碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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アサヒ芸能で、「熟女優」をめぐる対談

2012年08月24日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「アサヒ芸能」で、”熟女優”をめぐる対談をしています。

お相手は、放送批評の大先輩である松尾羊一さん。

”熟女優”とは、いかにも「アサヒ芸能」らしい好企画で(笑)、この対談も楽しい内容になっています。


「大人のドラマ」ワイド
高視聴率「熟女優」フェロモンの秘密!

「松尾羊一×碓井広義」ご意見番対談


熟女優の魅力は何か?
その魅力を最も引き出せる舞台、役柄は何か!?
松尾羊一氏と碓井広義氏の
テレビ批評のベテランが論じ合う――。


<プロフィール>
◎松尾羊一 1930年、東京都出身。放送評論家。文化放送で社会教育番組「ズリ山に育つ子ら」「25時の討論会」「ニューヨーク・ホットライン」などを担当。著作は「てれび徒然草」「テレビは何をしてきたか」など。
◎碓井広義 1955年、長野県出身。上智大学文学部新聞学科教授。メディア論、映像制作などが専門。テレビマンユニオンで番組制作に携わる。著作は「テレビが夢を見る日」「テレビの教科書」「ニュースの大研究」など。


松尾 数多くの熟女優が活躍するのが、1話完結の2時間ドラマ。仕事を終えたオヤジさんたちが帰宅して、9時ごろから酒を飲みながら、カミさんと一緒に気楽に観られるドラマということで定着していた。連続ドラマみたいにややこしい展開はないんだけど、ある程度、大人の視聴者を満足させなくてはならない。そういうドラマのヒロインには、ピチピチした若手女優よりも、必然的に名取裕子(55)、片平なぎさ(53)、眞野あずさ(55)……ら、落ち着いた熟女優が起用されることになるわけ。

碓井 これまでの活躍ぶりから考えて、私が「2時間ドラマのヒロイン四天王」と推したいのが、沢口靖子(47)、高島礼子(48)、名取裕子片平なぎさの4人。さらにしぼり込んで「ドラマの熟女王」を選ぶと、「京都地検の女」や「科捜研の女」(ともにテレ朝系)という看板シリーズを持っているという点で、名取裕子と沢口靖子でしょうか。片や主婦のカンで、片や「科学は嘘をつかない」と最新技術やデータを駆使して事件を解決していきます。

松尾 2人とも、女性視聴者が嫉妬するタイプの美人じゃないよね。名取裕子なんか、程よく脂肪がついているし。

碓井 それ、熟女優の大きなポイントですね。それに、どちらも舞台は京都というのがおもしろい。京都地検と京都府警の科学捜査研究所。つまり、ドラマの熟女王は京都にいるわけ。名取裕子は旦那が東京にいて単身赴任。一方、沢口靖子はバツイチという設定。これも大事なポイントで、男性視聴者にとって、単なる独身女性ではなく、男の影がありつつも、今はとりあえず1人でいるというところが、ちょっと立ち寄りたくなる飲み屋の女将さんという感じで、魅せられるんですね。

松尾 どちらも、けっこう長く続いているね。

碓井 調べてみたら、「京都地検」のスタートは03年でこれまで8シリーズ。一方、「科捜研」は99年スタートで11シリーズ。ということで、私の中では、女王の座は僅差で沢口靖子に輝きました。

熟女ヒロインになれる条件

松尾 熟女ヒロインの条件は、美人だけど、変な色気や恋愛沙汰もなく、ひたすら職務に一生懸命。職場では男の部下をリードしていく。つまり、仕事ができるオンナ。男は名取裕子みたい上司を求めているんだね。かつて女優は「嫁にしたいナンバーワン」という尺度で測られたけど、今は「上司にしたいナンバーワン」。そういう意味では、米倉涼子(37)や真矢みき(48)とかとよた真帆(45)、天海祐希(45)、江角マキコ(45)のように、女子っぽくなくて、仕事ができそうな熟女優がいいんですね。

碓井 最近、気になる熟女優は、まず石田ゆり子(42)。「外事警察」がよかったですね。主婦を演じていても、OL役でも、普通の人をちゃんと演じていながら、何かエロスを感じます。いいなあ。それから、木村多江(41)。実は、彼女のことを最初に「日本一不幸が似合う女優」と書いたのは私なんです。今は不幸な役ばかりではなく、役柄を広げています。でも、個人的なイチオシは松たか子(35)ですね。映画「告白」はすごかった。彼女じゃなきゃ、演じられなかったと思う。舞台と映画ばかりで、なかなかテレビドラマに出てくれないのが残念です。

松尾 藤原紀香(41)、稲森いずみ(40)、小雪(35)、竹内結子(32)、松雪泰子(39)のように、若者向け連ドラの主役を張っていたのが、ちょっと峠を超えてきて……というタイプが、これから2時間ドラマの熟女優として出てくると思う。

碓井 この夏に放送されたドラマ「はつ恋」(NHK)に大人の視聴者があんなにグッときたのは、制作陣にチャレンジしよういう気概があったから。視聴者も大人のドラマを求めているんですね。主役の木村佳乃(36)は、すっぴんで体当たりのベッドシーンまで演じた。そういう意味では、酸いも甘いも経験した熟女優は、ディープなもの、コアなもの、重たいもの、とがったもの……など、大人の観るドラマのヒロインが演じられるんです。彼女たちが中心にくるようなドラマをぜひ作ってほしいですね。

(週刊アサヒ芸能 2012.08.30号)





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