神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

大阪・堂島薬師堂。

2011年09月27日 | ◆大阪府


堂島薬師堂

(どうじまやくしどう)
大阪市北区堂島1-6-20




「堂島アバンザ」の敷地に祀られている堂島薬師堂。非常に斬新なデザインの御堂です。



〔宗派〕
法相宗

〔御本尊〕
薬師如来像



 JR大阪駅の南側に位置し、いわゆる「キタ」を代表する高級飲食店街として知られる「北新地」。高級クラブや料亭などが立ち並び、煌びやかなネオンに包まれながらも、どこか凛とした風格が漂う日本有数の歓楽街には、連日数多くの客が集まり、深夜までその喧騒が絶える事はありません。その西に、99.8mの高さを誇る地上23階、地下2階のガラス張りの「堂島アバンザ」と名付けられた高層ビルが聳え立っています。
 1999(平成11)年に毎日新聞大阪本社の跡地に建設された、この「堂島アバンザ」の敷地内に、ひときわ目を惹くミラーガラス造りの球体建築物が建てられています。この建物の名は「堂島薬師堂」。一見したところ何の建物か分からないほど個性的な外観をしていますが、実は一時期には1日に数十万人もの参拝者で賑わいを見せていたこともある、非常に古い歴史を持つ御堂なのです。





手水舎は伝統的なデザイン(左)。御堂の前にある「合掌」をイメージした燭台(右)。



 その個性的な外観とは裏腹に、堂島薬師堂の起源はとても古く、推古朝期に記された資料には、593(推古天皇元)年に聖徳太子四天王寺を創建した際に建立されたという記録が残されていますので、実に1400年以上の歴史を持つ古刹といえます。この経緯については1675(延宝3)年に一無軒道冶が著した大阪の名所案内書である「芦分船」にも詳細に記されており、「四天王寺を創建する際に建築用の資材を積んだ船が暴風雨のために難破したため、船が流れ着いた島にて御堂を建立した」という話が書かれています。
 堂島薬師堂が建てられた場所は堂島川と曽根崎川が流れる中州の島で、周囲を航行する船から島に建てられた御堂がよく見えた事から、この地を「薬師堂の建つ島」すなわち「堂島」と呼ぶようになったといわれています。





御堂の左手には白龍弁才天、右には豊田稲荷が鎮座(左)。正面に架けられた扁額(右)。



 1685(貞享2)年に、豪商だった河村瑞賢によって曽根崎川の改修が行われて「新地」と呼ばれる干拓地が開かれ、年間100万石から150万石にも及ぶ年貢米が集まる巨大米市場として発展した堂島には多くの富と人が集まり、その賑わいとともに堂島薬師堂も繁栄していきました。御堂の中には室町時代の作といわれる薬師如来像や、その薬師如来像よりも昔に作られたといわれる弘法大師像などの仏像が安置されており、毎月21日の弘法大師の縁日に所縁の寺院を巡る「大師巡り」の一つとして1893(明治26)年より行われた「大阪太師詣り」では第1番霊場とされ、1日で数十万人規模の人々が参拝するなど非常な賑わいを見せていました。
 1911(明治44)年に芝居小屋である「堂島座」が建てられる事となり、堂島薬師堂はすぐ近くに移転されました。この時、堂島薬師堂の移転に関わった方々が原因不明の病で次々に亡くなったため、「お薬師さんの祟り」だと怖れられた事もあったそうです。その後、1922(大正11)年には堂島座のあった土地に毎日新聞社が移転してきましたが、その毎日新聞社も梅田に移転し、1999(平成11)年になって「堂島アバンザ」という名の商業ビルが建てられた際に堂島薬師堂も旧来の場所である現在地に戻され、近代的なモダンなデザインの御堂が建てられました。





御堂の中には薬師如来像、弘法大師像、地蔵菩薩像などの仏像が安置されています。



 堂島薬師堂では、毎年2月3日の節分の日に「節分お水汲み祭り」が開催されています。このお祭りは、曽根崎新地で伝統的に行われていた「節分祭」と、関西経済同友会や北新地商店街の皆さんが「水都・大阪」の活性化を願って2004(平成16)年から開催している「お水汲み祭り」が一体化されたもので、本山である奈良・薬師寺の井戸から汲まれた「御香水」と堂島薬師堂の上水を混ぜ合わせ、それを薬師寺の僧侶が参拝者の竹筒に注いで無病息災、商売繁盛などを祈願するという「お水汲み」が行われて祭礼がスタートします。
 当日は薬師寺の僧侶や福男、そして6体の鬼が北新地を練り歩く「鬼追い」が行われたり、夜には「護摩焚き」や北新地の芸妓さんたちによる「奉納舞」、堂島薬師堂に祀られている白龍弁才天による「龍の巡行」などが行われて大いに賑わいます。皆さんも、普段とは異なる雰囲気に包まれる北新地を訪れてみてはいかがでしょうか。





御堂に隣接する池にある「水かけ弁才天」(左)。右は薬師堂の功労者追悼の記念碑。


アクセス
・JR東海道本線「大阪駅」下車、南へ徒歩7分。
堂島地蔵堂地図 Copyright:(C) 2011 NTT Resonant Inc. All Rights Reserved.
 

拝観料
・境内無料

拝観時間
・常時開放

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