野口和彦(県女)のブログへようこそ

研究や教育等の記事を書いています。掲載内容は個人的見解であり、群馬県立女子大学の立場や意見を代表するものではありません。

スキーが嫌になってきた人へ(更新)

2024年08月21日 | スポーツ
スキーのレベルを示す1つの基準として、SAJ(全日本スキー連盟)級別テストがあります。最高の1級をとった一般スキーヤーが、さらに上を目指す場合、テクニカル・プライズやクラウン・プライズを目指すことになります。プライズテストに合格するのは、かなり難しく、多くのスキーヤーは四苦八苦していることでしょう。そのプロセスで、スキーそのものが楽しめなくなったり、嫌になってきたりする人もいるようです。

私は、日本の基礎スキーやデモンストレーターの滑りを否定するつもりは全くありませんが、他方、プライズなどを目指すスキーヤーの多くは、日本の基礎スキーがスキーのすべてだと思い込んでいないでしょうか。日本のデモンストレーターのような滑りが、スキーの完成形であり、よりスキーが上手くなるには、そうした滑りに近づかなければならないと、頭から決め込んでいないでしょうか。そんなスキーヤーがいたら、ぜひ、以下の記事やレッスン・ビデオをみてください。

トップスキーヤーだった平沢岳さんが、自身のブログで「日本のテクニック・うそほんと」という記事を書いています。既にお読みのスキーヤーもいるでしょうが、未読の悩めるスキーヤーは、平沢さんが解説する滑り方を読んで、ゲレンデで実行してみてください。きっと、驚くほど楽にスキーが操作できることでしょう。さらに、滑走の安定感やキレも実感できるので、スキーがより楽しく感じると思います。

海外のデモンストレーターやトップレーサーは、上下運動をシッカリと使って滑っています。えっ「上下運動」と思った人は、論より証拠!まずは、スイスのデモチームの滑りをご覧ください。私からすると、このデンマークのデモの滑りは、これぞ、お手本でしょう。内倒せずに、高いポジションから、しっかりと両スキーに体重をのせて、板をたわませています。谷回りで山手が上がっていません。アルペン女王のミカエラ・シフリン選手の滑走も、YouTubeなどで見て下さい。上下動を巧みに使って、スキーの推進力をだしているのがわかるでしょう。これらもお手本にすべきスキーだということです。

自分もかつては上下動をなるべく使わずに滑ろうとして、うまくいきませんでした。ゲレンデでも、かがんで窮屈そうに滑っているスキーヤをよく見かけます。でも、ストレッチングの動作をすれば、スキーは、より性能を発揮することでしょう。オーストリアのスキースクールの小回りレッスンビデオでは、極端な上下運動をウォーミングアップで行うことを推奨しているくらいですから。

これでうまく滑ることができない場合、TDK スキーレーシングのトムさんのアドバイスを試すのもよいと思います。リンク先から彼のレッスンをビデオで受けられます。このテクニックは、むしろ上下運動を使わずに、カービング・スキーの性能を最大限に引き出して、キレのあるターンをすることを可能にします。ターンの切り替え時には、洋式トイレに座るような低姿勢になり、谷回りからターン・マキシマムにかけて脚を伸ばすことで、あたかも短距離走の選手がスタート時に最大の推進力を引き出そうとするのと同じように、外スキーの中心に圧を伝えるのです。これによりスキーがたわみ、エッジが雪面をかむことにより、キレイで推進力のあるターンになります。ただし、この滑り方をするには、ある程度の脚力が必要になります。

このテクニックを使って滑走する際に一般スキーヤーが注意することは、①内倒しないこと、②足首を緩めないで、常にスキーをタテに押し続けること、です。スキーを廻旋させようとする(ひねろうとすると)と内倒しやすくなるので、それは禁物です。スキーはあくまでもタテに使うものなのです。くわえて、外スキーへの荷重が弱まると、転倒するリスクが高くなりますので注意してください。また、切り替え時に足首が緩んでしまうと、後傾になってしまうので注意しましょう。ポジションが後ろになると、谷回りからターン・マキシマムにかけてスキーの中心に圧をかけられなくなり、気持ちよくスキーが曲がらなくなります。

2024年度も半分以上が過ぎました。暑い日が続きますが、そろそろスキーが恋しくなってきた人もいるのではないでしょうか。来たるスキーシーズンも、もっと自由に楽しみましょう!




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スキーのアレコレ

2021年10月26日 | スポーツ
2021ー2022年のスキーシーズンは、例年と同じように、富士山麓のスノーパーク・イエティのオープンで始まりましたね。来月の11月には、軽井沢プリンスホテルスキー場などが営業する予定になってます。私は、神奈川県在住中は、イエティのナイターでスキーシーズン・インすることが多かったのですが、群馬県に移ってからは、軽スキでの初滑りが恒例となっています。

スキーの楽しみ方は、この数年で変わりました。スキーを始めてから長い間、整地を爽快に滑る、いわゆる「基礎スキー」をメインにしながら、コブ斜面(不整地)にも、よく入りました。ただし、私は、多くの「基礎スキーヤー」がお手本にしている「デモンストレーター」のように滑りたいという願望はあまりありませんでした。自分の滑りを「型」にはめることなく、外足荷重や上下運動などの基礎動作を意識したオーソドックスで自由なスキースタイルを保ってきました。

基礎スキーに関しては、3シーズン前の2018年にSAJ(全日本スキー連盟)「テクニカル・プライズ」テストに合格することができました。このバッジテストはなかなかの難関で、「2浪」してしました。ただ、スキーに限らずどのテストも同じかもしれませんが、受かるとき時はあっけないもので、それまでの悪戦苦闘が嘘のように、加点での合格でした。大回り75点、小回り75点、不整地75点、総合滑降(フリー)76点の合計301点です(300点で合格)。

その後は、レーシング・スキーに魅せられて、「老体⁉」に鞭を打ちながら、菅平パインビークでのゲート・トレーニングに足しげく通いました。私がお世話になったチームは、アルペン・オーレさんです。ゲートトレーニングでは、朝一番の整った硬いバーンが最も快適に練習できるので、朝早起きなければなりません。ウェアーは、ぴちぴちのレーシングスーツです。マテリアルも、アルペン用のものにしました。スラローム(SL)では、基礎スキーとの兼用で、ロシニョールを使いました。本来ならば、アルペン用の板はコブ斜面の滑走には向かないので、そうしない方がよいのですが、あまりにも使用感がよかったので、この板で不整地にもガンガン入ってしまいました。その代償は、使用から2シーズン目での、エッジの剥離でした…。

ジャイアント・スラローム(GS)は、ブロッサムのGS用の板で滑りました。ブロッサムのスキー板を使っている人は、かなり珍しく、ごく少数でしょう。これはイタリアのブランドで、熟練の職人さんがすべてハンドメイドで製造しています。ブロッサムの板は、ビックリするくらいエッジが雪面に食い込み、しかも、たわみやすい優れものです。残念なことに、この板は、以前のブログで書いたように、ゲートトレーニング中に転倒した際、折れてしまいました…。ロシニョールのスラ板もブロッサムのGSの板も、とても気に入っていたのですが、悲しいことに、購入後、わずか2シーズンで「破壊」してしまいました。高くついたものです。



昨シーズンは、コロナ禍ということもあり、スキーの滑走日数は、それ以前に比べて激減しました。ゲートトレーニングにいたっては、所属先のチームがレーシングキャンプを中止してしまったので、SOAR Ski Racing さんのゲート練習に1回参加しただけに終わってしまいました。レーシング・スキーは楽しいのですが、年齢的な体力の衰えやケガのリスクを考えると、今後、ゲートに入ることは少なくなりそうです。基礎スキーについては、数年前にテクニカル・プライズを取得したことで、1つの区切りができました。今シーズン以降は、ケガに気を付けながら、フリースキーを楽しめたらよいと思っています。


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スキー板を2本もダメにしてしまいました…

2019年05月21日 | スポーツ
今シーズンの春スキーは、これまで経験したことがないほど、よいコンディションで楽しめています。「ストップ雪」は、ほとんどなかったです。私がラッキーだけなのかもしれませんが。

さて、今シーズンはスキーの板を2本も「破壊」してしまいした。1本は、GS用の板(BLOSSOM OVERLIMIT FIS-GS 185cm)、もう1本はSL用の板(ROSSIGNOL 2018 HERO FIS SL R21WC 165cm)です。GS用の板は、「もさ雪」の中でのGSゲートトレーニング中に転倒して、テールが雪に突き刺さり、そのまま前転した際に、ビンディングの後部の付け根あたりで真っ二つに折れてしまいました。こんなこともあるのですね。



ところで、「この板は見慣れないとなぁ」と思った方がおられることでしょう。イタリアの「ブロッサム」というメーカーが手作りで制作している、世界でも数多くは流通していないスキーです。これは優れモノですよ。この板で滑ると、ターンは、入りやすくなり、よく曲がり、高速でも安定するのです。とりわけ、たわみのしなやかさは、特筆するほどです。エッジの剛性も強いので、硬い雪面にシッカリと食い込みます。私にとって、このブロッサムはスキーの最高のパートナーですね。もう手放せません(折った後に買い替えたのは、もちろん「ブロッサム」)。急斜面のアイスバーンでも、この板は私に滑走への信頼感と安心感を与えてくれます!

ロシニョールのスラ板(SL用のレーシングスキー板)は、エッジがはがれてしまいました。この板の性能も素晴らしかった。ブロッサム同様、しなやかにたわみ、適度に反発してくれ、さらにエッジが雪面によくかむので、ターンがしやすく安定するのです。この板は、2シーズンの間、SLトレーニングからフリースキー、さらには、無理してコブ斜面でも使ったので、もう限界に達してしまったのでしょう(レース用のスラ板は、不整地を滑ることは想定して作られていませんから)。くわえて、数えられないほど多くの転倒は、この板にかなりのダメージを与えたはずです。



私は、このロシニョールの板に出会って、さらにスキーが楽しくなりました。そう私に思わせてくれるほどのスキー板でした。2シーズン、お世話になりました。来シーズンは、新しいスラ板を購入します。もちろん、ロシニョールのスラ板です!







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甲子園という病

2018年08月14日 | スポーツ
日本中が注目する全国高校野球「甲子園」大会開催中に、刺激的なタイトルの新書が発売されました。氏原英明『甲子園という病』新潮社、2018年です。



氏原氏は、以下の問題意識から本書を執筆したそうです。

「これまで日本人の心を打っていたはずの『甲子園』は、正気をうしなっている…『甲子園中毒』によって何が生じているかに気付いてくれるよう願って、この本を記す」(7-8ページ)。 

多くの日本人そして高校球児の「正気」を失わせる「甲子園」とは、いったい何なのでしょうか。ある高校球児の回想によれば、「甲子園が魅力的すぎる」(23ページ)のだそうです。どうも、この「魅力」に病理の根源があるようです。では、何が高校野球「甲子園」大会を多くの人の「正気」を失わせるほど「魅力的」にしているのか。残念ながら、私は本書に「答え」を見つけることができませんでした。ただし、異常なほどメディアが取り上げることと関係しているのは、誰もが疑わないでしょうiRONNA

1つのアマチュアスポーツに過ぎない高校野球「甲子園」大会は、なぜ国民から受信料を領収して運営されている公共放送局であるNHKにより、毎年欠かさず全試合、実況中継されるのか、私は常々不思議に思っています。NHKウェブサイトによれば、NHKは「公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体」です。そうだとするならば、甲子園大会をNHKが全国に配信することは、「公共の福祉」と「文化の向上」に寄与するのですよね。

日本国憲法にも規定されている「公共の福祉」は、さまざまな事典にいろいろな定義が紹介されていますが、つきつめると「社会全体の利益」という意味のようです。「文化の向上」は、これも捉えどころがない概念ですが、文部科学省によれば、どうやら芸術や歴史などの保護や振興といったようなイメージのようです。他方、高校野球は芸術ではなく、スポーツです。ですから、高校野球「甲子園」大会を全試合、受信料の一部を使って放映することは、素直に考えれば、「文化」を向上させるとは言えないでしょう。

残るのは、「公共の福祉」です。NHKが多大なコストを支払ってまで高校野球「甲子園」大会を番組として全国に流す目的は、それが「公共の福祉」に合致するからだということになります。果たして、そうなのでしょうか。本書では、甲子園大会に出場した投手が「常軌を逸した事態」に追い込まれて、「虐待シーン」とまで表現される事件がいくつも紹介されています(31-32ページ)。こうした次々と起こる「常軌を逸した事態」を無批判に放映することが、なぜ「公共の福祉」になるのか、私にはまったく理解できません。

本書に戻りましょう。大学で教鞭をとる教育者の端くれとして気になるのは、「甲子園」を「聖地」とする高校野球は「教育の一環としての学生野球」(高野連ウェブサイトより)なのかということです。この点について、氏原氏は吐き捨てるように批判します。

「長時間練習が甲子園出場につながったことや深夜までの練習が『感動ストーリー』としてメディアに描かれるのは高校野球ぐらいだろう。教育的観点がどこにもない異常な環境は考え直すべきだろう」(134ページ、下線は引用者)「私学の強豪校などは寮を完備して専用の野球場で練習に打ち込んでいる。すべての練習が終わるのが夜になることもある。そんな状態で翌日の授業を受けて、集中できるはずがない」(148ページ)

同ページで引用されている元阪神のマートン選手の指摘も傾聴に値しますので、ここに紹介します。

「日本人は、野球の練習を八時間することもある。半面、人生において大切な教育がおろそかになっていませんか。スポーツだけ続け二十代後半から三十代でやめたら、どうやって生きていくのでしょうか。僕も野球を終えた後の人生でやりたいことがたくさんある。少し残っている単位をとるために大学に戻って勉強をしたい。残りの人生を豊かにしたいのです」(134ページ)

まったくその通りでしょう。こうした教育上の問題もさることながら、私がもっとも衝撃を受けたのは「食トレという拷問」(124ページ)が、高校の現場で行なわれていることでした。「(選手の身体が貧弱なので)『ごはん三杯』を必須として、選手たちに食べさせていた。しかし、上手くいかなかった。選手たちは我慢して食べようとはしたが、席を立ちあがると吐き出した」(128ページ)。これのどこが「教育の一環」なのでしょうか。流行りの言葉を使って表現すれば、「食ハラ」と言われても仕方ないでしょう。にもかかわらず、氏原氏によれば、このような「食トレーニング」が、高校野球界では大流行している(125ページ)。ここまで来ると、もはや言葉もありません…。

私は中学では「野球小僧」でした(下手でしたが)。母校は、甲子園出場約30回、春の甲子園準優勝2回の古豪です。野球大好きな大学院の恩師とは、何度も野球をプレーしました。MLBもよく観ます。ですが、高校野球「甲子園」大会は、地方予選を含め、一切、観なくなりました。正確に言うと、「正気」を失った甲子園は観たくないのです。「責任を取らない大人が…子どもの夢を勝手に大きくして、慢心させる環境は良くない」(79ページ)。ある高校球児の述懐です(ご参考までにPRESIDENT Online の記事もご覧ください)。私は、そんな大人でいたくありませんね。




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失敗しないスキーマテリアルの選び方

2017年12月22日 | スポーツ
2017-2018年の本格的なスキーシーズンが始まりました!今シーズンのはじめは、例年より早くオープンしたスキー場があったためでしょうか、私が初滑りで行ったところは、昨年より空いていました。おかげで、初滑りをのびのびと楽しむことができました。

ところで、皆さんは、スキーマテリアルをどのように選んでいますか。スキーの板を買い替えるとしましょう。どのメーカも自社製品が優れていることをアピールします。また、ネット上には、さまざまな数多くのレビューが掲載されています。スキーヤーは、いったい何を基準にして、スキー板を選べばよいのでしょうか。迷ってしまいますよね。

私が勧める方法は、試乗することです。実際に、スキー場で試し履きをして滑ってみることにより、その板が自分に合っているかどうかを身体で確認できるからです。確かに、ネット上の板に対する評価やスキーに詳しい人からのアドバイスも参考になるでしょうが、スキー板の性能と自分の滑りがマッチするかは、ゲレンデで使ってみた方が判断しやすいでしょう。そうすれば、ミスチョイスも少なくなります。

昨シーズン、同じくらいのスキー技術を持つ仲間とスキーに行った際、板を交換して滑ったことがありました。驚くことに、私は仲間の板では上手く滑れませんでした。仲間も私の板では上手く滑れませんでした。同じ位のレベルを対象にしたスキー板でも、メーカーやモデルによって性能が違います。同じレベルのスキーヤーでも、滑り方は違います。スキーを十分に楽しむには、板の性能が乗り手の滑り方とマッチしなければなりません。

私は数シーズン前から、新しいスキー板に買い替える際は、必ずレンタルなどで試し履きをしてから購入するようにしています。その結果、板と滑りのミスマッチがなくなりました。それ以前は、正直に申し上げると、買って後悔することが少なからずありました。

スキーマテリアルは、決して安くはありません。だからこそ、ミスマッチは防ぎたいですよね。自分に合った道具を手に入れて、スキーを思いっきり楽しみましょう。

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