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研究や教育等の記事を書いています。掲載内容は個人的見解であり、群馬県立女子大学の立場や意見を代表するものではありません。

講演「世界はどう動いているのか」

2022年01月06日 | 教育活動
昨年の12月に鎌倉女学院高等学校で、「世界はどう動いているのかー国際関係を競争と協調から考える―」と題する講演を行ってきました(講演の様子は、リンク先の「鎌女日誌」2021年12月17日をご覧ください)。これは同高等学校が開催する「国際学講座」の第2回目になります。この高校に在籍する1年生の約200名の生徒さんに、世界の動きを理解する思考の枠組みとしての国際関係論の基礎的理論について、近年の注目すべき出来事を事例に上げながら解説しました。

国際関係の競争的側面については、構造的リアリズムの基礎的なロジック、すなわちアナーキー(無政府状態)が国家にパワーの拡大を強いるために、主に大国間で安全保障をめぐる競争が起こることを、米中の戦略やクリミヤ併合の事例をひいて説明しました。国際関係の協調的側面については、リベラリズムの経済的相互依存論の分析枠組みを用いました。国際分業にもとづき国家が比較優位をもつ財を生産するとともに、自由貿易を通じてモノなどを交換すれば、その経済厚生が高まるため、こうした利益を犠牲にしかねない「戦争」へのインセンティヴは低下する。こうした国際協調のメカニズムは、自由貿易を促進するWTO(世界貿易機関)やRCEP(地域的な包括的経済連携協定)などの国際制度が、それが機能するのを助ける役割を果たすといったことをお話ししました。最後に、日本がとるべき「大戦略」について、わたしの意見を少しだけ述べて、講演を締めくくりました。講演後には、何名かの生徒さんが質問に来てくれました。

コロナ禍の影響もあり、国際系の学部に進学を希望する高校生が減少していると聞いています。わたしの講演を聞いて、国際関係論に興味を持つ高校生が、少しでも増えてくれたならば、これに優る喜びはありません。
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