碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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警察ドラマの珍品「ギークス~警察署の変人たち~」

2024年07月17日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

警察ドラマの珍品

松岡茉優主演

「ギークス~警察署の変人たち~」

 

異色の警察ドラマと言っていい。松岡茉優主演「ギークス~警察署の変人たち~」(フジテレビ系)である。

まず、刑事が活躍する話ではない。鑑識課の西条唯(松岡茉優)、医務室の吉良ます美(田中みな実)、そして交通課の基山伊織(滝沢カレン)の3人が雑談しながら、結果的に「事件解決をアシスト」するのだ。

ギークとは、突出した知識を持つ人や専門家を指す、アメリカの俗語。唯は記憶力、ます美は心理分析、伊織は地域情報と、それぞれが武器を持つギークという設定だ。

これまでに、有名スポーツ選手の結婚披露宴で起きた強盗・殺人事件や、石段からの転落傷害事件に関わってきた。

しかし、謎解き部分に大きな意外性や驚きがあるわけではない。それよりも3人のキャラクターショーを楽しむドラマになっている。

たとえば、ジグソーパズル好きな唯が、事件の真相に触れると「ハマっちゃった」とつぶやく。他人の心の隙に付け込んで支配する「マニピュレーター」や、仕草など他者から見える部分に向けた「公的自己意識」などを得意げに解説する、ます美。そんなシーンこそが最大の見せ場だ。

不思議なのは、定時に帰ることから「省エネ3人組」と呼ばれ、行きつけの居酒屋で管を巻く彼女たちが、少しも仲良しに見えないこと。警察ドラマの珍品として、逆に一見の価値がある。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.07.16)


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