ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

薬が市場に出るまで 臨床試験Ⅱ

2015-05-06 10:13:24 | 
前回から少し時間がたってしまいましたが、薬の臨床試験であるフェーズⅡの続きです。前にも書きましたように、フェーズⅡは実際の患者さんに新薬を投与して、有効率(どの程度の患者さんに効果があったか)を調べるステージです。
対象は入院患者ということになりますが、病気の種類によらず、入院しているということはやや重症であったり、慢性化して治りにくい患者さんが多いわけです。つまり飲み薬などで、それほど重症ではない病気を目的にしていても、臨床試験ではいわば治りにくいような患者さんが対象となってしまうわけです。

もう一つ投与の確実性の問題も出てきます。注射薬であれば点滴に入れるか、注射をするかにかかわらず、確実に投与できます。しかし飲み薬の場合は、患者さんに新しい薬だから必ず飲むようにといっても、飲み忘れなどが出てきた場合は、把握のしようがないわけです。
このフェーズⅡの目的は、薬が効くかどうかを調べるわけですが、もちろん副作用の問題もあります。やはり病気になると、体全体の機能が低下していますので、健康な人では問題なくても、何らかの副作用が出る可能性が高くなっています。こういった点をすべて含めて検討するわけです。

なお抗がん剤の臨床試験では、フェーズⅠを行いません。抗がん剤の場合は、ある程度の副作用は避けられないものですので、健康な人に投与すると、副作用の危険性が出てしまうわけです。抗がん剤の臨床試験は、やや特殊な進め方になりますが、その他の薬の場合はほぼ統一された基準で行われます。

このように実施されるフェーズⅡの有効率が、どの程度になれば次のステップに行くかは、薬の種類によって異なりますが、一般的には60%程度が一つの目安になるようです。よく効く薬であれば、ほとんどの人が治るという印象があるかもしれませんが、病気というのはそれほど単純なものではありません。特に入院するような病気の場合は、複合的な症状が出てしまうことがほとんどです。例えば心臓病で入院した人は、それに伴い他の臓器も影響が出てくるケースが多くなります。ですから心臓病が改善したとしても、他の臓器がよくなるにはそれなりの時間が必要になったりするわけです。特に重症であればこの傾向は強くなり、憂苦率の判定が難しくなるわけです。

こういう感じで臨床試験を行い、統計的に病気によって定められた有効率以上の効果が出れば、次のステップであるフェーズⅢ、薬効比較試験に進むことになります。