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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

対平成21年戦(2) 急所各問のどれと同型?

2012-02-25 15:09:37 | Q&A 採点実感
ふーむ。ララオ様からいかのような回答が。

初手! (ララオ)
2012-02-25 13:56:06
<設問1>
学問は、真理を探求する営みである。
大学の教授には、真理を探求し、これを社会に発表することで、
一般人が陥りがちな順応主義に立ち向かうことが期待されている。

それゆえ、大学教授という給付を受ける立場でありながら、
真理の探究という職責を果たすために、
研究の自由が保障される。

本件停止命令はXの研究の自由を制約する。


 はい。その通りです。

 というわけで、設問1の停止命令から考えましょう。
 初手から原告が頑張んないといけないのは、次のような手順です。


一 問題提起
 1 まず、憲法23条が保障する学問の自由には、研究の自由が含まれる。

 2 本問Xの研究は、明らかに医学研究の範疇に含まれる。

 3 確かに、Xは、私的な研究の停止命令を受けたわけではなく、
   公立大学の研究業務として行う本件研究の停止命令を受けたにすぎない。

 4 それでは、このような大規模設備・人員・資金が必要な研究分野において、
   公立大学が所属研究者に下す研究停止命令は、
   研究の自由の制約にならないと言えるだろうか?


 まず、こうした問題提起ができているか、
 それとも、単純に研究の自由の制約をいきなり(一1・2の論証のみで)
 認定しているか、で、まず、最初のランク分けがついてしまいます。
 恐ろしいですねえ。
 もちろん、しっかり勉強していれば落とさない問題でしょうが、
 ここをスルーしてしまう方も多いのではないでしょうか?


 さて、こうした問題提起ができたとして、原告としては
 これを自由の制約と認定するための工夫が必要です。

 これは、実は急所第二問のような、
 給付(大学所属研究者としての研究環境)の撤回・取消・縮減が
 権利の制約にあたるか、という状況なのですよね。


 この場合、まず考えるべきはパブリックフォーラムですが、
 大学所属研究者としての研究環境が
 公衆に開かれたものであるはずはなく、
 公衆が自由に使えるはずのフォーラムや、という発想はアウト。

 そうなると、一つの方向としては、
 急所第二問のように、根拠法の趣旨適合解釈です。


 viさま(フルネームでなくてすいません。
 顔文字は文字化け危険がありますので、このような表記で失礼いたします。)
 からのご指摘にそえば、

 「遺伝子研究においては大学の研究場所の提供は必要不可欠
  大学の研究停止命令は、本件研究を実質的には不可能なものとする。」
 
 という点が、使えそうです。

 この点を押して行き、


二 Y県立大学医学部の研究停止命令権限の限界
 1 本件研究停止命令は、
   実質的には、Xの遺伝子研究の途を閉ざすものであり、
   学問発展のために、
   各研究者の自由な研究環境を確保するという
   憲法23条の趣旨に反するものと解さざるを得ない。

 2 このことを踏まえると、
   Xは、自律的判断に基づく自由な学術研究を行うことを
   職責を担っていると解すべきであり、
   そうしたXの職責は、憲法23条の趣旨に照らし十分に尊重されねばならない。

 3 Y県立大学医学部のXに対する命令権限の範囲は、
   このような点を前提に解釈すべきであり、
   憲法23条の趣旨に反する命令は、
   命令権限の範囲を逸脱する違法なものと考えるべきである。


 位の論証をしたほうがよさそうですね。


 ・・・・・・。
 はい。
 最後に一言ですが、こうした内容を表現している注意深い論証の後なら、
 「実質的には研究の自由の制約だ」と表現してもいいとは思いますし、
 出題趣旨先生も、その程度の表現は許しているようです。

 ただ、権利制約について
 こうしたXの立場を十分に踏まえた論証が要求されている、
 (出題趣旨先生もそういう趣旨の書きぶりです)
 という点、注意が必要そうですね。

 あと、ララオさんの第二の指摘にも関連しますが、
 ここでXの「自由」を主張しすぎますと、
 設問2でXの「職責」の話とつながらないので、
 ここは注意が必要になるでしょう。


 こうして初手、どういう方向から攻めればいいかわかりました。

 さて、ここから先は、
 いわゆる違憲審査基準的な議論をしてゆくことになりますが、
 3にどうやって続けてゆくか、考えてみましょう。

 急所第二問と同型にすすめていけばいいんですが、
 このテの問題は、本当に難しいんですよね。



公務員の政治活動(2・完)

2012-02-25 14:35:35 | 憲法学 憲法判断の方法
さて、公務員の政治活動についての議論を整理しましょう。

一 公務員の業務遂行の「中立性」の定義
 公務員の業務遂行の中立性とは、
 公務員が職務行為をする場合に、
 民主的に決定された法律を忠実に従うべきことを意味する。

二 公務員の政治活動の禁止と公務の中立性確保の関連性

 1 公務員の業務遂行の中立性が、その1に示した概念である以上、
   個人の立場でやる=業務としてではなく行う政治活動は、
   公務員の業務遂行の中立性に違反しない。

 2 また、個人の立場で政治活動を行う人間は、
   業務においても中立性に反する業務を行う、
   という事実を認定することは困難である。
    (例えば、休日にA党のポスターを張っている八百屋さんが
     B党支持者にニンジンを売らない、
     という現象は、一般に観察されない) 

 3 よって、公務員が個人の立場で行う政治活動の禁止は、
   公務の中立性それ自体を保護するためには、役立たない。
   (公務の中立性確保という目的とは、関連性が欠ける)

三 公務員の政治活動の禁止と公務の中立性への「信頼」確保との関連性
 1 ただし、
   「個人の立場で政治活動を行う人間は、
    業務においても中立性に反する業務を行う」
   という偏見をもっている国民がいる可能性は否定できない。

 2 よって、
   公務員が個人の立場で行う政治活動の禁止は、
   公務の中立性「への信頼」を保護する目的には資する。

四 批判
 最高裁の立場は、三に示した通りであるが、
 三1の国民の偏見は、偏見ないし差別感情にすぎず、
 これに迎合する目的は、およそ正当とは言い難い。


ふむ。よくまとまったなあ。
このままゼミの報告とかしたら、ウケるかもしれない(悪知恵)。


・・・・・・。
はい。ゼミの発表では、ちゃんと出典を示しましょう。


さて、ここまでの議論は、
公務員が個人の立場で(=業務外で)行う政治活動を禁止することは
正当化できない、というものです。

しかし、公務員が、業務遂行中に、あるいは、
業務上の立場を利用して政治活動を行えば、
これは、当然、公務の政治的中立性に違反します。

たとえば、
「学校の先生が家庭訪問中に、特定候補者への投票を依頼する」
(めがふぉにっく様ご指摘。ありえん。戸別訪問で逮捕じゃ。)とか、
「警察官が、休日に、制服と拳銃を持ち出し、
 『次の選挙で、○×候補に投票した者は、それ以降、
  警察の保護を受けられないものと思ってほしい』と演説する」とか。


これは、
政治的信条によらず業務を誠実に執行すべき、という公務員法の規範
公務員の立場で発言(ガバメントスピーチ)する場合には、
内閣以下の監督の下で、許容された範囲での発言すべき、
という規範に、真正面から違反しています。



さて、そうすると、公務員の政治活動の禁止のうち、
「公務員の地位を利用した」政治活動の禁止は、
公務の中立性の確保と言う目的と関連しているといえ、
正当なわけです。

現行法は、それをはるかに超える範囲を規制していて、
関連性のない規制が多く含まれているので
違憲部分が多いということなわけですね。

はい。こんな風に公務員の政治活動の禁止の論点、
考えて見てはどうだろうか?ということでした。

対平成21年戦(1) 初手はどこから入るべきか?

2012-02-24 07:20:02 | Q&A 採点実感
さて、satoimokoさんから、平成21年の試験問題の考え方について、
コメントをいただきました。

平成21年の問題については、試験実施直後から、
LSでたくさん質問をいただき、
ブログ開始後も、ほぼ月に一回のペースでコメント欄に質問が、
LS講義でも、ほぼ毎学期質問を受けます。

というわけで、
同年度の問題は、他の年度に比べて難易度がかなり高かったと思われ、
今後個別に質問に対応するよりも、
私なりの解説をまとめておいたほうがいいだろう、ということで
ちと連載してみたいと思います。


さて、どんなもんだろう?と思って、
平成21年度の出題趣旨・採点実感を細かく読んでみましたが、
正確に読み解くのが難しい。
ところどころ、私も何を言いたいのか、分からん。
と格闘しているうちに、ピンとひらめきました。
多分、(私にとって)自然な処理をしていけば、
採点実感出題趣旨先生の言うとおりの議論になる。

というわけで、以下、私にとっての自然な思考・処理の流れを
示していきます!


さて、本問の特徴は、
県立大学の教授が、職務として行っている研究について
大学から停止命令を出された、あるいは
職務規定に違反したことを理由に懲戒処分を受けた、
という事案だという点です。

採点実感などの書きぶりからするに、
試験委員は、この点を踏まえた論述を求めていますが
(この点は、憲法判断のために、
 極めて重要なポイントなので、そこに配点するのは当然だと思いますが)、
どうも、ここをしっかり把握していない答案が多かったようです。


ちょっと整理しましょう。

県の職員Aがいて、ある業務のやり方(例えば、環境補助金)について、
上司Bから停止(例えば、環境改善効果のない特定事業への補助金停止命令)
の指示を受けた、命令を受けた、とします。

ここで職員は、補助金を配布する「自由」の主張ができるでしょうか?
ちょっと変な感じがしますねえ。

この変な感じを、「自由の問題?」としておきましょう。



あるいは、こんな例はどうでしょう?
市の職員Aがいて、生活保護の支給を担当していた。
Aの上司Bは、生活保護受給者Cが、
市の政策を批判するデモに参加していることを見聞きし、
それに対する反感から、
Cへの生活保護支給を停止するようAに対し命令を出した。

さて、ここでは、さしあたりAさん個人の利益は問題になっていませんね。
では、AさんはCの政治活動なり生存権なり、
「Cの権利侵害」を理由に、停止命令の違法を主張し、
停止命令の取消訴訟を提起できるでしょうか?

うーん、C自身が市に対して権利主張をすることは当然可能ですが、
Aさんの取消訴訟は、なんかできない気がしますよねえ。

この変な感じを「第三者の権利主張?」と呼びましょう。



実は、あの問題は、県(立大学)の職員(教授)に対する
業務(研究という業務)停止命令なので、
出題趣旨が求めているような議論をしようとすると、この
「自由の問題?」と「第三者の権利主張の問題?」の
二つをクリアする論証をせにゃならんわけです。

ここ、つまり本件特有の事情を無視して、
いきなりXの自由じゃー!と突撃すると痛い目に会いますよ、
ということを採点実感先生はおっしゃっているようです。

というわけで、この問題、初手が極めて大事です。
どこから指しますかねえ?

           (つづく)

最近の仕事状況

2012-02-23 17:07:25 | 3/23建築家VS憲法学者シンポ
ちょっと、更新が遅れてしまいすいません。

実は、今週末から、3月23日のシンポジウムに向けた準備が
本格化しておりまして、ばたばたしていました。

昨日は、会場の建築会館の担当者の方、共催の日本評論社の方と打ち合わせ。
詳細は後日お話ししますが、関係各方面の努力により、
「入場無料の大ホール開催」となりましたので、
学生の方々も、料金や会場の広さなどを心配せず、ぜひぜひ安心して足を運んでください。


私の役目は、建築家と憲法学者の通訳、論点設定ということで、
この度の大震災をテーマにした著書・新聞・雑誌などを
資料を集めて、読んでおります。

また、パネリストの松山先生、内藤先生の作品、
石川論文・駒村論文の再勉強なども進めておりまして、
ええ、ちょっと大変です。

もちろん、被災地の方々、現地で活動されている公的機関・ボランティア等の方々のことを考えると、
この程度のことで、大変だ、などというのはおこがましいわけでありまして、
はい。とにかく頑張りたいと思っております。


さて、ブログらしく、作業日記的にご報告ですが。
昨日まで、
パネリストの内藤廣先生の『環境デザイン講義』読んでいました。

これは「光」「熱」「水」などのテーマで、
建築・都市・土木などにおける環境について語っていくわけです。

これがすんごく面白いわけです。
人間は熱を感じる点よりも、冷たさを感じる点の方が多い。
光というのが、いかに人間の感情を左右するか。
水がある、とはどういうことなのか?
湿度10%だと気温29度でも寒い!
などなど、すごいお話しが書いてあり、
しかも、土木・建築・建築設備を専門としない人にも
すごくわかりやすい!
ヤバい。サインもらいたい。
しかし、シンポジウム中にサインをもらうのは、どうなんだろう?
(この文章を読み返していて、控室でお願いすればいい、と
 気づきました。何を慌てているのでしょう。)

とにかく、これですねえ、環境法選択の人は必須ですよ。
はい。生協に注文です!!


その他、勉強した内容としては、
職業がら気になる、
大震災の中で自衛隊・米軍の方々がどう活動されたのか?、
宗教団体がどのような取組をしたのか?、
あるいは、職業とは別に関東地方の住民として気になる
そもそも普通の食品にはどのくらいの放射性カリウムが入っているのか?
などなど、とにかく、いろいろアンテナを広げております。


シンポジウムについては、また、ご報告していきたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

公務員の政治活動(1)

2012-02-21 06:52:33 | 憲法学 憲法判断の方法
ご回答、ありがとうございます。
すばらしい回答ばかりで、とてもうれしいです。

さて、まず自然に、というか最高裁の法廷意見の考え方は、
まさに、次のような考え方だと思います。


Unknown (vI-_-Io)
2012-02-20 20:13:54
民主主義社会形成のために必要であり正当な目的なのではないかと思います。

他の公務員個人にとっても、信頼が罷免されない一要素であることからも正当性が担保されるようにも思います。



ええ、しかし、ここで話を整理します。
①「行政の中立性」それ自体ではなく、
②「行政の中立性への信頼」を保護する、
という目的をわざわざ掲げるということは、
①では、規制を正当化できない、ということです。

①では規制を正当化できない、というのは、
要するに、
「政治活動をする公務員は、
 政治的中立性に反する業務遂行をする」
という立法事実が認定できない、ということです。

このことを前提としますと、
「政治活動をする公務員は
 政治的中立性に反する業務遂行をするにちがいない」
という(一部)国民の考え方は、
単なる偏見だということになります。


Unknown (杏アフター)
2012-02-20 21:41:46
目的が、
①「」内にあるような主観的なものを過ぎないものを中核としていること
②一部国民のもの(主観)に過ぎないこと
③「」内の意識に合理性に疑問があること
から、正当な目的とは言えないと思います。



そうすると、②の目的は、
偏見への迎合と言う目的だということになります。

そして、差別や偏見への迎合は、
そこから差別意識や偏見を持っている人を喜ばせる
という、ある種の利益を実現できるものではあるが、
差別対象・偏見対象となっている人の個人としての尊重の理念に
反するので、不当な目的だと看做さざるを得ない、
と言われています。

②を正当な目的とすると、
「女性は、結婚すると公務員を辞めてしまうから
 公務員に採用すべきではない」とか
「特定人種の人は、国民であっても、
 業務遂行能力が低いから、
 公務員に採用すべきではない」と思っている
差別的な国民がいる場合に、
公務員から女性や特定人種の人を排除することが正当化されてしまう、
という、帰結になります。

というわけで、

正当ではないと思います (YS)
2012-02-20 22:53:58
「政治活動をする人の規範意識の低さ」につき,事実の裏付けがあるならば別ですが,現状そうではないので,当該国民の意識は偏見にすぎないと思います。
そうした偏見への迎合を目的とした規制は,政治活動をする人の自律性を否定するもので,「個人の尊重」(憲法13条前段)と相容れない不当な目的ではないでしょうか。
あるいは,政治的な信条による差別の助長を目的とするもので,「非差別原則」(憲法14条1項後段)に反するともいえるのかなぁ,と考えました。




というご指摘の通りに考えるべきなわけです。

ほほほ。
というわけで、猿払事件も本籍地は、14条1項後段。
いやあ、非差別原則解釈の威力抜群ですねえ(自画自賛)。


さて、但し、私は、
公務員の政治活動禁止一般が違憲だとは考えていません。

明らかに合憲的適用部分があるわけです。
次回は、その点について考えて見ましょう。