渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

積層鋼材の包丁ならびにナイフ

2021年01月02日 | open



積層鋼材の包丁やナイフ、まったく刃物と
して意味ないですよ。
また、「ダマスカス」と銘打っているのは
すべて出鱈目のインチキです。
ダマスカス工法はロストテクノロジーで
あり、現代では一切再現されていません。
唯一一番近いのが日本刀の折り返し鍛錬
による鍛え肌ですが、どうやらそれも
ダマスカス工法と鋼材とは異なる。

包丁やナイフの世界では、知らない人が
多いことをいいことに、嘘八百を並べて
ゲテモノを製品化して、あたかも本物の
ダマスカスであったり、日本刀に準じた
工法であるかのような触れ込みをして
売りぬく贋物商法が大手を振っています
ので、十分にご注意ください。
ナイフや包丁などでも「日本刀の技法
による」などとの触れ込みで売られている
量産包丁などはぜんぶインチキ詐欺商品
です。
日本刀と同じ技法で作られた包丁は、
岡山の上田刀工や岐阜の高羽刀工たちが
作る包丁以外にはありません。
また福岡の四郎國光刀工も包丁は作り
ますが、完全に包丁としての作り方で
あり、日本刀と同じく材料を折り返し
鍛錬などしていません。

包丁やナイフの鋼が中心部にあるよう
な鋼材は「利器材」といって、日立や
他の鋼材製作会社が製造する時点で
鋼と地鉄が鍛着剤=フラックスで
貼りつけられて板状に圧延された鋼材
なのです。出来合いの板材なの。
従って、カネ駒の肥後守の「青紙
割込」というのも割込み鍛えなどは
しておらず、最初から日立のメーカー
でプレス接着された鋼材を用いている
だけです。割込みとは鍛冶職が合わせ
鋼を鍛着させた物のことをいいます。

また、積層材を削ると木の模様のような
ものが出てきます。
ナイフのハンドル材のマイカルタなど
はそうですね。
包丁やナイフでそのような積層材に
するのは、削ったにその木目のような
大肌を出すためです。
刃物としての効能は全く一切微塵たり
ともありません。
しかし、あのような刺青肌のような
物が好きな人は買えばよい。
ただし、「日本刀の技法で」とか
「斬鉄剣か」とかは、全部出鱈目の
大嘘の詐欺まがいな広告文句ですので、
決してその気になって騙されないよう
にしてほしいと願います。
無知に付け込んでの悪徳商法です。

あとですね、炭素鋼を中心に据えて、
両側を別素材で挟んだ利器材の包丁
は、そのつなぎ目の部分(カイサキ)
が必ず錆びてきます。フラックスが
悪影響を与えているからです。
研げばサッと錆は落ちますが、使って
いるとまた真っ赤にそこが錆びます。
1万円ないしそれ以上出してそのよう
な包丁なのです。
積層材や中心に鋼挟み込み利器材の
刃物の販売宣伝文句等にはくれぐれも
騙されないでください。
モリブデンバナジウムの牛刀あたりの
ほうが遙かにドンと高度な出来です。
積層材と中心部炭素鋼の利器材を使用
した包丁とナイフにはくれぐれも
ご注意ください。
きちんとした張り合わせを鍛冶職が
行なっているのは、伝統和式刃物鍛冶
と日本刀の刀鍛冶のみです。
工場量産刃物でそうした利器材と積層材
を使いながら「伝統の云々」を出している
のは全部100%悪意ある嘘です。

本物の日本刀の地肌。
(南北朝乃至室町時代/所有者・撮影私)

(戦国時代末期天正八年作/
所有者私・撮影町井勲氏)


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