木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

ご質問について

これまでに、たくさんのご質問、コメントを頂きました。まことにありがとうございます。 最近忙しく、なかなかお返事ができませんが、頂いたコメントは全て目を通しております。みなさまからいただくお便りのおかげで、楽しくブログライフさせて頂いております。これからもよろしくお願い致します。

シューベルトに会ってきた(2・完)

2012-12-31 12:56:28 | 音楽
さて、長らく途絶えていた記事の後半部分です。
高校生1さまのリクエストもいただき、執筆してみました。
筆不精解消のきかっけをつくってくださった高校生1様に感謝いたします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて、およそ一年ほど前に、
わたくし内田光子シューベルトコンサートにいってきたというお話を書きました。

休憩の前の第20番が終わったところで、記事がおわっていたので、
休憩時間から。

すさまじい名演奏の後、休憩に入ります。

会場では、CD販売があり、前半の二曲
シューベルトピアノソナタ第19番・第20番のCDは飛ぶように売れて行きます。
(本人のサイン付)

さて、私は、ふらっとホールの中を散歩したのち、
席に戻ります。

やがて休憩時間終わりの鐘がなり、
会場は満席。

やはり、なんとなく暖かい空気が漂っております。

やがてシューベルト=内田先生が降臨されます。


内田先生は、前半でかなり気持ちも盛り上がってきたのか、
大変はつらつとした様子。

そして、第21番が始まりました。

例によって、静かに、着実に曲ははじまります。

これまた前半と同様なのですが、
私は、この曲をCDで聞いたときには、
なんかこう、気持ちよく天上の世界にのぼっていこうとすると、
急に現実に引き戻されるという感じで。


えーと、たとえますと、
材料を切って、炒めて、道具を洗い物して、
ようやくシチューを鍋にかけて煮はじめて、
ほっと一息してお茶を飲もうとしたら
急に鍋が吹きこぼれて、あわただしくなって、
おちついて、またお茶を飲もうとしたら、また
鍋が噴き始めて、みたいな、そんな感じ。

伝わっておりますでしょうか。
この喩。

とにかくシューベルトは、
鍋でぐつぐつ煮込む料理が絶対好きだったに違いない
みたいな、そんなイメージだったのですが、
演奏者の顔を見ることのできる席で
生の演奏を聞くと、音楽教育をまともに受けたことがない
いや、学校の音楽教育があまり好きではなかった
私の身分であっても、
曲想とはこういものか、というのが何となくわかってきます。

第一楽章から、この行ったり来たりする感じ。

とかくクラシック音楽というと、
日常のうだうだとは切り離された崇高な悩みを語っているような
気もしてくるのですが、
内田大先生の演奏に触れると、
結構、日常のうだうだというか、人生の日ごろの悩みみたいなものの
近くで聞こえてくる音楽なのではないか
という気がしてきます。

急に身近になるシューベルト。
やあ、フランツ。君も、鍋の吹きこぼれの件で悩んでいたのかい?
みたいな。いや、いくらなんでもそんな卑近な悩みではないか。

さて、第二楽章。重たく悩んだのちに、第三楽章。
案の定、シューベルト先生は、ふっきれたように踊り始めます。

なんなのでしょう。
ふつうに弾くと絶対、品のないばたばた感が出るところ、
気品に満ちた、しかし明るく楽しい演奏が続きます。

日々、忙しく、ばたばたとした生活の中でも、
気品を持って生きることができる。
そんなメッセージを受け取ったわたくしでした。

そして、第四楽章。
第三楽章をうけつぎながら、
気品あるばたばたメロディー
もはや、なんじゃそりゃ、しかし、そうとしか表現できない
が続く中、急に、重たく響き渡る例の箇所。
ズドーンときます。

そして、重たい思考と、気品あるばたばたメロディーが
対話を続けます。

ここまで書いてきましたように、
この後期三大ソナタから、わたくしがうけとったメッセージは、
「日頃忙しい忙しいとばたばたしているのが人生というものだけど、
 そこに誠実さと気品さがないのだとすれば、
 あなたには何かしら欠けているものがある」
という感じでした。

自分で書いていてもよく分かりません。
しかし、こうとしかかけない。
そして、次の日から、また、頑張ろうという強い志を持つことができました。


そして、気合の入りきった演奏は、フィナーレに向かいます。
第21番は、終わり方がすごいのです。
「だ、っだ、だーん」とあっさり、しかし力強く終わります。

曲に合わせて、内田先生も「さー、また、あしたから、がんばるわよ」
みたいな顔で、誇らしげに最後の一音を鳴らします。

今度は、あのあっけにとられた「間」ではなく、
会場満場一致の大拍手。
深々としたお辞儀。

そして、一度舞台そでに帰り、戻ってきたところで
会場総立ちです。
私、恥ずかしがり屋さんで、あまりコンサートで
スタンディングってやらないのですが、
その日は、立たない人が圧倒的少数派

本当に素晴らしいコンサートでした。


はい。(1)の冒頭で書きましたように、
ことはシューベルトのピアノソナタです。
おそらく、
読者のほとんどの方がシューベルトのソナタについては
一家言お持ちで、
「貴様!シューベルトについて語るなら
その覚悟はあるのか!」とお思いでしょう。
全く文句はございません。おっしゃる通りです。
しかし、語らずにはいられないのです。どうぞお許しください。


私の両親は自慢屋さんで、しばしば、自分の世代しか体験できない体験を
自慢しておりました。

「ふーん、お前の世代は、『2001年宇宙の旅』を
 テレビ画面で見るのか。みじめだなあ。」

「ふーん、お前は、古今亭志ん生を録音でしか聞けないのか。
 ははは。俺は、この目で動く志ん生を見たのだ。
 ざまあみろ。」(いや、これは山藤章二のセリフだ)

なんともうらやましい気分でしたが、
ついに私も、心より、次のように言えます。

「ははは。おぬしらは、内田光子のシューベルトをコンサートで
 聞いたことがないのか。
 私は、あの伝説のシューベルト後期三大ソナタコンサートに行ったのだ。
 ざまあみろ。」


・・・・・・・・・・というわけで、みなさまも、
後の世代に自慢できる体験、ぜひ蓄積してください。

ではでは、本年中はお世話になりました。
良いお年をお迎えください。

今日も仕事をしてみました

2012-12-29 21:11:08 | ちょっと一言
今日は、著者校正の仕事を三本。

校正というのは、本に印刷される形に段組みされた
原稿(ゲラ)を読みながら、
最終チェックをするというそういう作業です。

著者の仕事の最終段階ですが、
私は、この段階の仕事は今一つ苦手です。

自分で赤を入れたものを封筒に入れると、
もうどうにもこうにも修正できないのです。

そして、今日、年賀状が満載されたポストに
封筒を投函してきました。

さようなら、原稿たち。もう私の手の届かない所へ行ってしまいました。

          ・・・・・・年末モードで、なんだか文章がいつにもましておかしいです。

年末の追い込みです

2012-12-28 21:41:02 | ちょっと一言
お久しぶりです。

長らく更新が滞ってしまい申し訳ございません。
現在、公務員の政治活動規制の決定版原稿の校正、
法学教室連載最終回の校正がつかえており、
先回しにしてきた憲法判断の方法の決定版原稿の締め切りが怒涛のように近づいてきており、
その締切は、まさに大学入試センター試験前日。

戦う受験生のような気分です。

そこで、今日は、大学を受験する方に向け、心得を書いてみたいと思います。

このブログの読者の方には、おそらく全く関係のないことでしょう。
昔を懐かしんでお読みください。

心得その1 風邪をひかないように祈る

心得その2 入試前日におなかをこわしそうな食べ物を食べない。

心得その3 ダジャレは、良くても人に笑われるだけで、ひどいときは滑るのでできるだけ言わない。


・・・何を言いたいのでしょう?
あまりの意味のなさに、自分でも唖然としました。

師走というだけあって、教師という職業の人は、
他の職業に比べて特別忙しい12月。

ゴールドシップの激走に元気づけられ、追い込んでいきたいと思います。

とりあえず、このブログで、なんとかメイキングオブキヨミズを本当にメイキングするところまで
連れて行きたいと思います。

ではでは、年内にまだ何度か更新しますので、
あえて、良いお年をとは言わず、アデューという方向で落としておきたいと思います。


ジュンク堂イベントについて

2012-12-21 16:24:14 | ちょっと一言
お久しぶりです。
今週は年末最後のバタバタで、なかなか記事を更新する時間がありませんでした。

私は教師と言う仕事をしておりますが、
今年は何かと忙しく、「師走」といわれても
「普段はひまな先生も走り出す月」という感じがあまりしませんで、
いっそのこと、1月から師走ということでよいのではないか、と
訳のわからないことを考えた今日この頃です。

そういえば、
今年は、辰年で、友人のトミナガは、渡辺竜王の顔写真の年賀状を送ってきましたが、
来年はヘビ年。
一体全体、どんな写真になるのか、楽しみです。
おそらく、川口浩探検隊、二頭ヘビかぱらなーごではないか、と期待しています。


・・・・・・・・。



ジュンク堂での光嶋先生との対談イベント、多くの方に足を運んでいただき、
まことにありがとうございました。

どうも、サインというのは慣れない作用で、
すごく緊張しておりました。

サインを依頼して下さった方、本当にありがとうございました。

また、対談後、感想を寄せて下さるメール、多くの方から頂きました。
本当にありがとうございます。
急所もキヨミズ准教授も、愛される本になったなあ、と
とてもうれしい気分でした。


直接、読者の方が暖かい言葉をかけて下さる機会がありますと、
大変元気がでます。
今後も頑張ろうと思います。


メイキングオブキヨミズ(6) 法学入門・・・ハードルが高い・・・

2012-12-13 09:54:01 | 作品情報 キヨミズ准教授
ご無沙汰しております。
教師という仕事をやっておりますが、今年は、いろいろと忙しく、
「師走」という言葉の由来が今一つ納得できない今日この頃。

おかげさまで『キヨミズ准教授の法学入門』みなさまに
ご愛読いただきまして、
多くの方にブログやツイッターなどでコメントをいただいております。

『憲法の急所』の頃から目を付けてくださっている皆様の
ブログでも、コメントをいただきました。

『憲法の急所』や「憲法学再入門」についても
いつも暖かいコメントを寄せてくださる
Rockで怠惰な1日さま、どうもありがとうございます。

私も、キタムラ君や岩渕さんのその後が気になっております。


『アニメキャラが行列を作る法律相談所』でおなじみの
ronnor様
誤植や誤りのご指摘ありがとうございます。

文献案内まで含め、
わたくしが、法学通の皆様に発信した「裏のメッセージ」を
すべて読み取ってくださっております。


また、岡山大学の井藤先生は、
法科大学院生の皆様におすすめしてくださり、
まことにありがとうございます。

確かに、あの本に書いたようなことは、
司法試験受験生にとっての基礎体力のようなものかと思い、
意外とああいうことを見落としていて、
点が伸びないということ、あるやもしれません。


まことにありがとうございました。

******************

さて、メイキングオブキヨミズ。
そんなわけで、私は、「法学の考え方」についての
依頼をいただいたわけであるが、
この依頼がなかなか曲者である。

柿内さんと平林さんのオファーは、
私の専攻する憲法学の入門書、ということではなく、
「法学」の入門書、「法的思考とは何か?」を論じる本
ということであった。

全国の大学で「法学入門」というタイトルで教えられている
内容である。

この法学入門であるが、上に紹介したronnor様のブログでも
書かれているように、
ただでさえ抽象的な法学を、さらに抽象化して
一般論・原論を教えるわけで、
数学基礎論もびっくりの難解で抽象的な講義になることが多い。

その内容も、法源と法命題、法段階説における命令の位置づけ、
根本規範の存在形式、解釈の類型論といった、
法学者や法律実務家でも、普段あまり考えないような項目が並ぶ。

法学入門を教える大家が、あまりの退屈さに
休講を決意し、喫茶店に入ったところ、
講義のあまりの退屈さに欠席を決意した受講生とあって
師弟の心の交流を行ったという話はあまりにも有名である。
       (長尾龍一『法哲学入門』参照)

というわけで、これを淡々と描いても
恐らく星海社様の経営に悪影響を与えるだけに終わるのではなかろうか、
という不安がよぎった。

しかし他方で、「法学入門」のハードルの高さを知らない
柿内さん、平林さん(お二人とも法学部出身ではない)は、
きっと面白い話になるだろうと、気楽にニコニコしている。

どんな本を書いたもんか・・・。
こうして、私は、しばし長考に沈むことになった。