さて、satoimokoさんから、平成21年の試験問題の考え方について、
コメントをいただきました。
平成21年の問題については、試験実施直後から、
LSでたくさん質問をいただき、
ブログ開始後も、ほぼ月に一回のペースでコメント欄に質問が、
LS講義でも、ほぼ毎学期質問を受けます。
というわけで、
同年度の問題は、他の年度に比べて難易度がかなり高かったと思われ、
今後個別に質問に対応するよりも、
私なりの解説をまとめておいたほうがいいだろう、ということで
ちと連載してみたいと思います。
さて、どんなもんだろう?と思って、
平成21年度の出題趣旨・採点実感を細かく読んでみましたが、
正確に読み解くのが難しい。
ところどころ、私も何を言いたいのか、分からん。
と格闘しているうちに、ピンとひらめきました。
多分、(私にとって)自然な処理をしていけば、
採点実感出題趣旨先生の言うとおりの議論になる。
というわけで、以下、私にとっての自然な思考・処理の流れを
示していきます!
さて、本問の特徴は、
県立大学の教授が、職務として行っている研究について
大学から停止命令を出された、あるいは
職務規定に違反したことを理由に懲戒処分を受けた、
という事案だという点です。
採点実感などの書きぶりからするに、
試験委員は、この点を踏まえた論述を求めていますが
(この点は、憲法判断のために、
極めて重要なポイントなので、そこに配点するのは当然だと思いますが)、
どうも、ここをしっかり把握していない答案が多かったようです。
ちょっと整理しましょう。
県の職員Aがいて、ある業務のやり方(例えば、環境補助金)について、
上司Bから停止(例えば、環境改善効果のない特定事業への補助金停止命令)
の指示を受けた、命令を受けた、とします。
ここで職員は、補助金を配布する「自由」の主張ができるでしょうか?
ちょっと変な感じがしますねえ。
この変な感じを、「自由の問題?」としておきましょう。
あるいは、こんな例はどうでしょう?
市の職員Aがいて、生活保護の支給を担当していた。
Aの上司Bは、生活保護受給者Cが、
市の政策を批判するデモに参加していることを見聞きし、
それに対する反感から、
Cへの生活保護支給を停止するようAに対し命令を出した。
さて、ここでは、さしあたりAさん個人の利益は問題になっていませんね。
では、AさんはCの政治活動なり生存権なり、
「Cの権利侵害」を理由に、停止命令の違法を主張し、
停止命令の取消訴訟を提起できるでしょうか?
うーん、C自身が市に対して権利主張をすることは当然可能ですが、
Aさんの取消訴訟は、なんかできない気がしますよねえ。
この変な感じを「第三者の権利主張?」と呼びましょう。
実は、あの問題は、県(立大学)の職員(教授)に対する
業務(研究という業務)停止命令なので、
出題趣旨が求めているような議論をしようとすると、この
「自由の問題?」と「第三者の権利主張の問題?」の
二つをクリアする論証をせにゃならんわけです。
ここ、つまり本件特有の事情を無視して、
いきなりXの自由じゃー!と突撃すると痛い目に会いますよ、
ということを採点実感先生はおっしゃっているようです。
というわけで、この問題、初手が極めて大事です。
どこから指しますかねえ?
(つづく)