碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「虎に翼」画期的な “社会派の朝ドラ”となった

2024年10月03日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「虎に翼」

画期的な

“社会派の朝ドラ”となった

 

連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)が幕を閉じた。見終わって再認識したのは、この作品がいかに“異色の朝ドラ”だったかということだ。

佐田寅子(伊藤沙莉)のモデルは三淵嘉子。戦前に初の女性弁護士となり、戦後は初の女性判事となった。「あさま山荘事件」が起きた1972年には初の家庭裁判所所長に就任している。

司法界の「ガラスの天井」を次々と打ち破っていった嘉子の軌跡は、戦前・戦後における“試練の女性史”だ。それはドラマにも十分反映されており、画期的な“社会派の朝ドラ”となった。

ややもすれば堅苦しくなりそうな物語だったが、硬軟自在の伊藤に救われた。寅子が納得のいかない事態に遭遇した時に発する「はて?」は、見る側の心の声も代弁する名セリフとなった。

ただ、さすがに後半は少し詰め込み過ぎだったかもしれない。「戦争責任」「原爆裁判」「尊属殺の重罰」「少年法改正」などが並び、さらに「同性婚」「夫婦別姓問題」「女性と仕事」といった現在につながるテーマも取り込んでいった。

しかし、これも制作陣の確信犯的仕掛けだったはずだ。憲法第14条が明記する「法の下の平等」や「差別禁止」は、どのような経緯をたどってきたのか。そして、今の社会においても本当に実現されているのか。この問いかけこそ本作を貫く大きなテーマだった。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2024.10.02)


この記事についてブログを書く
« 札幌で、UHB『談談のりさん+... | トップ | 【気まぐれ写真館】 ちょっと... »
最新の画像もっと見る

「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評」カテゴリの最新記事