Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

初めてロシア文学を読む君へ(3)~ゴーゴリ~

2008-10-27 01:16:55 | 文学
取り立てて書くネタのないときは、この記事を書いている気がします…

ということで、これから本格的にロシア文学を読んでいこうと思っている人に向けての読書案内。前回までで、ドストエフスキー、プーシキン、トルストイ、チェーホフを紹介しました。ところで、これはトリビアなのですが、チェーホフの『狩場の悲劇』という小説が、実は文庫になっているということを最近知りました。中村白葉訳ですから、かなり古いものです。その名も『猟場の悲劇』。知り合いのロシア文学の先生にこのことを話したら、知らなかった、と言っていました。しかもチェーホフを専門に研究している先生です。どれだけ知られていない事実か、これで明らかでしょう。この文庫化は実に驚くべき事実なのですが、チェーホフに疎い人にはあまりショッキングではないかもしれませんね。でも、あの『狩場の悲劇』が文庫とは…信じられない気持ちです。

さて、これら四人の大作家を読んだ後にお薦めしたいのがゴーゴリです。この作家も大作家ですが、日本での知名度は先の四人に比べると劣っていることは否めないでしょう。その作品が最初に翻訳された明治時代から、有名でも無名でもない、といった宙ぶらりんな存在感でした。けれども、ロシア文学を本格的に読もうとするなら、やっぱりゴーゴリはある程度は読んでおきたいところです。そこで、お薦めの本。

講談社文芸文庫の『外套・鼻』がいいでしょう。「外套」と言ったら岩波文庫版、といった固定観念は捨ててしまいましょう。やはり、翻訳が古すぎます。講談社版は、二十世紀の研究成果を踏まえた翻訳になっています。ゴーゴリの小説は「語り」のおもしろさが重要だということが言われていて、その点に配慮した翻訳になっています。岩波文庫では、そのへんの妙味を味わうことができません。一番いいのは『ソヴェート文学』に掲載された江川卓訳(なんと落語調に訳してある)を読むことなのですが、これは一般の人にとって入手困難でしょう。

それから岩波文庫の『狂人日記』を読みます。表題作の「狂人日記」は、講談社の『外套・鼻』に収録されていますが、この岩波文庫には他に「ネフスキイ大通り」と「肖像画」が収められており、この二作目当てです。

そして岩波の『検察官』。ただ、この作品は、光文社の古典新訳文庫で『査察官』として新訳されており、そちらの方がいいかもしれません。もともと「検察官」という訳語は誤訳だと指摘されていて(例えば工藤幸雄に)、「査察官」に改名するべきだ、と言われていたのですが、ようやくそうなりました。

最後に長編『死せる魂』を読みます。遍歴小説です。長いですが、やはり読んでおきたい小説です。
ゴーゴリの小説は他にもたくさんあり、全集で読むことができます。ゴーゴリの作品にははずれがなく、何を読んでもそれなりにおもしろく感じることでしょう。

ちなみに、ぼくが大学二年生のとき、何を思ったか、テスト直前の時期に『ゴーゴリ全集』を読破することを思い立って、全て読んでしまいました。テストの結果は(幸い)覚えていません…

でもまあ、無理に全集を読むことはないと思います。上に挙げた作品で十分でしょう。

ゴーゴリを読んだ後は、どうする?これで、一般の日本人でも知っているようなロシア作家のコーナーは終わりです。ここからが本番です。まだ著名な作家は残っていますが…例えばゴーリキー…この人は20世紀なので、読むのは後回しにします。まず19世紀の作家から攻略していきましょう。レールモントフ、ガルシン、コロレンコなどが次のターゲットだ!