HKさまより、『急所』第四問妄想族追放条例について、
次のようなご質問を頂きました。
例によって、まだ解いてないよ。読みたくないよ。
という方は、解いてから読んでください。
①税関検査で示された要件(解釈内容の明確性、解釈の容易性)が、
「合憲限定解釈の一種」(『憲法の急所』p161)の要件なのか、合憲限定解釈一般の要件なのか
②「合憲限定解釈の一種」と合憲限定解釈の間にどのような関係があるのか
の二点で混乱しています。
再び漠然とした質問で申し訳ありませんが、ぜひご回答よろしくお願いします。
どうもありがとうございます。
ええとですね、急所161頁の趣旨は、こげなものです。
まず、
関税法「風俗を害する書籍」とか、道交法「交通秩序」とか、
そうした、問題の行為との関係で、直知可能なほど明確でない法文というのは、
ふつうは、問題の行為との関係で、
解釈A ①直知可能なほど明確な定式を示す②容易な解釈
(「風俗を害する書籍」とは、わいせつ物を言う。
判例はこの解釈、明確で容易だとする。)
解釈B ①直知可能なほど明確な定式を示してはいるが、②容易でない解釈をすることも、
(「風俗を害する書籍」とは、春という単語が三回以上登場する書物をいう。
明確な定式だが、そんな解釈は一般人には理解不能。)
解釈C ①直知可能なほど明確でない定式を示す解釈
(「風俗を害する書籍」とは、モケケピロピロをすることをいう。
示している定式自体、全く意味不明。)
など、様々な解釈をすることができる条文です。
この場合、解釈Bや解釈Cをすると、不明確な法文により処罰されない権利の侵害になるので、
不明確な法文により処罰されない権利を侵害しないような、合憲限定解釈すると、
解釈Aが採用される、ということになるでしょう。
また、問題の法文が
解釈Aのような①②を充たす解釈ができない法文だった場合には、
その法文の適用を受けることが明確な行為との関係で有効、
その他の行為との関係では無効と処理します。
例えば、「土足厳禁」という規定については、
「外履き」で入ることがアウトなのは、
解釈しなくても、あるいは、「土足」を明らかに汚れた靴ないし足で、
と解釈すれば分かる。
しかし、埃のついた裸足で入ることは、アウトかどうかよくわからないし、
「土足」を他の言葉で言い換えるのは難しい(とする)。
また、「土足」を外履きに限定する解釈もムリ(だとする)。
この場合には、「外履き」に適用される部分を除き無効と処理。
そして、およそありとあらゆる行為との関係で不明確な
「レムカカタプモケを禁ず」などの法文は、法文全体が違憲。
こんな感じになります^-^/。
PS
HKさまより、ご質問の続き。
ところで話が変わるのですが、
ブログや急所を拝見して、木村先生のお考えは
高橋先生の「適用上判断」をさらに深化させたものなのかなと感じました。
具体的に言うと、実体判断を通じて憲法上保護された事実を画定した上で
違憲範囲を画定する点に「適用上判断」に通ずるものがあると思いました。
その上で法令の具体的処理方法について明示されている点で、
木村先生の考えはさらに「深化」していると感じました。
(もしこの考えが木村先生のお考えと相違していたらご指摘お願いします。)
どうもありがとうございます。
そのように評価して頂きうれしいです。
私は、憲法判断の方法に関する学説について、
基本的に芦部先生や高橋先生の見解を誤りと断じ、
新説を述べる、というつもりで、書いてはおりませんで、
両先生の発展された学説のあいまいな部分を整理し、
概念を明確にした改良型を提出したいという気持ちで書いております。
なので、おっしゃる通りに評価していただけますこと、とてもうれしいです。