木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

立憲デモクラシーの会イベント

2014-06-20 11:42:59 | お知らせ
ご無沙汰しております。

いろいろあって、しばらく更新できませんでした。

私も呼びかけ人としてお手伝いしております
立憲デモクラシーの会の公開講演会が開催されます。

第一部は、三谷太一郎先生ということで、
まさにマスターヨーダが、ついに立ち上がった的な歴史的講演会です。

(この場合、アナキンは誰で、皇帝は誰なのか
 という問題はあるわけですが・・・。)

第二部では、前田哲男氏の講演もあります。
私は、憲法学の観点からコメントをすることになっております。




<集団的自衛権を問う—— 立憲主義と安全保障の観点から>

7月4日(金) 午後6時~8時(5時半開場予定)

会場: 学習院大学西5号館B1教室(JR目白駅)
(入場無料。先着順。予約は受け付けていません)

第1部
基調講演:三谷太一郎(日本学士院会員・東京大学名誉教授・政治史)
「なぜ日本に立憲主義が導入されたのか:その歴史的起源についての考察」

 コメント:加藤陽子(東京大学教授・歴史学)

 司会: 山口二郎(法政大学・政治学)

第2部

講演:前田哲男(軍事評論家)
「集団的自衛権をめぐる国会論戦を振り返って」(仮)

 コメント:木村草太(首都大学東京准教授・憲法学)

 司会: 中野晃一(上智大学・政治学)


詳細はこちら




また、月曜日にチキさんのラジオに出演しまして、
集団的自衛権の行使がなぜ違憲と言われるのか、
を5分で説明しよう、という企画にチャレンジしております。


ええと、チキさんのベストアシストをうまく決めきれなかった感もあり、
ちょっと補足させていただきます。

1 授権規範が必要なのである

まず、根拠がない云々というのは、どういう議論なのか
というようなことを、メディアの方からもご質問いただいたりしますので
ちょっとまとめておきましょう。


あらゆる団体に共通ですが、
団体は、規約に決められた範囲で活動をします。
(規約が団体に、これやっていいよ、と決めることを
 「授権」といいます)

例えば、野球部は、野球部規約に決められた範囲で活動するので
部費を、
部長の実家の美容室の資金にしたり、
サッカー部の遠征費につかったりしてはいけないのです(当たり前や)。
(もちろん、規約にそういうことをしてもよい
 という授権規定があれば別です。)

そんなわけで、
消防車の出動だろうが、年金の給付だろうが、
営業停止命令だろうが、関連企業への行政指導だろうが、
政府が国家権力を行使をするためには、憲法上の授権が必要です。

例えば、清宮四朗先生の教科書(憲法Ⅰ第三版17頁)等を見ると、
憲法には授権規範としての側面があり、
「憲法以下の全ての法令は」「憲法の授権にもとづいて存立」すると述べています。

(このことは、芦部先生の教科書でも、13ページの註に書いてあり、
 専門的ではあるものの、大学学部レベルの当然の知識といってよいでしょう。)

(統治機構論が必修でない大学だったり、
 統治機構論の講義で、こういう基本を飛ばして、ハイレベルな講義で飛ばす
 先生もおられますが・・・)

で、いわゆる行政活動は、全て
日本国内の公益を実現すること、国民の権利を守ること
という憲法13条が定めた日本国の業務に含まれる活動なので、
憲法上の根拠があるわけですね。


2 個別的自衛権については授権がある

では個別的自衛権の行使はどうか?

ということですが、
日本国への直接攻撃を除去する作用なので、
日本国は国民の自由や権利などを守れと決めた憲法13条により根拠付けられており、
また、
国内の安全確保作用なので、行政権(憲法65条)に含まれる、
と言われているわけです。
(青井先生の『憲法学の現代的論点(第二版)』の論稿など参照)

また、憲法9条もそれを禁じていないと言われているわけですね。
(もちろん、個別的自衛権違憲説もなくはないですが、
 個別的自衛権違憲説をとっても、集団的自衛権の行使が合憲
 ということにはならんですな)

これが従来の内閣法制局・政府解釈のキモです。


3 ところが、集団的自衛権は・・・。

 というところについて、こちらをお聞きください。


4 で補足

でもって、一応、政府は、ある種の外国への攻撃は日本への攻撃なのだ、
だから、個別的自衛権とはなしは変わらん、という議論をするわけですが、

そういう議論をする場合には、

その外国と日本で、防衛の面である種の統一体・連合・連邦・連合国家的なもの
をつくっていることが前提になり、
(それを作ること自体は、もちろん、ありうる一つの政策です)

いくらなんでも、
現状、日本はアメリカの51番目の州ってことにはならないだろうし
そうした国家連合への加盟は、主権のありように大きな変更を加えるので、
当然、憲法改正が必要になります。
(2000年代の学会では、EU化の流れの中で、
 国家統合と各国憲法という問題が盛んに論じられました)


と、こういうわけで、集団的自衛権の行使を容認するための解釈変更は
憲法上無理ではないか、と言われているわけです。

なわけで、行使容認が必要なら、やはり憲法の改正が必要でしょう、が素直な結論だと思われます。

講演会企画のご提案(ご応募お待ちしております)

2014-06-13 12:31:25 | お知らせ
最近、いろいろと考え、次のような企画を提案してみたいと思います。
ぜひ、ご応募ください!

【タイトル】
新国立競技場・集団的自衛権問題を考える
――建築家・法律家からの技術者としての忠告――

【企画の趣旨】
今、オリンピック・パラリンピック開催施設の整備および安全保障政策の整備が、
重要な政治課題となっています。

その中でも、新国立競技場の設計と集団的自衛権の行使容認とは、
それぞれの論点の中心課題であり、
本来であれば、国民に十分な説明をして、納得を得たうえで方針を決めるべき事項です。

しかしながら、
新国立競技場の方針を決める有識者会議、
集団的自衛権行使容認を主張する安倍政権は、
いずれも建築・法律の専門家をほぼ排除した内輪メンバーで議論を進め、
外部の建築家・法律家の議論を一向に聞こうとしません。

これは、国家全体に大きな影響のある政策決定をする者の態度として、あまりに無責任です。

こうした主張は、建築にも法律にも興味を持たない多くの人から見れば、
単なる政治主張の対立に見えるでしょう。
いずれの政治主張にもそれなりの理があるのだから、
「有識者」や「安倍政権」が
意見の異なる建築家や法律家の話を聞かないのもやむを得ない、と映るかもしれない。

しかし、新国立競技場設計過程や集団的自衛権に関する解釈変更に異議を唱える建築家・法律家は、
単なる政治主張として異議を唱えているのではありません。
それに異議を唱える人は、「技術者」としてあり得ないと主張しているのです。

それはつまりこういうことです。
人にはそれぞれ好みがあり、政治主張も異なります。

そうしたものは、個人がそれぞれに選ぶべきで、その選択は尊重されねばなりません。

ただ、そうした選択の自由の背後・基礎には、好みや政治主張を越えて共有すべき最低限のルールがあります。

その最低限のルールを破る選択は、そもそも選択肢に含まれてはいけません。

そして、技術者とは、個人の好みや政治主張の違いを超越する、
最低限のルールを共有する人々なのです。

今、新国立競技場や集団的自衛権行使容認に異議を唱えている建築家や法律家は、
有識者会議や安倍政権による、
こうした最低限のルールの破壊に、技術者として「それは無理だ」と忠告しているだけなのです。

こうした「技術者としての忠告」は、まことに残念なことに、
各種メディアでは単なる政治主張の違いとしてしか報じられません。

そこで本講演会では、現在の新国立競技場や集団的自衛権行使容認がなぜダメなのかを、
政治主張としてではなく、技術的・論理的に紐解いていきたいと思います。

【講演会目次案】

1 はじめに
  技術者としての建築家・法律家

2 新国立競技場の問題点
① 有識者会議
② コンペ要綱
③ 修正案
④ 国際社会の中で

3 集団的自衛権行使容認
① 安保法制懇
② 想定事例の異様さ
③ 修正案「必要最低限」
④ 国際社会の中で

4 おわりに


【講演会出演者案】

建築家 有識者メンバーから  
    異議を表明しているメンバーから 
    (私に心当たりあり)
法律家 解釈技術の高いメンバーから
    (私に心当たりあり)

司会  木村草太

【日時・場所】
日時 : なるべく早く
場所 : アクセスのいい場所
(アバウトやなあ)

【予算】
各出演者  3万円程度
会場費   5万円~20万円

参加費   資料代・会場費として1000円
参加人数  300人程度

【主催者選定基準】
・講演会をハード面できちんと実現してくれること
・出演者の交渉について丁寧に相談してくれること
・講演会の内容を、映像・文字に残して、多くの人に届けられる形にしてくれること
以上の3点を総合考慮し、私の良心に従い、誠実に選定します。

【応募方法】
既に、私のメールアドレスをご存じの方は、メールください。
ご存じでない方は、ツイッターで@ツイートの上、フォローいただければ、DMにて、
ご連絡先をお伝えいたします。

(ただし、「主催者としての実力を伴わない」と強く疑われる方からの@ツィートについては、
 スルーすることもありますので、ご容赦ください)


【応募期限】
≪第1段階≫
とりあえず、興味の有無についてのご連絡 → 6月20日まで
ご連絡いただいた方の中から、数名に絞った上で、こちらから連絡いたします。
≪第2段階≫
その後、内部決済等による確定判断のご連絡 → 7月末日まで
なるべく早く開催したいので、7月中には確定したく思っておりますので、ご協力の方、どうぞよろしくお願いいたします。

【お問い合わせ】
応募方法に準じて、お願いいたします。

必要最小限について

2014-06-12 14:42:22 | 憲法一般
最近、「必要最小限度」という言葉がはやっているわけですが、
この言葉は、それ自体はからっぽなのに、どうも変だなあという気がします。

最近話題になっている政治課題についても、

「これに賛成ですか?」と聞くと
かなり多めに反対がでるが、

「必要最小限度のそれに賛成ですか?」と聞くと
賛成者が多く出る、ということのようで、

これは結構不思議な事態です。


例えば
「侵略戦争についてどう思いますか?」という質問に、
反対です、と答える人が

「必要最小限度の侵略戦争についてどう思いますか?」
と問われた瞬間

賛成です、と答えるというのは、かなり奇妙ですよね。

そういう人は、
「必要最小限度の殺人」も「必要最小限度の強盗」も、
何も疑問に思わず賛成してしまいそうで、なんだかなあという感じがします。

世論調査をするときは、
「何のための」必要最小限度か、が大事なわけで、
「正当防衛のための」必要最小限度の殺人と
「自分の気持ちを満足させるための」必要限度の殺人では
かなり意味が違うわけであります。


そんなわけで、私は最近、
当初の設計案に「必要最小限度の」修正を施して新国立競技場を建設しよう
という議論に、いささか胡散臭さを感じ始めている次第なわけであります。


「何のための」必要最小限度や、ということが大事ですね。

同性婚と憲法の関係

2014-06-08 16:45:30 | 憲法学 憲法上の権利
この記事についていくつかご質問をいただいたので、少しコメントしたいと思います。

青森の女性カップルが婚姻届、市は憲法根拠に不受理(Web東奥)


憲法24条を不受理の理由とするのは、いささかおかしな話で、
不受理にするなら、
「民法が想定していない」
「民法における婚姻とは異性間の共同生活契約だ」的な
理由をつけるべきだったと思われます。

憲法24条は、男女が婚姻する場合に、
男性の一方的意思のみでは結婚できないこと、
親族会の同意等は不要であることを確認したもの、と理解されています。

したがって、憲法24条は同性婚については何も述べていないというのが通説的な理解で、
たいていの教科書・コンメンタール類でも、同性婚禁止条項だという解説はありません。

  *注
  また、憲法24条は同性間で「婚姻」は成り立たないと理解
  (憲法24条に言う「婚姻」が同性間で成り立つというのは文言上厳しい理解)しても、
  同性婚契約を「婚姻」と呼んではいけないというだけで、
  婚姻と効果が同じ「同性婚」という制度を作ることまで違憲ということにはならんでしょう。


では、現行民法はどうかというと、
「夫婦」という言葉や、子供の親の「父母」という言葉など、
全体の条文からして、当然「男女」を意味している、と推察される、
というのが、現行実務の根拠なのではないでしょうか。

ツイッター上では
「受理した場合にどうなるのか?」とのご質問を乙武さんより頂きました。

窓口が受理しても、戸籍に記載する部署などで、疑義が生じ、前例がない、
想定外、などとして、戸籍の記載がされない、という措置になるかと思われます。

また、相続の段階で、他の親族より、相続分を巡って、婚姻無効の訴訟がなされる可能性はあるかとも思います。


窓口の不受理、戸籍の不記載、税務署等の扱い、いずれにおいても、
婚姻当事者としては、取り消し訴訟や、国賠訴訟の道を模索することになると思われます。


ちなみに、
他国の自衛援助のための組織的武力行使(集団的自衛権の行使)は
「行政」(憲法65条)や「外交」(憲法73条)に含まれない作用とされているので、
憲法が積極的に授権していないと、国は行使できません。

他方、婚姻を含む、私人の共同生活の法的保護は、
国内の公共の福祉を実現し、幸福追求権を実現するための
「行政」作用に含まれるので、
憲法に違反しない限り、法律の根拠があれば実行できる、ということになりましょう。


憲法24条については、しばしば、
同性婚を禁止しない趣旨にしても分かりにくいので改正せよ、と言われたりしますし、
別に、そうした改正に反対するわけではないですが、
以上の理屈は、
通常判断能力を有する一般人であれば容易に理解できるもので、
ことさらに改正の必要はないのかな、と思います。

もちろん、一般国民の知的水準は
憲法の標準的なコンメンタールも読めない水準だから、もっとわかりやすくせよ
という主張もあり得ますが、
それはちと、国民をバカにしすぎであって、現行憲法で十分だろう
という議論の方が説得力がある、ということで、現状があるという感じでございます。

朝日カルチャーで憲法と集団的自衛権の話やります

2014-06-04 10:47:14 | お知らせ
さて、明日は、朝日カルチャーセンター新宿校で19時より、
「憲法9条再考」と題して、
憲法と集団的自衛権の講義をいたします。

三回連続講義の1回ですが、
明日の分は特別に単発申込みもできますので、
興味のある方はぜひお集まりください。

 お申込みはこちらから。

講義では、
安保法制懇の報告書、15日の首相会見などについて、
分析をしてみたいと思います。

政府関係者の方にも参考になるお話になるかと思いますので、
現役閣僚の方は20%割引、
特に勉強して頂きたい安保法制懇のメンバーの方は40%割引、
そして、内閣総理大臣の方は、なんと50%割引で聞けますので、
ぜひ、こちらから。