1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「グラン・トリノ」(クリント・イーストウッド)

2009-09-20 17:36:14 | 映画
 「グラン・トリノ」を見ました。おもしろかったです。元フォードの組立工で、自分が製造にかかわった大型車、72年型グラン・トリノが唯一の宝物。自宅の庭に星条旗を掲げ、アジア系住民を見れば、「イエローが!」と偏見をあらわにする。若いものにファーストネームで呼ばれるとミスターコワルスキーと呼べとどなりちらし、へそピアスにむっとする。そんな老人の姿を、クリント・イーストウッドが熱演しています。主人公は、古きアメリカの象徴なのでしょうね。

 妻に先立たれて一人暮らす主人公と隣人のアジア系住民(モン族)との交流を中心に物語は進んでいきます。イーストウッドは、登場人物の会話を通して、アメリカが抱える問題を垣間見せていきます。

トヨタのランドクルーザーに乗る息子の言葉
「おやじは、米食い人種のジャップの車に乗りやがってと思ってるんだろうな」

主人公の隣に住むアジア系住民のおばあさんが主人公に言う言葉
「この通りから白人はお前を除いてみんな引っ越してしまった。お前も早く引っ越せばいいのに」

主人公と青年牧師の会話
「朝鮮戦争で3年間、毎日、生死を見てきた。人を撃ち、17歳の子供をシャベルでなぐり殺した。一生頭にやきついている。おぞましい記憶だ」
「命令で残虐行為に走った者は懺悔をすれば救われる」
「命令されずに自らやったということが恐ろしいのだ」

衰退していく自動車産業、移民労働者と差別、ベトナム・イラクからの帰還兵の心の傷、老人の孤独、銃などなど。

 アジア系青年のタオが当たり前の生活を送れるようにと建設現場の仕事を紹介するときのイーストウッドの顔。そして、あたりまえの生活をしたいというタオのささやかな願いを踏みにじった者へのふつふつとした怒り。自らの死を見つめる目。ラストの30分は、クリント・イーストウッドの存在感に圧倒されてしまいました。