渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

キューケース

2022年10月10日 | open
 
 
先週末、本ハギのハスラーキュー
はこれに入れて持って行った。
1バット2シャフトの三角おにぎり
形のハードケース。ベルギーが
んだ歴史的名銃FN FALのフォア・
アーム形のケース。
中身はキュー1本だ。
ブレイクもプレーもキュー1本。
1980年代中期までのスタイル。
 
ポール・ニューマンがアカデミー
主演男優賞を初めて受賞した映画
『ハスラー2』(1986)は、日米で
空前絶後のポケット・ビリヤード
ブームを発生させた。
日本では大型ビリヤード店の待ち
時間が8時間という記録も残した。
一般店舗でも、開店前から外に
長蛇の列だった。
当時の高校では、クラスの男子の
9割以上程がビリヤードをやった
といわれている。
困ったのはそれまで玉撞きをして
いた撞球師たちで、一般店では
待ちの為玉撞きができなくなった。
それゆえ、常連客優先の華台も
老舗では確保されていたのがさら
強化される傾向を見せた。
どんなに混んでいようとも、常連
は華台でいつでも玉を撞けるよう
になったのもブームからだ。
都会の街中は飲食もできる店も
含めて玉撞き場だらけになった。
それが1987年。「プールバー」
なる造語と店舗も大流行になる。
それが2年程続いたが、超絶爆発
ブームはまだバブル経済であるの
に終了した。1989年には待ち無し
でどこででも玉撞きができる世相
になっていた。
大衆は飽きやすい。
特にブームに乗る動きでは、飽き
たらポイだ。どんなものでも。
バブル経済期に一番変わったのは、
街中の建物でも所得でもない。
女である。
浮かれた女性が大発生した。
車やお遊び種目を次から次に替
えるように、女が男をポイ捨て
する日本歴史の大変化が起きた。
全て金目当て。金と見栄と。
車での送迎専用男をアッシー君、
食事代を払わせる専用男をメッ
シー君、上場企業や高額収入の
男を本命君と呼んで、男を金目
当てで漁る女がドワッと登場し
た。それがバブル時代の最大特
徴だった。
当然、女性の手作りマフラー等
は完全死滅した。
その頃、撞球師たちは世相など
とは無関係でひたすら玉を撞い
ていた。ビリヤードなどはバブル
で浮かれた連中の「お洒落な」
お遊びではない事を知っていた
から。
だが、世の中はビリヤードがオ
シャレでトレンドでいけてる最
前線のアーバンライフを楽しむ
ヤングエグゼクティブのスタン
ダードだ、とするキャンペーン
で溢れ返っていた。
バブル当時玉撞きをやった人々
で今でも玉を撞くのは撞球師だ
けだ。ブームピーポーは何事も
継続などしない。
 
その空前絶後のビリヤード・ブ
ームを作った『ハスラー2』の
登場人物の全ては、使うのは
キュー1本だった。主人公たち
のみならず、アトランタ・
シティでのUPナインボール・
クラシック・オープン・トー
ナメントで世界王者スティーブ・
ミゼラクさえも。
無論、町のプール・プレーヤー
(全員賭け玉プレーヤー)も全て
1本のキュー。
ブレイク専用キューは、プレー
キュー保護の為にぼちぼち登場
していたが、まだ一般的では
なかった。ブレイクキュー使用も
破壊力を
求めてではなく、プレー
キューの
破損防止の為に使われて
いた。
まだジャンプキューはこの世に
登場していない。
ジャンプ踏み台代わりのボール
に当てて飛ばすのではない手玉
の単独ジャンプは通常できなか
った。
荒唐無稽なビリヤードマンガで
さえ「手玉の単独ジャンプ!?」
と驚異的に見られた時代だ。
 
間もなくシャフトでの手玉単独
ジャンプが簡単である事が知れ
渡って流行った。
すると全米でキューの全長制限
がルールで決められた。
それをクリアする為に短いバット
を繋いだ改造ジャンプキューが
登場した。
私は規制前からグランドマッセ
の空中ループフォームからダーツ
グリップによるショットで手玉
単独ジャンプをやっていたが、
私もすぐに改造ジャンプキュー
を作った。飛ぶには飛ぶが、
現代
のジャンプ専用キューとは
雲泥の
差だ。
その10数年後に樹脂タップが
登場し、飛躍的に手玉が飛ぶよ
うになった。
さらに樹脂先角一体型が登場し、
現代に至る。
 
現在では、ブレイクキュー、プレー
キュー、ジャンプキューを一つの
ケースに入れるのが主流だ。
プレーキューではスペアシャフト
も持つ。
ゆえにキューケースは2バット4
シャフトのキューケースが多い。
シャフト挿しにはブレイク用、
プレー用2本、ジャンプ用を入れ
る。ジャンプキューの短いバット
ケースの大きなポケットに
入れ
る。
それが世間一般での標準装備と
なっている。選手などは最低で
も2×4のキューケースを使用す
る。
 
ジャンプ&ブレイクという分解
できるキューも20年程前に登場
した。
便利なキューだ。
だが、ブレイクは良いのだが、
ジャンプに関してはジャンプ専用
設計されたキューよりは性能が
落ちるようだ。これはどのメー
カーの製品も。
アイアンでティーショットはでき
るがパターはちょっとね、という
感じか。
ゴルフはやるけど専門外なので
詳しく知らないが。
 
最近は「撞球師」でキュー1本の
を持ち歩く人はほぼ見ない。
絶滅危惧種というか、100%に限り
なく近い確率で絶滅している。
だが、たまには35年以上前の時代
心象風景を求めて、キュー
1本の
ケースを小脇に挟んで
撞球場の
を開くのもよいの
ではなかろ
うか。
悠久の時を刻むノスタルジックで
豊かな一日を堪能するためにも。

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