ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

薬が市場に出るまで 臨床試験Ⅲ

2015-05-28 10:30:01 | 
このタイトルのシリーズは、どうも時間がかかりなかなか進まず、前回のフェーズⅡからまたずいぶん時間がたってしまいました。フェーズⅡで副作用などの問題も出ず、統計上の有効率が既定の値を超えると、いよいよ最後の薬効比較試験であるフェーズⅢに進みます。フェーズⅡで良い効果が出ても、新薬として出すからには既存の医薬品と比較して、なんらかのメリットがないと出す意味がありません。そこで既存薬との比較試験が必要となるわけです。比較して統計的な有意差を出す必要があるので、医薬品の種類によって異なりますが、やはりこれもかなりの規模の試験となります。

このフェーズⅢにはいろいろ問題点があります。まず比較のための既存薬として何を選ぶかという点です。当然のことながら、その新薬の分野で、最もよく効き多く使用されている薬が望ましいのはもちろんです。単純に比較のためというだけでなく、もし順調に進み市場に出るためには中央薬事審議会に申請し、その認可を受け薬価が定められる必要があります。このときの薬価は国が決めるという制度になっています。このあたりは日本の薬価制度として詳しく書くかもしれません。薬の値段を国が決めますが、なるべく高くしてほしいのは当然のことです。非常に単純化すると、このときの薬価は、比較のための対照薬として使った薬の価格+アルファとなることが多いようです。つまり対照薬にはなるべく薬価の高い薬を使った方が、その後の展開は良くなるということになります。こういったことを総合して、例えば製薬会社A社のBという薬を使うことに決めるわけです。

ところがここで問題が発生します。この新薬が発売になると、Bという薬より優れた薬ということが伝わってしまいます。そうすると当然Bとの競合になりますが、医者も新薬を使ってみようということで、Bの売り上げは大幅に低下してしまうわけです。いわばA社は明らかに自社の不利益なる手助けをすることになります。実際に強制力はありませんので、A社にお願いして、Bの原末を提供してもらうわけですが、拒否されても仕方がない面があるわけです。そこでA社と交渉するわけですが、通常はA社も何種類か開発中の薬剤がありますので、それのフェーズⅢの時に、自社の販売中の薬剤を対照薬として提供するといったような交換条件で決着がつくようです。

つまりこのような交換できるような薬を販売している会社ではないと、良い新薬を開発しようとしても、対照薬が見つからないという事態になってしまうわけです。こういった点も含めて薬業界は再編が進み、どんどん巨大化する傾向にならざるを得ないのかもしれません。
臨床試験の裏話的なことで終わってしまいましたが、この続きはなるべく早く書くことにします。