線「東福寺駅」下車、南東へ徒歩7分
・京阪電車「東福寺駅」下車、南東へ徒歩7分
 東福寺地図 Copyright (C) 2000-2006 ZENRIN DataCom CO.,LTD. All Rights Reserved.
 
拝観料
・通天橋・開山堂 400円(小中学生 300円)
・方丈八相庭園  400円(小中学生 300円)

拝観時間
・9:00~16:00(11月のみ8:30~16:30)

公式サイト
  臨済宗大本山・東福寺ホームページ




新版 古寺巡礼京都〈3〉東福寺
福島 慶道,檀 ふみ
淡交社


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。