王子神社
(おうじじんじゃ)
神戸市灘区原田通3-8-43
王子動物園の南側に鎮座する王子神社。大きな看板の脇に入口があります。
〔御祭神〕
健御名方尊
(たけみなかたのみこと)
若一王子尊
(わかいちおうじのみこと)
大市比売尊
(たかいちひめのみこと)
ほか計10柱合祀。
神戸市灘区にある王子公園。休日になると親子連れで賑わう王子動物園や、アメリカンフットボールの開催で熱気に包まれる王子スタジアム、兵庫県立美術館「原田の森ギャラリー」や関西学院跡地に建つ市民ギャラリーなど、神戸の市街地の近くに立地するレクリエーションゾーンとして市民に親しまれている王子エリア。その片隅に、町名の由来となった王子神社が静かに鎮座しています。
鎌倉時代初期に信濃国松本から移り住み、原田の地に根を下ろした松本忠公公は、1204(元久4)年に故郷の神・諏訪神社の健御名方尊を勧請して神社を建立しました。現在の王子動物園の敷地内にあったといわれるこの神社の境内は約13,000坪という広大なものだったそうです。この周辺は「原田の森」と呼ばれる広大な森で、一ノ谷の合戦には東軍の陣地となったり、鎌倉時代末期には後醍醐天皇方について倒幕の軍を上げた赤松円心公が籠もった摩耶城を攻略するために幕府軍が拠点を置いたと伝えられるなど、軍事上の重要地点でもあったようです。神代の昔、健御名方尊がこの地で軍旅の休息を取られたという言い伝えも、軍事上の要害の地だった原田の森と軍神・健御名方神のイメージが結び付いたものだったのかもしれません。
阪神・淡路大震災で被害を受けた社殿。2007(平成19)年に修築されました。
平安時代中期から鎌倉にかけて流行した熊野信仰。浄土信仰が広がっていたこの時期、熊野三山は阿弥陀如来や千手観音の浄土とされて現世・来世を問わず幸福を願う人々の厚い崇敬を集めていました。そんな熊野信仰の広がりをうけて、この地でも「諏訪大明神の本体は熊野から出てきた」という由来付けがなされ、1252(建長4)年に紀伊国熊野より若一王子神を勧請して合祀し(1336年、延元元年のことだという説もあります)「王子権現」と呼ばれるようになりました。現在ここが「王子」といわれるのは、この若一王子神の名前に由来します。この一帯は原田字王子免と呼ばれるようになり、のちに王子町と呼ばれるようになりました。ちなみに「免」とは、社寺の境内など租税の免除地の事を意味するものです。
天照大神など5柱の神々を祀る末社(左)と、社殿脇に繁る立派な御神木(右)。
※末社には、天満大神・松尾大神・住吉大神・愛宕大神・天照大神が祀られています。
王子権現と呼ばれて人々の崇敬を集めていた王子神社は、1873(明治6)年には境内の約75%を神戸市に上地し、名称も「健御名方尊神社」と変更されました。氏子の皆さんは御祭神の名前の付いた社号を呼ぶ事は恐れ多いとして、地名にちなんで「原田神社」という通称で呼んでいたそうです。一方、原田村には他に高林神社という神社も祀られていました。文献の記述からも876(貞観18)年時点にはその存在が確認されている古社で、穀物の神である大歳神や宇迦御魂神の母神といわれる大市比売神を御祭神に祀り、商売繁盛の神様として崇敬を集めていましたが、1903(明治39)年5月にはこの「原田神社」に合祀されています。1931(昭和6)年には大規模な改築が行われて境内が整備され、戦後の1946(昭和21)年12月10日には、現在の名称である「王子神社」に改称されました。
朱塗りの鳥居も整備された大瀧稲荷社(左)と、その参道に立っている歌碑(右)。
戦後の王子神社は神戸市の都市計画に翻弄されて移転を重ねます。1950(昭和25)年、神戸で日本貿易産業博覧会が開催されることになりました。湊川エリアと王子エリアが開催地に選ばれ、その会場として王子公園が作られることになりました。このため博覧会の前年の1949(昭和24)年、王子神社は境内地の約8割を市へ提供し、神社そのものも王子町1丁目へと遷されます。さらに1956(昭和31)年には兵庫県で国民体育大会が行われることになり、メインスタジアムとして王子公園内に陸上競技場(現在の王子スタジアム)が建設されることになったために再び王子神社は移転を余儀なくされました。1995(平成7)年1月17日に起こった阪神・淡路大震災で大きなダメージを受けましたが、2007(平成19)年には氏子の皆さんの御尽力によって社務所や社殿などが再建されました。社殿脇に建つ大滝稲荷神社も鮮やかな朱色に塗り替えられるなど、美しく生まれ変わる息吹が感じられる神社です。
「元原田神社」と刻まれた石碑(左)と、2007年に建てられた社務所(右)。
アクセス
・阪急電車神戸線「王子公園駅」下車、西へ徒歩3分
・JR神戸線「灘駅」下車、北へ徒歩5分
王子神社地図 Copyright:(C) 2011 NTT Resonant Inc. All Rights Reserved.
拝観料
・無料
拝観時間
・常時開放
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