渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

タイヤ ~ブリヂストン バトラックス~

2024年06月20日 | open




1983年。
誕生したばかりのブリヂストン
バトラックスを初めて履かせた。
現在に繋がる日本初の公道用
スポーツタイヤだ。
履かせてから皮も剥けた頃、
少し本気で走ってみた。
寝かし込みはスリックほど粘ら
ないが癖は無い。
だが、それまでのTT100とは決
定的に異なる挙動を見せた。
滑り出しがTT100のように感知
し易いものではなく、グーッと
粘ってしっかりグリップして
いる領域から一気にガッと滑る
ような特性だったのだ。
TT100の場合は、滑り出してか
らの接地感が感知し易く、スラ
イドもドリフトもコントローラ
ブルだった。
ダンロップTT100は
元々はレー
シングタイヤだ。

ケニー・ロバーツが世界で初め
てスリックタイヤをテストし、
それ以降、世界GPはじめ国内
レースでもレーサーマシンに
はスリッ
クが装着されるよう
になった。

だが、それ以前の70年代中期
までは、GPマシンでさえも
グルーブのあるタイヤを使用
していた。
そうした中でダンロップTT100
はレーサーにも多く装着される
良いレーシングタイヤだった。
私は1970年代中期の高校生時
代から自分の公道市販モデル
にもTT100を履かせていた。
非常にコントローラブル。
完全グリップ走法だけでなく、
任意にドリフトも使えたので
意図的なスライドによる操作
も多く使えた。
公道の峠でもコースでも、一番
速いのはグリップ走法だ。
これは1977年に筑波で三井晃
さんが私にとくとくと原理を
説明してくれた。
実際、公道で速さを求めても
詮無き事だが、二輪の制御=
コントロールという点では、
かつての六甲トレーニングと
同じく、公道でも大いにマシン
挙動の特性把握の勉強にはなる。
深く咀嚼して解析、理解をす
るならば。

バトラックス1型には結構手こ
ずった。
挙動変化がプログレッシブで
はなく、極めてピーキーな特
性変化を見せたからだ。
公道でさえそれだ。
これがスリッピーではない雷
オコシのようなハイグリップ
舗装のコースだとどうなのだ
ろうと思ったが、コースでバ
トラックスで走った事は無い。
コース用の開発だったのかも
知れないが、すでに市販車改
造クラスで人気上昇中だった
F3クラスなどではスリック
装着が常識化していたので、
実のところの狙いは、やはり
公道での使用を主軸においた
開発だっただろう。
バトラックス2型からは開発
もさらに進み、急激な滑り出
しは改善されたと耳にしたが、
私は2以降は試していないので
実際のところは不知だ。

タイヤは、寝かし込みで圧を
かけていった時、グーッとず
っと粘って路面を捉えていて、
それが段々徐々にグリップ力
を失う事を知らせるという、
グラフにすると接地感の
緩慢
な曲線カーブを描く変化
特性
の物が非常に運転手にと
って
は使い易い。

グーッと粘ってグリップして
いる感覚的数値がずっと同一
の領域のものから一気にズルッ
と来
るタイヤはかなり扱いに
くい。

突発的変化は接地感の鋭敏さ
を超える速度で動態が変化す
るからだ。ハイサイドなどは
そうしたタイヤと運転手の相

互関係の脈線が崩れた時に
発生する。

これらは、単にコンパウンド
の問題だけでなく、サイドウ
ォールの剛性や内部構造の
違いによってその態様特性
の差異が生じるので、タイヤ
の開発は絶対に人間の実走行
感覚をベースに科学力をそれ
に符合させる方向でないと、
良いタイヤは作れない。
1+1=2という単純なもので
はないのがタイヤや二輪車両
のステムやシャシであるので、
数値的な計算のみからは車は
作れない。
開発ライダーとテストライダー
は仕事の中身が異なるのだが、
いずれにせよ、人間が実際に
実走行して開発に深く関与し
ないと良い車は作れない。
機械や電子機器は物を製造す
るのみで、生み出す事はでき
ない。
人間が物を生産をする。
機械は機械を製造するだけで
生み出す事はできない。

タイヤによって二輪の場合は
大きく車の動態特性が変わっ
て来るので、タイヤ選びは車
体ユーザーの楽しみの一つで
もある。
オートバイのタイヤで一番
面白い部位は、サイドエンド
からやや中心寄りのあたり、
つまりエンドから2~3センチ
あたりだ。
このあたりで一番そのタイヤ
の性格が出る。
コースなどでは最エンドまで
すぐに使ってしまうが、公道
の場合は面圧をかけずにただ
寝かすだけでエンドまで使お
うとするのは危険。
エンドまで接地して削れてい
るのは、「結果的にそうなっ
た」だけであり、わざとでは
ない。

リアはエンドまで使っている
が、フロントはエンドまでは
使っていない。これはあえて
意図的にそういう乗り方をし
ているから。フロントを常に
一番グリップする部分を接地
グリップさせる転ばぬ走り方
の一つだが、この走りの操縦
の中身は複合的であり、やり
方について単純説明はできな
い。少し触れると、リアを外
に出す乗り方をすると、タイ
ヤはこのように減る。

 

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