渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

研げば減る 減らねば研げぬ何物も

2021年07月01日 | open



刃物はどんな物であっても研げば減る。
微細な減りだが、年月が経てばどんどん
刀身は痩せて細くなって行く。
このナイフもフクラが枯れて来てカマス
のようになって来た。ノーマルはもっと
でっぷりとしたRだった。

斎藤一「どこに刃こぼれがあるんだ」
吉村貫一郎「はぁ。だいぶ痩せまして
    ねぇ。
この刀も」



新選組の吉村貫一郎の性格を表す重要な
シーンだ。

刃こぼれなどはしていない。
隊内の罪人の首を刎ねた時に無理に斬った
ので刃こぼれがしたと称して土方から研ぎ
代金13両
を公的にせしめた直後のシーンだ。
吉村が守銭奴のように金に執着するのは、
故郷の南部藩に残してきた貧しい妻子に
全額仕送りするためだった。
実在の人物だが、吉村貫一郎のキャラクタ
は司馬遼太郎が創った。短編のごくわずか
な編の登場人物だ。
それを浅田次郎は一大叙事詩のような大作
の小説までふくらませた。本作品『壬生
義士伝』の原作小説は筆力が頭抜けている。
決してお涙頂戴ではないのに目頭を熱く
させる良作だ。
良い小説とはかくありき。
一方、作品の中で現存する人間を揶揄中傷
こけ下ろして嬉々としている小説などは
下の下の下、筆者の下劣さ自己暴露以外
のなにものでもない。
そういう物を書く人間は文壇から排除
されて当然の事なのだ。

刃物は包丁もナイフも日本刀も、使えば
研がねばならない。
研ぐと刃物は確実に身が減る。
しかし、研がない刃物は刃物の生命が
無いも同然。常に切れる状態にしておく
のが刃物本来の姿だ。
ただ、日本刀の場合は、戦闘前には築山
等で刃を引いて刃こぼれを防止させる。
剣戟で刃を合わせるとボロボロになって
刃先が火花と共に欠損して飛び散るから
だ。それが進むと刀の刃部はささらの
ようになってしまう。
それを少しでも防止するために、斬り合い
の前には刀の刃を軽く引くのである。
それでも十二分に剣の技術により敵を
斬り伏せることは可能だ。

完全刃引き刀による私の試斬。(置き斬)
誰にでもできる事ではない。技あるゆえ
刃引き刀で置いただけの畳表が切断できる。


 研げば減る

 減らねば研げぬ何物も
 減るを嫌いて
 研がぬはなかり

この記事についてブログを書く
« おさよちゃん寝る | トップ | フライフィッシング・キャンプ »