敏馬神社
(みぬめじんじゃ)
神戸市灘区岩屋中町4-1-8
国道2号線沿いに鎮座する敏馬神社。「みぬめじんじゃ」と読みます。
〔御祭神〕
素盞鳴命
(すさのおのみこと)
天照大御神
(あまてらすおおみかみ)
熊野座大神
(くまのいますおおかみ)
国道2号線沿い、HAT神戸への入り口になっている「岩屋中町4」の交差点そばに鎮座する神社、それが敏馬神社です。「みるめ」と呼ぶ人も多いのですが、正式には「みぬめ」神社といいます。漢字が伝わる前からあった「みぬめ」という呼び名に「敏馬」という漢字を当てたもので、とても古くからある名前です。もともとの祭神である「彌都波能売神(みずはのめのかみ=水の神)」の名前がその由来となっているそうです。当初は「敏馬」ではなく「美奴賣」や「見宿女」、「三犬女」や「汶賣」などの文字が当てられていました。
敏馬神社の境内(左)。社殿への石段脇には寛政年間寄進の灯篭が立っています(右)。
昭和初期までは、敏馬神社の境内の南側には「敏馬の浦」と呼ばれる海が広がり、「敏馬の泊」という港がありました。「灘・住吉神社」のところでも書きましたが、この港は中国大陸や朝鮮半島に向けて都を出港した使節団が最初に停泊する港でした。当時は月明かりくらいしか闇を照らす光がなかったために夜間の航海はとてもリスクが高く、朝一番に難波の津を出発した船団は日没前にこの敏馬の泊にたどり着いて一泊するという日程を取っていたようです。また、新羅などの使節が都を訪れた際にも一旦この敏馬の泊に寄航しており、生田神社で醸造した酒を飲んでの宴が開かれるなど、海外使節団が畿内に入る前の禊の場所としての役割も果たしていました。このように、敏馬の泊は、兵庫の大輪田の泊が出来るまでは、瀬戸内の海上交通の要衝として栄えていたようです。そんな敏馬の浦も、1931(昭和6)年頃より、阪神電車のトンネル工事で出た残土を利用して埋め立てが行われてしまったために、往時の面影はすっかり姿を消してしまいました。
左は万葉歌人・柿本人麻呂の歌碑。右奥には稲荷神社も鎮座しています。
社務所前に立つ数多くの記念碑(左)。向き合うように閼伽井があります(右)。
社殿が建っている高台は「敏馬の崎」と呼ばれ、西風をシャットアウトする役目を果たしていました。往古の「敏馬の泊」はこの東側の入り江にあったといわれています。現在、南側は広い範囲が埋め立てられ、HAT神戸などの新興住宅街や摩耶埠頭などが拡がっていますが、それでもここからの眺めはなかなかのものがあります。そんな美しい風景に惹かれて、奈良時代から江戸時代、さらには現代にかけて多くの歌人・俳人がこの地を訪れ、和歌や俳句を残しています。とくに江戸期には、酒造業や廻船業を営む豪商たちの庇護を得ようと多くの俳人が灘の地を訪れました。
緑に囲まれた美しい高台に鎮座する社殿。1951年に再建されました。
敏馬神社も神功皇后ゆかりの神社のひとつです。神功皇后が三韓征伐に赴くにあたり、神崎松原の地(今の神崎川)にて従軍する神々を集めたところ、能勢の美奴売山(今の三草山)の神が駆けつけて「我が山の杉の木で舟を造って遠征に向かえば良い結果が得られるであろう」と告げました。その言葉に従ったところ出兵は大成功、見事に勝利を収めて凱旋を果たします。ところが、その帰還の途中、敏馬の浦で船が進まなくなったために占いを立てると、これは「神の御心」による立ち往生であるとの結果が出ました、そのためこの地に美奴売の神をお祀りし、舟も神社に献上したといわれています。東灘の本住吉神社や垂水の海神社などの御由緒にも荒海の中で船が立ち往生した話が見られますが、やはり当時の航海が天候や汐の流れに左右されて相当厳しいものであったという事が推し量れます。
神功皇后に関する言い伝えの真偽はともかく、平安時代に神社の格式を定めた「延喜式」にも生田神社・長田神社と並んでその名が記されており、敏馬神社が神戸市内でも有数の歴史を抱える神社であることは間違いありません。1873(明治6)年8月に村社に列せられた敏馬神社は、1930(昭和5)年9月には県社に昇格するなど地元の人々の崇敬を集めていましたが、残念なことに1945(昭和20)年6月5日の神戸大空襲によって境内は被災、社殿は焼失の憂き目に遭います。しかしながら、氏子の皆さんの尽力によって無事1951(昭和27)年に社殿の再建が為され、現在に至っています。
左は「奥の宮」と「水神社」。右は神功皇后をお祀りする「后の宮」と「松尾神社」。
社殿東側に立つ田辺福麻呂の歌碑(左)。境内のすぐ南は国道2号線が走っています(右)。
アクセス
・JR神戸線「灘駅」下車、南へ徒歩10分
・阪神電車「岩屋駅」下車、南へ徒歩3分
敏馬神社地図 Copyright:(C) 2011 NTT Resonant Inc. All Rights Reserved.
拝観料
・無料
拝観時間
・常時開放
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