野口和彦(県女)のブログへようこそ

研究や教育等の記事を書いています。掲載内容は個人的見解であり、群馬県立女子大学の立場や意見を代表するものではありません。

二つのビックリ

2016年12月30日 | スポーツ
年末のある日、ある群馬のスキー場に行ったところ、ビックリしたことが2つありました。1つは、ここ数年、見たこともないリフト待ちを目撃したことです!バブル期のスキーブームの際のリフト待ちを彷彿とさせるものでした。



写真左手奥まで、ズラリとリフト待ちの列ができています。一体、どうしたのでしょうか???昨シーズンの雪不足で滑りたりなかったスキーヤー・ボーダーが一気にくりだして来たのでしょうか?ウィンタースポーツブームの再来なのでしょうか?ナゾです。

もう1つは、スキーヤーが増えたことです。写真のスキー場は、例年、スノーボーダーが圧倒的に多いのですが、その日は、私が見た限り、3-4割がスキーヤーでした。

いずれにせよ、ウィンタースポーツが盛り上がるのは、嬉しいことです。リフト待ちは勘弁してほしいですが…。






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「外圧反応型国家」の集団的自衛権

2016年12月21日 | 研究活動
篠田英朗『集団的自衛権の思想史』(風行社、2016年)は、私を圧倒させる重厚で知的刺激に富む研究書でした。著者は、日本の集団的自衛権の問題を「国際協調主義」の文脈から読み解いていきます。そして、1つの結論を導いています。



「『最低限の自衛権』の概念によって…海外で行うような活動は、『最低限』とは言えず、日本国内で日本の事柄に専心することが『最低限』で合憲だ、という理解が憲法解釈の通説として広まった。そこではもはや国際協調主義にしたがった行動が憲法の理念に合致し、国際協調主義に反することが憲法の理念に反する、といった議論を進める余地は全くなくなった」(173ページ)。

鋭く厳しい重要な指摘です。著者の胸の内を吐露した「あとがき」の以下の一節は、私には平和構築を専門とする研究者の悲痛な叫びに聞こえました。

「2015年の安保法制反対デモの中に、『War Is Over. If You Want It』(1960年代末のベトナム反戦のメッセージ)というスローガンがあるのを、何度も見かけた。…もしもこのメッセージを現代で使うのであれば、アフガニスタン、イラク、シリア、リビア、コンゴ、その他の世界各地の戦争に対する政治的スタンスを問い直すために使うべきではないだろうか。この瞬間に現実に起こっている戦争について想像することも全くしないまま、切迫した訴えかけを持っていた過去のメッセージを、文脈を無視して簡単に借用していいのだろうか」(209ページ)。

篠田氏のこの問いかけは重いです。

国際政治理論研究者の端くれとして、私が本書から考えさせられたのは、日本は今でも「外圧反応型国家(reactive state)」だということでした。冷戦終焉により変化した国際システムおよび同盟国であるアメリカからの「圧力」を受け、特措法などを連発することにより、集団的自衛権の問題を乗り越えようとする日本の政策は、「外圧反応型国家」モデルにピタリと当てはまるように思いました。もしこの推論が正しければ、「国内の立憲主義の整備」が進み、それが「国際的な立憲主義」につながることには、日本がよほど大きな外部からの安全保障上の衝撃を受けない限り、残念ながら、あまり期待できないかもしれません。

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鎌倉女学院での国際学講座

2016年12月20日 | 教育活動
先日は、鎌倉女学院にて、「グローバル社会を理解するために」と題する講演を行ってきました。



今年は、海外の国際学の雰囲気に触れてほしいと思い、短い英語のビデオも見てもらいました。

明るく元気な生徒さんに元気をもらった講演会でした!

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高崎女子高校での模擬授業

2016年12月08日 | 教育活動
先月、高崎女子高等学校において、2年生向け模擬授業「謝罪の国際関係―歴史問題を考える―」を行ってきました。私の旧友の一人であるウォルター・ハッチ氏(コルビー大学)のTEDの講演ビデオ "Partnerships, not apologies, will secure peace in Asia" を見て、国際関係論の視点から、日中間の歴史問題を生徒さんたちと考えました。



同時に、国際関係論という学問の中身についてもお話ししました。米国やカナダでは、国際関係論は政治学の1つの分野に位置づけられていることを話すと、多くの生徒さんが驚いていました。確かに、日本の大学において、国際関係論を学べる学部は「国際系」に区分されることも多いので、こうした反応は、むしろ当然なのかもしれませんね。

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米軍基地の研究書

2016年12月07日 | 研究活動
安全保障の研究者として、北東アジアの米軍基地については、ある程度のことを知っていましたが、世界に数百も存在する「米軍基地」の全体像について、いかに無知だったかを以下の研究書で知らされました。デイヴィッド・ヴァイン、市中芳江・露久保由美子・手嶋由美子訳『米軍基地がやってきたこと』原書房、2016年です。



とにかく驚いたことは、アメリカが世界各地におびただしい数の米軍基地を展開してることです。その数は、著者によれば約800、海外基地に勤務する米兵や軍属、その家族などは約50万人。この数は、日本の自衛隊員の倍以上です。米国が払っている在外基地や軍の駐留経費は、少なく見積もっても年間716億ドルに達するとのこと。日本の防衛費を遥かに上回ります(世界第3位のサウジアラビアの軍事費に近い金額)。

ちなみに、著者のヴァイン氏は人類学者です。かれは、米軍基地の起源から現状、問題の分析まで、米軍基地の影響を受ける一般の人々の視点から、道義的憤りをにじませながら書いています。戦略的観点とは違った米軍基地の全体像を見事に描き出す筆致は読み手を引き付けます。

ただ、私にとって1つ残念だったのは、米軍の世界的「前方」展開と紛争や国際的安定の関係を「証明してみろ」(428ページ)と開き直ったように詰問しているところです(本書の原書副題は「いかに海外の米軍基地が米国と世界に害を与えているか」)。本書の他の仮説にも、同じ問いを投げかけられたら、はたしてヴァイン氏はどうこたえるのでしょうか。

米軍基地の功罪については、もっとバランスのとれた冷静な分析が求められると思った次第です。こうした難点があるものの、本書は、世界に展開する米軍基地を総合的に考察できる力作であるのは間違いありません。

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