神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

神戸・海神社。

2005年11月23日 | ■神戸市垂水区
海陸交通安全・安産・厄除開運

海神社

(わたつみじんじゃ)
神戸市垂水区宮本町5-1

神仏霊場兵庫 豊饒の道・第8番札所



建てられたのは1957(昭和32)年と、意外と新しい「浜の大鳥居」。
沖からの目印だった松林が枯れてしまったため建てられたそうです



〔御祭神〕
底津綿津見神
(そこつ わたつみのかみ)
中津綿津見神
(なかつ わたつみのかみ)
上津綿津見神
(うわつ わたつみのかみ)
大日孁貴神
おおひるめのむちのかみ


 神戸市垂水区は旧播磨国の一番東南に位置する町で、石器や縄文式土器が出土するなど、古くから人々の営みが行われていた歴史ある地域です。「たるみ」の名前の起源としては、滝を意味する「(たる)」「(み)」から付けられたという説があり、昔から「垂見」「樽水」「多留美」などと標記されてきました。そんな垂水区の玄関口・JR垂水駅のホームに立つと、すぐ南側に立派な社殿が鎮座しているのが目に入ります。この神社は、航海安全・漁業繁栄の神様として地元の方々の厚い崇敬を集めている海神社。駅から見えたのは本殿で、国道2号線を挟んで南側に伸びる参道の先には大きな赤い鳥居が建てられています。




国道2号線沿いには、海神社の石鳥居が立っています。


 神社の正式な名前は綿津見神社(わたつみじんじゃ)といいますが、地元の方々には海神社(かいじんじゃ)の名で知られています。この「わたつみ」という呼び名は江戸時代中期の国学者・本居宣長の唱えた説に基づいて1871(明治4)年に採用されたものですが、古くから呼ばれていた「あまじんじゃ」もしくは「たるみじんじゃ」と読むべきだという意見もあります。御祭神は、底津綿津見神中津綿津見神上津綿津見神という海にまつわる3柱の神々で、神話によるとこの3柱の神々は新羅遠征に向かった神功皇后に従って朝鮮半島に渡った神様だといわれています。遠征を終えて都への帰還の途に着いていた遠征軍は、暴風雨に見舞われてたびたび船が立ち往生するトラブルに遭っていましたが、ここ垂水の沖合いでも嵐に遭い、船が進まなくなってしまいます。その時神功皇后みずから伊弉諾神(いざなぎのかみ)の御子であるこの3柱の神を祀って祈祷したところ、たちどころに嵐が止んだ事から、この地に神社を建ててその御神徳を讃えたといいます。




潮風にも負けずに鎮座する拝殿。


 平安時代の前期、797(延暦16)年に成立した「続日本紀」には、769(神護景雲3)年に播磨国明石郡の豪族である海直溝長(あまのあたいみぞなが)が大和赤石連の姓を与えられた事が記されていますが、明石国造として勢力を保っていたこの海直氏の本拠地が海神社のある一帯であり、海神社で祀られていた神々は海直氏の氏神だという説が有力です。この海神社は、927(延長5)年に編集された「延喜式」にも名神大社としてその名が見られる格式高い神社で、海の守り神として人々の厚い崇敬を集めて繁栄してきましたが、海と陸の交通の要衝に鎮座する神社だけに、中世以降何度も兵火に巻き込まれて難に遭ってきましたが、1583(天正11)年には豊臣秀吉公から山林の寄進を受けるなど財政的に支援を受け、また江戸時代に入っても代々の明石藩主から援助を受けるなどの庇護を得て、境内が整えられ繁栄を続けてきました。江戸時代の初頭からは「日向大明神」と呼ばれてきましたが、1871(明治4)年5月14日に出された太政官布告「官社以下定額・神官職制等規則」によって近代社格制度が制定され、地方官が祭祀を行う国幣中社に列せられた際に「海神社」へと戻されました。その後1897(明治30)年には神祇官が祭祀を行い皇室から幣帛が供進される官幣中社へと昇格されました。




社殿奥の本殿(左)。その東側には菅原道真公を祀る天神社と神輿庫があります(右)。


 海神社は、毎年10月10日から12日にかけて行われる勇壮な秋祭りでもその名を知られています。特に、最終日の12日に行われる海上渡御祭は壮観です。神輿をのせた御座船が多くのお供の船を従えておこなう海上渡御は、垂水漁港内で海上安全と豊漁祈願のお祓いを受けてから出発。西は舞子沖から東は神戸港沖まで渡御を行います。夜は、2台の神輿の宮入りでとても盛り上がります。




拝殿の西側に立つ摂社(左)。その境内には石造りの七福神が並んでいます(右)。

奥に鎮座する社殿には蛭子大神・稲荷大神・猿田彦大神が祀られています。


アクセス
・JR神戸線「垂水駅」下車、南へ徒歩1分
・山陽電車「山陽垂水駅」下車、南へ徒歩1分
 海神社地図 Copyright (C) 2000-2006 ZENRIN DataCom CO.,LTD. All Rights Reserved.  

拝観料
・無料

拝観時間
・常時開放

公式サイト

神戸の神社
兵庫県神社庁神戸市支部
神戸新聞出版センター

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
瑞ヶ丘八幡神社 (Jun)
2009-08-01 23:36:40
はじめまして
子供時代から馴染んだ海神社を載せてくださってありがとうございます。
ところで、海神社から北へ歩いて10分足らずのところに、瑞ヶ丘八幡神社があります。周囲は住宅地ですが、結構広い空間で、原始林もあります。実家では、この神社を守り神としてきました。(氏神ではありません)以前、筒井康隆氏も近所に住まわれて、この神社を気に入っておられたと聞きます。
意外に神社ファンから気づかれないで無視される気の毒なお宮さんなので、機会があれば訪問してみてください。
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Unknown (きみー)
2009-08-05 09:11:05
瑞丘八幡神社は「厄除八幡神社」の名前でも知られていますね。一度行ったことがありますよ。
社殿が工事中だったのでちょっと残念でしたが、緑に包まれていて静かな雰囲気の境内で気に入りました。また折を見てご紹介したいとおもいます。
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