神奈川県民ホールの開館40周年記念、第21回神奈川県国際芸術フェスティバルのオープニングを飾る、マーラーの交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」を歌ってきました。
実は5月に特別編成合唱団の募集があり、一生に一度あるかないかの機会と思い直ぐに申し込み、その後練習に参加しましたが、2010年の12月に慢性疾患が一応寛解になって以降今年の夏が最も体調が悪く、しかも9月に入ってかなり重大・緊急は仕事上の問題が発生してその対応でも疲れきっていて、一時期は「千人」の参加辞退も止むを得ないと半ば諦めていました。実際問題、社外の法律系の事務所との打合せの日時がリハーサルに被ったら「千人」を辞退するしかないと諦めていました。が明日の午後になったので、どうにか本番のステージに立てました。
想像はしていましたが、想像を上回る大曲ですね。とにかく合唱団が立つひな壇が半端な大きさではありません。神奈川県民ホール(当然大ホールです)の巨大な反響板がちょうど合唱団に覆い被さっていて、音響的にも重要な役割を果たしてくれていました。ひな壇の最上段に立ってみると、客席の2階席中央部の先端とほぼ同じぐらいの高さに感じました。ひな壇最上段で上に手を伸ばすと、反響板にもう少しで触れそうなぐらいです。なので合唱団の声が拡散して薄まらず、反響板の音響レンズ効果で声が前に飛んでゆきます。その結果、大編成のオーケストラにも全く負けません。むしろリハーサルでは合唱が大きすぎるから当該パート全員で歌わずに、3分の1位ぐらいに選抜して歌えという指示が出たくらいです(結局全員で3分の1の音量にした様ですが)。
とにかく大編成のオーケストラが発する大音響に揺さぶれる快感ですね。コントラバス8本、ティンパニ2組、グランカッサ(=大太鼓)、オルガン。これらの低音が炸裂すると振動が足下のひな壇を伝わって、足の裏から大腿骨→骨盤→背骨→頭蓋骨と伝わります。オーケストラと歌う環境からは丸1年ほど遠ざかっていましたが、足下から伝わってくるヴァイブレーションが、天使が漕ぐゴンドラの細かい揺れの様に、凝り固まった頭脳、メンタルコンディション、体の強張りをほぐしてくれます。いやあ何という快感でしょう。リハーサルでオーケストラと合わせるまでは、「千人」を歌ったらこれを最後に合唱は辞めようと本気で思っていました。しかし最初のオケ合わせでオーケストラと歌うことの感動を思い出し、むしろオーケストラと歌う機会があるところに戻ろうかと思い始め、本番が終わった今は戻ろうかどうしようかではなく、何時どういう形で戻ろうかと考えるに至っています。
それにしてもグスタフ・マーラーが五線紙に書き落とした精神世界の客体化物。どれほどのエネルギーを、あるいは自らの生命を削って五線紙に託したことでしょうか。その断片についてはピアノ伴奏での合唱団練習でも時々感じることは出来ていましたが、初日の通しのリハーサルでも随分と興奮しました。第九の本番が終わった時の感動と同じ程度の心の反応が既にリハーサルで生じていました。リハ二日目は問題があるところをつまんで返しながらのリハーサルですが、マエストロの指示によって細部がどんどん良くなります。水分切れでしおれかかっていた鉢植えの花に適切な水を肥料を与えたようなものです。色彩感、生命力がどんどん際立って来ます。マエストロ曰く「明日は必ず成功します。問題はどの程度成功するかです。」ステージ上で笑い声が上がりましたが、オーケストラにとっても合唱団にとってもそうそう気楽に演奏できる曲ではないことはわかっていますので、楽員・団員一人ひとりのやってやろうという気持ちが伝わってきます。あまりの大曲すぎてゲネプロは無し(やろうと思っても時間的に無理だった?無理してゲネプロ(=プログラムを全て1回なぞる)をやると特に声楽のソリストが声を消耗して本番で歌えなくなるからだと思いました。ハイ、正直に言って本番当日のつまんでのリハーサルですら、私自身は声を使いすぎて本番で少々声が足りなくなったと思いました。
ともかくクライマックスでは合唱がトッティで歌い終わった後、結構長いオーケストラの後奏があります。全てを出し切って歌い終わり、後の流れをオーケストラに託した更にその後のフィナーレで、観客席2階の右端に立つバンダがファンファーレを高らかに吹奏します。トランペット4本とトロンボーン3本のベルがちょうど私の方を向いているように思えて、バンダ隊の音圧を顔に感じるような気がしました。これで感動するなと言われてもそれは無理と言うものでしょう。本当にこの時間、この空間を共有できた全ての人に、感謝しています。
ちなみにチケットは完売で大入り袋が出ました。実際には空席も若干あった様ですが、これは台風が近づく中での強い雨で残念ながら足を運べなかった方がおられたと言うことだと思います。控え室の窓から見る横浜港の空は灰色で、雨脚もよく見えました。天気が悪い中を聴きに来ていただいた方にも深く感謝いたします。
しばらくは興奮冷めやらずで余韻にも浸っていたいので、このマーラーの「千人」でこの後も何回か書きたいと思っています。
実は5月に特別編成合唱団の募集があり、一生に一度あるかないかの機会と思い直ぐに申し込み、その後練習に参加しましたが、2010年の12月に慢性疾患が一応寛解になって以降今年の夏が最も体調が悪く、しかも9月に入ってかなり重大・緊急は仕事上の問題が発生してその対応でも疲れきっていて、一時期は「千人」の参加辞退も止むを得ないと半ば諦めていました。実際問題、社外の法律系の事務所との打合せの日時がリハーサルに被ったら「千人」を辞退するしかないと諦めていました。が明日の午後になったので、どうにか本番のステージに立てました。
想像はしていましたが、想像を上回る大曲ですね。とにかく合唱団が立つひな壇が半端な大きさではありません。神奈川県民ホール(当然大ホールです)の巨大な反響板がちょうど合唱団に覆い被さっていて、音響的にも重要な役割を果たしてくれていました。ひな壇の最上段に立ってみると、客席の2階席中央部の先端とほぼ同じぐらいの高さに感じました。ひな壇最上段で上に手を伸ばすと、反響板にもう少しで触れそうなぐらいです。なので合唱団の声が拡散して薄まらず、反響板の音響レンズ効果で声が前に飛んでゆきます。その結果、大編成のオーケストラにも全く負けません。むしろリハーサルでは合唱が大きすぎるから当該パート全員で歌わずに、3分の1位ぐらいに選抜して歌えという指示が出たくらいです(結局全員で3分の1の音量にした様ですが)。
とにかく大編成のオーケストラが発する大音響に揺さぶれる快感ですね。コントラバス8本、ティンパニ2組、グランカッサ(=大太鼓)、オルガン。これらの低音が炸裂すると振動が足下のひな壇を伝わって、足の裏から大腿骨→骨盤→背骨→頭蓋骨と伝わります。オーケストラと歌う環境からは丸1年ほど遠ざかっていましたが、足下から伝わってくるヴァイブレーションが、天使が漕ぐゴンドラの細かい揺れの様に、凝り固まった頭脳、メンタルコンディション、体の強張りをほぐしてくれます。いやあ何という快感でしょう。リハーサルでオーケストラと合わせるまでは、「千人」を歌ったらこれを最後に合唱は辞めようと本気で思っていました。しかし最初のオケ合わせでオーケストラと歌うことの感動を思い出し、むしろオーケストラと歌う機会があるところに戻ろうかと思い始め、本番が終わった今は戻ろうかどうしようかではなく、何時どういう形で戻ろうかと考えるに至っています。
それにしてもグスタフ・マーラーが五線紙に書き落とした精神世界の客体化物。どれほどのエネルギーを、あるいは自らの生命を削って五線紙に託したことでしょうか。その断片についてはピアノ伴奏での合唱団練習でも時々感じることは出来ていましたが、初日の通しのリハーサルでも随分と興奮しました。第九の本番が終わった時の感動と同じ程度の心の反応が既にリハーサルで生じていました。リハ二日目は問題があるところをつまんで返しながらのリハーサルですが、マエストロの指示によって細部がどんどん良くなります。水分切れでしおれかかっていた鉢植えの花に適切な水を肥料を与えたようなものです。色彩感、生命力がどんどん際立って来ます。マエストロ曰く「明日は必ず成功します。問題はどの程度成功するかです。」ステージ上で笑い声が上がりましたが、オーケストラにとっても合唱団にとってもそうそう気楽に演奏できる曲ではないことはわかっていますので、楽員・団員一人ひとりのやってやろうという気持ちが伝わってきます。あまりの大曲すぎてゲネプロは無し(やろうと思っても時間的に無理だった?無理してゲネプロ(=プログラムを全て1回なぞる)をやると特に声楽のソリストが声を消耗して本番で歌えなくなるからだと思いました。ハイ、正直に言って本番当日のつまんでのリハーサルですら、私自身は声を使いすぎて本番で少々声が足りなくなったと思いました。
ともかくクライマックスでは合唱がトッティで歌い終わった後、結構長いオーケストラの後奏があります。全てを出し切って歌い終わり、後の流れをオーケストラに託した更にその後のフィナーレで、観客席2階の右端に立つバンダがファンファーレを高らかに吹奏します。トランペット4本とトロンボーン3本のベルがちょうど私の方を向いているように思えて、バンダ隊の音圧を顔に感じるような気がしました。これで感動するなと言われてもそれは無理と言うものでしょう。本当にこの時間、この空間を共有できた全ての人に、感謝しています。
ちなみにチケットは完売で大入り袋が出ました。実際には空席も若干あった様ですが、これは台風が近づく中での強い雨で残念ながら足を運べなかった方がおられたと言うことだと思います。控え室の窓から見る横浜港の空は灰色で、雨脚もよく見えました。天気が悪い中を聴きに来ていただいた方にも深く感謝いたします。
しばらくは興奮冷めやらずで余韻にも浸っていたいので、このマーラーの「千人」でこの後も何回か書きたいと思っています。