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他スポーツの話題・事例31

2016-01-09 00:02:26 | サッカー(J3以下・外国・他カテゴリ)

 事例紹介コラムです。
 去年の9月と、かなり前の記事ですがいつかそのうちに紹介しようとずっとキープしていました。日経の記事で「ピッチの外で『勝利』したブラインドサッカー」というタイトルでした。以下、抜粋して紹介。
   
 昨年9月に、国立代々木競技場フットサルコートで、ブラインドサッカーのアジア選手権が開催。今回はリオパラリンピックのアジア予選を兼ねていたことから、多くのメディアで注目。6カ国が参加した中、日本代表は1回戦総当たりのリーグ戦で3位。本大会出場権は上位2カ国のみなので、初出場ならず、その後の順位決定戦で最終的に4位で終了。
【有料興行をうち、集客は4年前の10倍】
 ピッチでの敗北とは別のピッチ外での戦果に注目。今回のアジア選手権では、約2,000万円をかけてスタンドを仮設。1200~1300席を有料で販売。前売り指定席は日本戦で大人2,000円。日本の初戦の中国戦は、平日夜の開催にもかかわらず、自由席も含め全席が完売。大会6日間での有料入場者数は5,555人、チケット収入は800万~900万円の見込み。ブラインドサッカーは昨年の世界選手権も日本で開催し、その時も有料興行で6,283人を集客。
 「試合数が多かった一昨年は1億2,000万円の予算で収支トントン。今回は6,500万円の予算を組んだが、悪天候や日本代表の成績不振のために赤字計上。それでも、障害者スポーツの世界でこれだけの大会を有料で運営できたのは、驚くべきこと。健常者スポーツに比べて認知度が低く、競技人口が少ない障害者スポーツで有料興行ができる競技はほとんど無く、活動資金の大半を国からの助成金に頼り、スタッフも少ない団体が多く、大規模な興行にはなかなか手を出せない」と日本ブラインドサッカー協会事務局長のコメント。
 ブラインドサッカーも4年前に仙台で開催したアジア選手権は観戦無料で、わずか600人の集客。しかし、今回は不動産販売のアセットリードとSMBC日興証券がスポンサーにつき、予算の半分超はそのスポンサー料でまかない、BSスカパー!からの放映権料も獲得。首都圏での開催とはいえ、4年前のほぼ10倍の集客。何が変わったのか?
【社会変革目指す「ビジョン」打ち出す】
 きっかけとなったのは、同協会が5年前、ブラインドサッカーを通じて「視覚障がい者と健常者が当たり前に混じり合う社会を実現する」という、社会変革を目指す「ビジョン」の掲示。「世界で戦う」「強豪に勝って感動を与える」「競技者やファンを増やす」といった、スポーツの枠内でのゴールを目指しがちな競技団体としては異例。魚住監督からも当初、「それでいいのか?」と疑問があったとか。
 このビジョンを実現するため、2つの事業に注力。1つ目は、小・中学校に選手を派遣してブラインドサッカーを体験してもらう「スポ育」。若いうちから競技のファンになってもらうためではなく、目隠しをしてボールを蹴ることによって、お互いに声をかけあうコミュニケーションの重要性、チームワークの大切さ、違いを認める個性の尊重、障害者への理解といった、これからの社会で必要なすべを学習。文科省が推進する、「生きる力」教育にも通ずるもので評判になり、14年度は全国479件、2万1,000人超にスポ育を実施。15年度は600件を目指していたとか。
【ブラインドサッカーは勝敗以外の価値を提供することで、集客とスポンサー獲得につなげている】
 この活動に企業も参入し、スポ育をパートナーとして支援する会社が増加。障害者も女性も高齢者も外国人も、様々な人がいる多様性が組織の活力となるという「ダイバーシティー」の考え方が認知され始めたことが背景。2つ目の事業は、大人向けのブラインドサッカー体験プログラムを開発して有料で実施。さらに企業研修のプログラムとしても推進。相次ぐリストラや合併で組織が疲弊し、「不機嫌な職場」となった会社で、コミュニケーションの要諦を学べるプログラムとして徐々に認知。同時にブラインドサッカーを知る人が増え、集客に貢献。
【代表スポンサー、ゼロから4社に】
 ビジョンを掲げる前は、スポンサー獲得は障害者を前面に出した「お願い営業」がほとんどだったとか。しかし、視覚障害者への支援の文脈では盲導犬育成団体がライバルとなり、サッカーの文脈ではJリーグ、障害者スポーツではより有名な車いすバスケットボールがライバルとなって負けていた状態で、200件のリストをもとに企業回りをしても、会議室に通してくれるのは3件のみの状態。
 ビジョンを打ち出し、「僕らが活動すれば活動するほど、御社の掲げるダイバーシティー推進につながる」と訴える手法に切り替えると、共感する会社が増加。昨年の世界選手権から大口スポンサーとして名乗りをあげたSMBC日興証券もそうであり、2年前はゼロだった日本代表のスポンサーも4社に。スポンサーからは社員がボランティアとして参加し、アジア選手権ではのべ304人が参加。20年東京パラリンピック開催が決まり、障害者スポーツ支援の機運が盛り上がっていることはあるが、社会に価値を提供できれば、ヒト、モノ、カネが集まって、それを使ってさらに活動の再生産ができるとされ、ひいては日本代表の強化にも連動。
 健常者スポーツも含めて、「我がスポーツが社会に与える価値」を説明できる競技団体がどれだけあるのか。エディージャパンのように、確かに「勝利」がもたらす興奮、感動、熱狂はスポーツの価値の一つであることは間違いないが、勝ったり負けたり、勝敗はしょせん浮草のようなもの。それ以外の価値を提供し、集客とスポンサー獲得につなげたブラインドサッカーは、日本のスポーツ界ではまれな存在。その意味で今回のブラインドサッカー日本代表は、「勝利」に値する姿を見せたのではないかと思うと締めくくっています。
     
 という内容でした。これは新しいスポーツビジネスの姿でもあると思います。障がい者スポーツでスポンサーが付き、多くの観客動員があるというのは信じられない人が多いと思いますが、海外特にアメリカでは普通の光景であると聞いています。あと、当ブログがなぜいつも「選手による社会・地域貢献活動」や「Jリーグ百年構想」、「公共財」と口を酸っぱくして言ってきたのか、それは上の記事に象徴されていると思います。スポーツが社会に与える価値、勝利以外の価値を提供することが、長期的には集客とスポンサー獲得につながるという考え方なのです。負けが混んだらお客さんが来なくなるし、スポンサーも逃げていくというのが逆のパターンです。商業主義に走っているところがあれば、ブラインドサッカーを見習って、価値観を矯正されてはいかがでしょうか。そういう点では、競技名が付く前から連携していた福岡さんは素晴らしいクラブだと思います。ブラインドサッカーか、機会があれば一度観戦に行きたいな。
日経新聞該当ページ:http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXMZO92167640Y5A920C1000000/
日本ブラインドサッカー協会公式HP:http://www.b-soccer.jp/

コメント
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