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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

謎は全て解けた。

2012-06-28 20:01:42 | ちょっと一言
というわけで、だいたい分かってきたのですが、
こんな感じですね。

正当補償とは、
適法行為により特別犠牲を受けた者が、
損失の補償を求めることである。

民事法においても、
①現在および未来の違法行為に対する差止め
②過去の違法行為に対する損害賠償
③過去の適法行為由来特別犠牲に対する損失補償
が区別されるべきである。

③の例としては、
高い建物ができて、多くの人がその地域に住めるという利益が実現されたが、
残念ながら周辺住民の景観利益が害された、みたいな例ですね。


①と②における「違法」は
さしあたり、正当化できない権利・利益の侵害という意味で、
同一である。

これに対し、
②における「加害者行為が違法であること」と
③における「特別犠牲であること」は、
性質が違う。

最高裁や民事法の一般的な学説は
②と③を709条に落とし込み、
②における「違法」と③における「特別犠牲」の両方を
「違法」と呼んでいる。

最近はそれを区別するため
②における違法を「大きい違法」、
③における特別犠牲を「小さい違法」と
呼んでみたりしている。

これについては、用語法を改め、
損失補償制度を民事法に正面から導入するというものと
709条を使い続けるという方法の二つがある。

どちらにするかは、今後の実務家や学者が
頭をひねりにひねらねばならぬ問題である。

うーん、良く分かった。
今度論文書くことにしよう。

結論としては損失補償ということではなかろうか

2012-06-27 17:02:07 | ちょっと一言
昨日は、いろいろと有益な情報ありがとうございました。
環境法については、単位をとったことがなかったので
とても勉強になりました。

やはり、「違法な侵害」に対し差止めができないというのは、
事情判決のようなよほどの事情がある場合はともかく、
「違法性」という概念になじまない、ように思いました。

一番すっきりする説明はorsさんの次のような説明だと思います。



近くに公共性高い施設ができて、周辺住民は特別の犠牲を払ったといえる以上、その負担は社会(これに限らないが、特に周辺住民以外で便益を受けている者たち)に転嫁されるべきであるから(その方が平等です)、(損失補償に近い意味で)損害賠償は認めやすいでしょう(したがって、私も、考慮要素として公共性をあげる判例は、やはりこの場面における損害賠償を一種の不当利得と捉えている節があると思います)。
 だから、結論としては、どちらかというと、請求権よりは、被侵害利益と公共性についての捉え方の違いがでて、損害賠償はいいけど、差し止めはだめよといっているのかな、と思います。そしてこう捉えることが判例の明示する考慮要素の捉え方として素直ではないかな、と考えています。



民事法的にも、
やっても適法だけど、損失は補償しなければいけない
というラインがあって、その制度が必要だ、
と言うことになるのではないかなと思います。


ただ、民法は適法損失補償の制度を用意していないので、
すべて不法行為でまかなうことになり、
結果、「高い違法」と「低い違法」という概念が生じることになったが、
この「低い違法」というのは、
違法性が弱い、という意味ではなく、
(違法性は、違法度と異なり程度概念ではなく有無概念)、
違法性がないが、損失を補償すべき何らかの要素がある、
という意味だと考えるべきである。

現状の不法行為法には、
不法行為法と正当補償法という二つの法体系が混入している
という感じですね。

さて、こうなった場合に、損失補償を求めることのできる要素って
何なのかなあ、というのが気になりますね。

ちょっと考えてみます。

利益と権利の区別が釈然としない

2012-06-26 11:22:30 | ちょっと一言
最近、景観シンポジウムとのからみで、
不法行為法や民事差止法について、久々に勉強してみました。

勉強してみると、どーも、民事不法行為法の文脈では
A「法律上保護に値する利益」と
B「権利」は違うらしく、
Aを侵害した場合、不法行為に基づく損害賠償債権は成立するが、
Aの侵害を理由にした差止請求はできないらしい、が
Bの侵害に対しては損害賠償請求も差止もできる、
と、いう概念区分を設ける民法学者が多いというのが分かりました。


景観利益はB:権利ではなくA:利益だそうで、
景観をどどっと害する建物
(例えば、わいせつ物にはぎりぎりならない
 どぎつい性表現を含む壁画や形状の建物)を建てた場合、
その撤去や修正を求める請求権は保障されないが、
周辺住民は損害賠償をもらえるとのことです。

そうすると、そういう建物が建つと、
撤去は請求できないが、周辺住民はその建物がある限り、
損害賠償をもらい続けられる、ということですね。

なんだか釈然としないなあ。

損害賠償とれるような行為だったら、
差止ができて当然だと思うのは私だけでしょうか?

なんか、今見た処理って、
お金を払えば本人の意思によらず引用できる
著作物の有償フェアユース、みたいな感じがして、
おかしい気がするんだよね。

不法行為じゃなくて、不当利得ならなんか納得できなくはないんだが。

この辺りについて、スキッと爽快な気分になれる判例や学説を
ご存じの方は教えてください。

続報:景観横浜決戦

2012-06-23 17:31:16 | お知らせ
こんにちは。
早速反響を頂いております景観横浜シンポジウムの件ですが、
JIA神奈川賛助会の星様から、次のようなご連絡を頂きました。

フェイスブックからのお申込み (星 淳一)
2012-06-23 10:02:11
木村先生お世話になります。JIA神奈川賛助会の星と申します。景観のシンポジウムとても楽しみにしております。シンポジウムのお申込みをフェイスブックでも行なっております。下記のページからお申込いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。


フェイスブックのこちらのページからも申し込みができるとのことです。

どうぞよろしくお願いいたします。


そうそう、私の教え子(ちょっと怖い人です)の神奈川県民から、
次のようなメールを頂きました。


更地と倉庫と公園のみなとみらいを見て育った世代としては、
みなとみらいの開放的な空間と景観がドン引きな建物で乱されるのは寂しいです。
個人的にはワールドポーターズですら肯定し難いのでシンポジウム頑張ってください!



要約すると、なんとかしないとただじゃおかないぞ。分かったか。
という、まあ一種の脅迫ですね。頑張りたいと思います。

そうそう、今回のシンポジウムに関連して、
景観関係の文献ですが、ジュリスト1314号が景観法特集です。

今後、景観紛争・建築紛争は、ますます増加するものと思われますので、
法曹、法学徒にとっては、しっておかなければいけない分野になっていくものと思われます。

それでは、当日、会場でお会いいたしましょう。
どんとこい、セレビュドラ!

景観横浜決戦

2012-06-21 20:31:15 | お知らせ
山本理顕先生から光栄にもご依頼をいただきました。

ヨコハマの玄関口というと、みなとみらい地区ですが、
そこに結婚式場が計画されているというのです。

その式場は、イタリア風とかイギリス風とかのチャペルがあって、
ギリシア神殿のような外観の建物ありと、そんな感じです。


ええと、よくウルトラマンで
なんか強い怪獣作んなきゃいけないときってありますよね。

怪獣は、まあ、毎回強いわけで、
その中で特に強そうな怪獣というのを創作するのは
本当に大変なわけです。

劇中でウルトラマンをやっつければ、
子どもたちが強いと思ってくれるかと言うとそうでもなく、
例えば、ヒッポリット星人(ウルトラ5兄弟に完勝)とか
バードン(ゾフィーをやっつけた挙句、倒すまでに3回もかかる)とか
実績は文句ないですが、
やはり、「えっと、これ、本当に強いの?」みたいな外観のせいで
ゼットンのようなインパクトがないわけですね。


・・・・・・・・・・・・・・・・さて、話は戻って、
ウルトラマンで強い怪獣を手っ取り早く作る方法は、
過去に出てきた強い怪獣のパーツを合体させると言う感じです。
タイラントなんかが典型ですね。

今回の結婚式場もどうやら、
なんかこう豪華なものつくらなきゃいかん
ということで、
とりあえず過去にあった豪華なものを合体させて
なんだか良く分からないが、とにかくゴージャスと言わざるを得ない
というような建物らしいのです。

ランドマークタワーができていらい、
ゴジラ、モスラを始め、みなとみらい地区には
いろいろな怪獣がやってきたわけですが、
今回、まさにタイラントがやってきたのです!


・・・・・・・・・・・・・・・。

ああ、もう、景観なんだか、ウルトラマンなんだか良く分からなくなってきましたが、
要するに、みなとみらい地区の景観が
タイラントのような合体怪獣、
結婚式場怪獣セレドビュラ
によって破壊されようとしているのですね。

さて、危機迫るみなとみらい地区の目と鼻の先に事務所を
かまえますのが、ヨコハマを代表する建築家山本理顕。

セレドビュラも、やっかいな人を敵に回したものです。

山本先生は、早速、横浜市への請願、市民への呼び掛けなどを進め、
今回、景観を考えるシンポジウムが開催されることになりました。

建築の観点だけでなく、法律家の観点も必要だ!
ということで、私に白羽の矢が刺さりました。ブスリ!

以下、お知らせを転載いたします。

開催日時 平成24年7月10日(火)18:15~20:45
開催場所 横浜開港記念会館 大講堂


テーマ: 景観の本質を考える『美しい景観が住みやすい街をつくる』

シンポジウムの構成 パネルディスカッション
基調講演 : 山本理顕氏 『美しい景観が住みやすい街をつくる 』

パネリスト: 山本理顕氏 (建築家、山本理顕設計工場代表)
赤堀 忍氏 (芝浦工業大学教授:環境計画・建築計画)
木村草太氏 (首都大学東京准教授:憲法学)
モデレーター:鈴木伸治氏(横浜市立大学国際総合科学部准教授:都市計画)

参加費 無料

会場からして、横浜の歴史的建築、開港記念館です。
この問題については、こちらのまとめサイトをごらんください。

当日は、景観をめぐる法制度、景観規制と財産権の関係、
そもそも財産権を憲法が保障する意義はどのようなもので、
この問題をどのようにとらえればよいのか?
と、多角的にこの問題を検討してみたいと思います。

私は、桜木町に住んでいたこともあり、
みなとみらい地区の景観に好感(かなり)を抱いておりますが、
法律家として一歩引いた視点から、
考察のあり方を示したいな、と思っておりますし、
恐らくそれが、山本先生が私を選んでくださった意図でもあるかな、と思います。

財産権保障や景観法に興味のある方、
ヨコハマの景観に興味のある方、
ぜひぜひ、ご参加ください。

それでは会場でお会いいたしましょう。
頑張ってみたいと思います。