碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ドキュメント 「シン・仮面ライダー」が見せた、アクションをめぐる葛藤

2023年04月06日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

ドキュメント

「シン・仮面ライダー

~ヒーローアクション 挑戦の舞台裏~」

アクションをめぐる葛藤

 

庵野秀明監督作品の制作過程に約2年間密着したのが、3月31日にNHK・BSプレミアムで放送された、ドキュメント「シン・仮面ライダー~ヒーローアクション 挑戦の舞台裏~」だ。

庵野は「ノスタルジーだけではなく、新しいものを。でもノスタルジーは捨てたくない」と言う。この二律背反ともいえる難題は、制作現場の随所で噴出する。特に「アクション」をめぐる葛藤と波乱は激しく、この番組の見所となっていた。

アクション監督が練りに練ったシーンを、「頭の中が殺陣(たて)でいっぱい」「創意工夫が足りない」と庵野はことごとく否定していく。何より「段取り」を嫌い、排除したいのだ。

主演の池松壮亮を始めとする俳優陣にも負荷をかける。「自分のイメージを押しつけるならアニメのほうがいい」「僕からイメージを出すことはない。後は役者次第」と考えさせるのだ。

監督と俳優たちが、アニメとは異なる、実写ならではの「本物感」を探っていく現場はスリリングで目が離せない。ここでもライダーたちの「一生懸命さが見えない」と「段取り」を厳しく指摘。アクション監督と決裂寸前までいく。

結局、クライマックスは池松、柄本佑、森山未來の3人に託され、「ベストは何だ?」と真剣な試行錯誤が続いた。その成果を確かめるためにも映画館へ行こうと思う。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.04.05)


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