映画『ハスラー』(1961)を昨日観て
いた。
もう何度観たかわからない。
100回などではきかない。
ネットが無いビデオ時代には観過
ぎてテープがお釈迦になった。
ネットなどは世の中に無いどころ
かスマホは勿論、携帯電話さえない。
オープニングから36時間に及ぶ
エディとファッツの対戦終了まで、
セリフを全部覚えた。
ちょうど年上の相撞き仲間も鬼の
ように観まくって、同じあたりまで
台詞を覚えていた。
ネイティブ米語なのでヒヤリング
が覚束ない部分もあったが、私は
すべてノートに書き出した。
ネットさえないのでシナリオなど
は手に入らなかった時代だ。
何度も観ていたら、日本語字幕
スーパーはかなりの部分でテキ・
トウスケ先生である事が判った。
DVDが発売されてからも見まくった。
特に二枚組は日本語吹き替え(部分)
バージョンが収録されているのと、
製作者の全編解説、それと2000年代
に入ってからの出演者の製作秘話
インタビューなどが収録されて
いるのが秀逸だった。
だが、日本語の字幕は、かなりその
二枚組バージョンでもはしょって
いる。日本語吹き替えはいい線いって
るのだが、やはり一般人にも分かり
やすいように専用言葉は省略して
いる。
日本語字幕バージョンはいくつも
あるのだが、NHK BSで放送された
時の独自字幕がかなり正確だった。
笑えたのが、15回も世界チャンピオン
になったウィリー・モスコーニが
本作品の技術指導をしているのだが、
キャストとしても本人役で出演して
いる。
その世界王者を顎で使うのがミネソタ・
ファッツという設定だ。
その日本語吹き替えバージョンが
かなり笑った。
ファッツ「ウィリー。金を預かっておけ」
ウィリー「へい」
ヘイですぜ(笑)。
街のチンピラの返事だよ、これじゃ。
ここは、日本語の時代劇のように
「はっ」とかいう吹き替えにして
ほしかった(笑)。
そういう返事は、使い走りでJ.T.S.
ブラウンのバーボンを買いに行く
プリーチャーのセリフにしてほし
かった。
ただ、日本語吹き替えでは、ルイビル
のフィンドレーの屋敷でスリークッ
ションの対決をする時、パンの銅像
を指してフィンドレーは「ギリシャ
神話の半分獣の小僧」と説明して
いる。これは原語を大幅に変更して
いるが丁寧なセリフ改ざんとも
いえる。
あと、どうにも、ポール・ニューマン
の日本語吹き替えが、これまた街の
チンピラ風でいただけない。
対するファッツの日本語吹き替えの
声優さんのセリフ回しは完璧すぎる
ほどに違和感がない。ありゃ凄い。
黒幕マフィアのバート・ゴードン
の日本語吹き替えの声優さんの声色
や言い回しは原語の本人にソックリ
で、これもなかなかの声の演技だった。
で、映画を観ていて今更ながら気付い
た事。
エディとファッツは二人ともハーマン・
ランボウのキューを使っている。
1961年公開で撮影は1960年だろう。
まだバラブシュカは本格的なキュー
製作で名を成してはいなかった。
ウィリー・モスコー二が使用していた
ランボウ製カスタムを勝負師の二人
は使っている。尻ゴムのないキューを。
それで床をドンドンドンと叩いて
相手のナイスショットを称賛する。
そのランボウのキューなのだが、
映画を観ていると、シャフトが
やたらと太い。
ハウスキューの極太シャフトを
そのままぶった切りコンバージョン
にしたような感じなのだ。
だが、二人ともよくキューが切れて
いる。
トリックショットのシーンのみは
ウィリー・モスコー二がやった
手だけを撮影してエディのように
した映像だが、長尺シーンでは
本当にポール・ニューマンが撞いて
いる。
製作者によると、ポール・ニューマン
はど素人だったが、ウィリーの指導
でめきめきと腕をあげて大会に出場
もできる程にはなったという。
ニューマン自身も、変装して大学
のプールルームに練習に行っていた
りしたそうだ。
一方、ファッツ役のグレースンは
もう玉撞きがプロ並みにできる人
だったので、何の訓練も必要なか
ったという。
この上掲画像は、ランボウによる
ブランズウィック・コンバージョン
だが、二本あるうちの下のシャフト
がやたら太い。
これがオリジナルシャフトなので
はなかろうか。先角はかなり短いが。
上のトラ目のロングシャフトは後年
作のスペアシャフトだろうが、こち
らはかなり注目できる。
見るからに動きが良さそうな雰囲気
がプンプンしているのだ。
走る前から走る二輪のマシンが判る
ように、この上のトラ目シャフトから
は独特のオーラが出ている。
これは、できる。